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18 邂逅(2)



「ふぇっ?」



今度は私が蚊帳の外に置かれる番だったが、何やら込み入った事情がありそうなので黙って聞いていた所、急に責任を問われ、思わず間抜けな声が漏れた。



「あの、全く話が読めないんですけど」


「とりあえず、責任取りますって言ってくれれば話は早いんだけど」


「断固拒否します。なんでそんな危ない事しなきゃならないんですか。しかも一度騙された相手に。

説明は過不足なく正確に。後戻り出来なくなってからの後出し情報をしないと約束してもらえれば、取り敢えず話し合いの席にはつきます」



全く身に覚えのない事に責任をとれと言われて、素直にイエスと言うと思ったのか。しかも一度騙された相手に対して、無警戒でいると思ったのか。


まさか、本気で私が五体投地するほど崇拝してると思ったのだろうか。前世も今世も、邪神に祈るような生き方はしていない。寧ろ、邪神死すべしだ。



胡乱な目つきで目の前の岩を見つめれば、面倒くさいけど仕方ないかと溜息をつかれた。溜息をつきたいのは此方の方だというのに。



「簡単に言うと、彼は最高の失敗作だったんだよね」


「簡単にされ過ぎてわかりません」


「んー、何というか、まだこの星が出来たばかりの時、管理者は僕じゃなかったんだけど、その管理者が滅茶苦茶だったらしいんだよね。よく言えば向上心にあふれた働き者。悪く言えばマッドサイエンティスト。この世界を巨大な実験場のように扱って、日々強い生物を作り出す事だけに心血を注いでいたんだ。

その強い生物を育てるために、植物や環境を整えた事で、結果として星を繁栄させるという成果はあげたんだけど、彼の真の目的である、強い生物を作るという肝心の目的は中々叶わなかった。何度挑戦しても、地球に生息している動物を少し強くした程度の生物しか作れなかったんだけど、ある時偶然、たった一匹の魔物が生まれてしまったんだよね」



心なしか沈んだ声に、私は息をのむ。



「その魔物は、当時の世界では、あまりにも強すぎたんだよね。まだ種も個体数も充分に揃ってなかった状態では、現存する生き物を食料として、次々と消費していくだけの存在。それを他の神が良しとしなかったんだけど、管理者であった神は一向に改善しようとしない。ただただ、その魔物を育てるためだけに星を利用してたから、とうとう偉い神様が怒っちゃってね。

強制的に封印されて、今も天界で絶賛監禁中。魔物は本来なら殺処分だったんだけど、意思の疎通が出来た事、自分の食欲を超えた殺戮をしなかった事、そもそも神に弄ばれたと言っても過言ではない事。それが減刑対象となって、その魔物の力と同程度以上の生物が一定数揃うまで封印という形で落ち着いたんだ」



もう、わかってるよね?と言い、会話が途切れた。


ああ、そうなのか。

私が最初に出会った岩が、その封印された魔物なのだろう。だから岩なのに探知結界に反応したのだ。一体、何百年という時を、此処で一人過ごしたのだろうか。



「まあ、そんなわけで時が経ち過ぎたし、担当も変わったしで、神界的には忘れてたみたいなんだけど、今回ニコラちゃんが発見した事で表沙汰になっちゃったから大慌てみたいな?」


「「えっ?」」



まさかの発言に、私の声とバリトンボイスが重なる。



「いやあ、前提条件からすれば、生物の進化がどんどん進んでたから、本来ならもう解放してても良かったはずなんだよね。

その辺の魔物相手なら余裕で勝てるけど、竜種とか神獣とか相手だと勝てないし、良い勝負しそうな魔物や人もいるしね。でも偉い神様達が揃って忘れてたなんて言えないから、結界を壊せるような強者が現れるのを待ってたって事にしたいんだって」



「つまり私が見つけた事で、本来ならとっくに解決してたはずの忘れられていた案件が露呈し、そのミスを誤魔化すために、現責任者に責任を押し付け、無理やり理由づけをさせにきたと」



「そういうこと。魔物が破れない結界をすり抜けたという事は、少なくともその一点においては魔物を凌駕する力があるという事だし、現管理者が送った人材だから監視も容易いしという事で、ニコラちゃんが管理するのであれば解放を認めるって事らしいよ。随分頑張って言い訳考えたよね」



「ねえ、神様ってポンコツばっかりなの?」



忘れられていた……と、目の前の岩からポツリと漏れた悲痛な声を、私は聞き逃さなかったぞ。とりあえず、忘れてた奴等は全員、岩さんに土下座しなさい。



「まあまあ、僕みたいにデキる神様もいるから安心して。実際、条件付きで彼の解放権限奪い取ってきたでしょ?」


「お固い頭の方々が考えた言い訳を、たった今全部暴露してましたけどね」


「嫌だなあ、そんなのムカつくからワザと暴露したに決まってるじゃん」



僕が黙って責任とるわけないのにねーと、ケラケラと笑う様子に、果たしてどちらの神が正しいのかわからなくなってくる。一応、良い仕事したと認めたい気持ちはあるのだが、心が拒否をするというか。



「まあ、それはさて置き。解放される条件はわかったよね?発見者であるニコラちゃんが彼のお目付役になる事。君はニコラちゃんの監視下に置かれる事を受け入れる事。この二点が承諾されて、解放はなされる。さて、それぞれ返答をお聞かせ願おうかな?」



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