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優しいしるし  作者: 佐久間みほ
本編
13/15

12

先生と吉澤さんの会話をBGMに、どうやら寝てしまったようだった。

気づくと、先生のジャケットがかけられていて、車の中は私一人。

思わず先生のジャケットを引き寄せて顔を覆う。

こうすると、なんだか抱きしめられてる気持ちになる。

ほのかにグリーンノートとウッディな香りが混じった、先生の香り。

頭のどこかで、「変態か」と冷静にツッコミを入れる自分もいるけど、幸せな時間だからいい。


・・・そうか、幸せなんだ。

先生に包まれることが、私にとって精神安定剤だと思ってたけど。

もちろんそれは間違いじゃないと思うけど、言葉をもらったからストンっと入ってきた。


ぼんやりと考えていたら、運転席が開いた。


「起きたか?」

「ごめん、寝ちゃってたんだね。ジャケットありがと」


いや、大丈夫だ、とシートベルトを締めて、エンジンをかける。


「あの騒々しい内容でよく寝れるもんだと関心してたぞ?」

「吉澤さん?」

「ああ、逆に申し訳ないことしたって言ってた」

「いやなんか入り込めなさそうだし、ってぼんやりしてたら寝ちゃってたんだよねー」


スムーズに車は道に吸い込まれていく。


「睡眠取れてるのか?」

「んーまあまあかなあ」

「そうか。で、家行くけどいいな?」

「うん」


それから、先生の家までの少しの時間、車内は無言だった。

でも、居心地のいい空間でもあった。


****


ソファを背もたれにして、カーペットの上に座る。

お気に入りのクッションを抱いて。

先生も飲み物を持ってきてくれて、そのままカーペットの上であぐらをかいた。


「さて。あのメモ書きだけど?」

「うん」


あの日、先生のメモの下に書いたのは、私なりの決意表明。

誤解させないように、一旦ゼロにしたいですって書いた。

だから、先生の家に置いておいたものを全部整理したり、鍵も返した。


「ゼロになって、見えたものはなんだ?」

「先生」

「ん?」

「先生がいた」

「・・・そっか」


すごい優しい目で見てくれるこの人の気持ちに、私はちゃんと答えられるだろうか?


「先生あのね?」

「ん、ちょっとまった紗絢。すぐには無理かもだけど、ここで先生はやめてくれると嬉しいんだが」

「あー・・・」

「まさかと思うけど、下の名前知らないとかないよな?」

「そのまさかだったりするかもしれないなっていま一生懸命脳のCPUをですね」

「まじか・・・でもそうだよなって俺もおもった」


思い出しても、先生のフルネームを知ることってなかったかもしれない。

兄たちは名字でしか呼ばないし、私も出会った頃から先生って呼んでたし。


「朔だ。」


抱えてたクッションを横に置き、背筋を伸ばして、ふっと一息入れる。


「朔さん?」

「呼び捨てでいいぞ?」

「朔?」

「なんだ?」

「遅くなってごめんなさい」


頭を下げて、謝ったら、ふわっと抱きしめられた。


「おかえり」


たった一言だったけど、その一言が嬉しくて、涙がこらえられなかった。

しがみつくように抱きつき直し、グズグズした声で、答えた。


「ただいま」


ーーーーー


後日談。


「ところで、なんで吉澤さんの名前呼び捨て?」

「いや、あいつの彼氏?が俺の弟なんだわ」

「は?そうなんだ」

「そのうち会うことになるんじゃないか?」

「吉澤さんいろいろ不詳だから、すっごい楽しみかも」

「そうか?和心は結構天然だぞ?」

「そうなの?」

「俺の弟との出会い方とか、普通に考えたら警察沙汰だし」

「は?大丈夫なの?」

「どっかで見たことある顔だとおもったんですよねーっていうどっかも、俺の顔だったし」

「ん?どういうこと?」

「いや、俺の弟コイツだから」


そう言ってたまたま着けてたTVに写ってる人を指差す。


「え!えええええええ?!」


こんな声出たんだってくらいの声量で叫んでしまったくらいには、驚いた。


そんな吉澤さんと先生こと朔の弟さんのお話は、どっかまた別のところで。


ということで、駆け足で詰めるだけ詰めたお話でした。

いろいろ詰め込みすぎて、展開早くなったり、説明が杜撰だったりしてたと思います。

そのうちひっそり直します。

数年ぶりに書いてみましたが、やはりなかなか難しいものです。

お目汚し、失礼いたしました。

ニヤニヤしてもらえてれば嬉しいです。

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