5 間違いなく邪神
チート能力。
要するに、地球よりも殺伐とした世界で生き抜くための力と考えればいいのだろう。転生拒否も無理なようだし、それならば次の人生こそ謳歌してみたい。
何からも傷つけられる事なく、害される事なく、自由に生きたい。見たいものを見て、したい事をして。多少の不自由さがあるのは仕方ないとしても、色々な景色を見てみたい。例えそれが地球ではなくても。
それらの希望を前提に考えると、私が欲しい能力はアッサリと脳裏に浮かんだ。
「何からも、誰からも、この身を傷つけられない力はもらえるでしょうか」
「防御力ってこと?」
「防ぐだけ……耐えられるだけじゃダメなんです。傷一つつきたくない、痛いのも嫌。私の身を傷つける全てから守ってくれるような力が欲しいです。そんな力があれば、頭上から植木鉢が落ちてきても死ぬ事はないと思うんです」
もう、私の人生を他人によって奪われたくない。
長く生きるには、傷つけられない事。害されない事。それが一番確率的に高いと思う。
飢えないとか病気にかからない体とかも考えられるけれど、頭上から植木鉢を落とされたら死ぬのだ。
植木鉢に対して必要以上に敏感になっている気もするが、地球より殺伐とした世界と聞いてしまっては、身を守る能力一択しか浮かんでこなかった。
「出来ませんか?」
「うーん、出来なくはないけど、例えば全てを弾き返す肉体になると、パッと見てゴリラみたいな感じになるけどいい?一応、英理奈ちゃんの意識そのまま移す予定だから、転生先は女の子になる予定なんだけど」
「却下で」
贅沢は言わない。言わないけれど、ゴリラはないだろう。たぶん肉体に傷はつかないが、鏡を見るたびに心に傷が出来そうな気がする。
「私の中ではバリアみたいなイメージなんですけど。こう、私に当たる前に全部膜みたいなので防がれるみたいな」
「なるほど!いいじゃんそれ!結界師の事か。防御力系のチートなら、凄いの与えても他の神に怒られる事ないし。はい、決定!英理奈ちゃんには、チートな結界能力を差し上げます!!
各神に配布されてる能力付与が、5000年分プールしてあるから、最初から頑丈な結果はれると思うけど、頑張れば低級神くらいの攻撃なら跳ね返せると思うよ!いやあ、サクサク決まって良かった!」
そう言って、彼がパァンと手を叩くと、私の足元から金色の光が生じる。
「なにこれ!」
「能力も決まったからね。サクッと転生作業に入らせてもらったよ。残業にならなくて良かったー。だいたい付与能力でみんな悩むからね。
それじゃあ、お元気で!ユーゴワールは攻撃至上主義の脳筋世界だから、防御力特化の英理奈ちゃんは迫害されたりして色々大変だと思うけど、とりあえず傷付く事はないだろうから、チート活かして頑張ってね!」
「待って、色々待って!!特に最後らへんおかしい!!」
「色々イレギュラーな世界になっちゃったって言ったでしょ?それに攻撃至上主義の世界だから、防御力のドチートあげてもプラマイゼロで問題ないわけだし。
攻撃系の能力希望してたら、力もあるし生き易いっていうボーナス転生になっちゃうから、こんな大サービスな力あげられなかったよ。あげられて500年分くらいの付与かなあ。
英理奈ちゃんはドチートもらって幸せ。僕も長期休暇中に溜まった付与が使い切れて幸せ!
みんな幸せで、オールオッケー!
それではお後がよろしいようで、英理奈ちゃん、いってらっしゃーーい!!」
やっぱり、お前は邪神だーーー!!
という叫びは声にならず、私は全身を光につつまれ、そのまま眠りに落ちるように、静かにゆっくりと意識を失ったのだった。