表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/48

4 ファンタジーは不要


「無理です」


無理。普通に無理。

なんだ魔法とか剣って。なんだ魔物って。そもそも何故、神様の尻拭いをしなきゃならんのだ。



そりゃ、アニメと漫画大国の日本で生まれ育っているわけなので、全くの無知ではないけれど、そういう物たちは母親が極力排除していたので、知識と理解が薄い。それこそ、受験に必要ないからと、然程力を入れて勉強してなかった教科についての方が、よほど多くの知識を持っていると思う。



「私じゃなくても、そういうの好きな人って沢山いると思いますけど。好きじゃなくても、物作りとかに携わっている大人の方が、よほど文明に貢献出来るんじゃないですか?私、ただの高校生ですし。数学や物理だって、所詮高校生レベルですよ?大学教授とか、学者さんを転生させた方が良いと思いますけど」


「そんなのつまらないじゃない!なんで英理奈ちゃんが死後1ヶ月経ってから呼ばれたと思ってるの?7日間のうち、一番面白い死に方した人を選ぶのに時間がかかったからなんだよ!?」


「不謹慎にも程があります!なんですか?あなた、神は神でも邪神かなんかですか!?」


「そんなプンプン怒らないでよー。だって、英理奈ちゃんは、神様の目に、コイツ面白いって映る子だったんだよ。何万人っていう死者の映像を確認していく中で、頭にお花乗っけて倒れてる英理奈ちゃんは凄く目立ってた。それはもう前世の徳とか知識や力じゃ出来ない、イレギュラーな何かだと思うんだよね。ユーゴワールの状況も、計画から外れたイレギュラーのようなものだし、目には目をイレギュラーにはイレギュラーをみたいな感じでぶつけてみるのもありかなって」


「全くもって嬉しくない!」



何となく良い事を言ってる風な感じを出してるが、直訳すれば、『面白かったから』なのは間違いない。


何故だ。私の運命には、平穏無事に生きられない呪いでもかけられているのだろうか。心を殺す人生も辛かったが、肉体的に殺すか殺されるかみたいな人生は、もっと辛いのではないだろうか。


切実に猫になりたい。毎日ゴロゴロしてるだけで、飼い主様が可愛いって言ってくれる家の猫になりたい。



「そんなに心配しなくても大丈夫!ちゃんとチート能力あげるからさ」


「知らない言葉に、安心できる要素は欠片もありません」


「え、日本人の学生で、チートを知らない子がいるの?英理奈ちゃん、年齢詐称とかしてない?」


「してません!なんですかチート能力って!教科書や参考書に載ってるんですか!?」



さも当然として私が知らない言葉を使う彼に、苛立ちを隠さないでいると、「わー、絶滅危惧種だー」と、馬鹿にしてるのか感動しているのかわからない声色で拍手される。否、ニヤけた表情から察するに、確実に馬鹿にされている。



「んー、本当に知識が偏ってるんだね。大丈夫?マヨネーズの作り方とか知ってる?マヨネーズの作り方は、転生する子の義務教育みたいなもんだよ?」


「家庭科の授業で習いましたね。マヨネーズとかドレッシングとか。もしかして私に期待する事って、食料関係の発展ですか?」



それなら、コックかパティシエ辺りを連れて行ってくれ。チートなんて良くわからないものはいらないし、もう御猫様なんて高望みもしないので、せめて地球に転生させて欲しい。



「それでも良いよ。英理奈ちゃんは、身につけた知識を活かすもよし、活かさぬもよし。次の世界で自由に生きて欲しいんだ。私はユーゴワールの神になるとか宣言しちゃっても良いよ。僕は、それ見て大笑いするだけだから」


「なんですかそれ。5000年放置された無法地帯の神なんて、誰がなりたいなんて思うんですか。今まさに、転生すら御免被りたいって言ってる人が目の前にいるのに、良くそんな冗談が言えますね」


「そんなに怒らないでよー。一応、英理奈ちゃんには申し訳ないなとも思ってるし、ちょっと不憫な子だなって憐れみの気持ちも持ってるんだ。だから、次の世界では好きに生きる力を、生きられる力をあげたいわけ。それがチート能力だと思ってくれればいいよ。本来は努力して手に入れる力や、努力しても手に入らないような力。ただし、それがあるだけで生き易くなる力。そう解釈してくれればいい。流石に問題のある力は与えられないけど、可能な限り希望を叶えてあげるよ」



要は、オマケつけるから、不良在庫も引き取ってくれない?って事か。ただ、その取り引きが拒否不可能なだけで。正直、神としての資質は皆無としか思えないが、腐っても神。恐らく、転生と転生先を断る事は出来ないのだろう。


ならば私の生存率を上げる為にも、可能な望みについて知っておかねばならない。例えば、どんな力がアウトですか?と問えば、彼は少し考えた後で、



「目があっただけで人を殺す力とか?」



などと(のたま)った。


いるか、そんな力!

何をどうしたら、そんなバケモノとして殺されそうな力を手に入れたいと思うんだ。目があっただけで人を殺すとか、来世で引き籠りになるしかないではないか。一人ぼっちは、もう充分だ。



「もっと参考になりそうな話でお願いします」


「重要な事なんだけどなー。さっきも言ったけど、積極的に人を殺すような行為は穢れの対象になっちゃう。そんで、魂を穢すっていうのは、僕らの仕事が増えるって事だから、明らかに世界に対して悪意を向けられるような力を与える事は出来ないんだよね」


「道徳的観念からではなく、仕事量軽減の理由からなんですね」



真剣に神様を信仰している方々が聞いたら泣いてしまいそうだ。この神に放置されていたのは地球も変わりないが、恐らく部下が優秀だったのだろう。真っ当な倫理観や道徳観を持つ人々が大多数の世界に成長して、本当に良かったと思う。



「まあ、そういうわけだから、その辺りを踏まえて、サクサクーっと希望する能力を考えてもらってもいいかな?残業なんてナンセンスだからね!!」



改めて言おう。

こんなクソ上司の下で働いていたのに、地球を発展させた部下の人……グッジョブ!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ