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金髪ボクっ娘の太陽神話  作者: 神田大和
外伝「農奴ジェフリーはお姉ちゃんと暮らしたい」
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第13話

「――チェンジバレット・フラッシュバン」


 音声認識により、拳銃より放たれる銃弾の性質を変更する。

 今までは通常の殺傷弾だったのを、音と光を生み出す閃光弾へと変質させる。

 ……これを放てば、視界の端々にいる死体どもは群がってくる。そこからは一刻の猶予もない。


「――行くぞ、アティ」

「頼むわ、ジェフ――」


 交わした言葉は一瞬、そして俺は引き金を引く。

 光と音が弾けて、死体どもが一斉に叫び声をあげた。


「がぁあああアアア――!!!」


 木材でも叩き割って粉々にしたみたいな”叫び声”が響く。

 それは”死の女神”の呪詛だ。サータイトに魅入られた死体たちが、生きた人間に気づいたのだ。

 ならばあとは、引きずり込みに来る。自分たちと同じところへ。女神の仲間を増やすために。


「――チェンジバレット・キリングイット」


 通常の殺傷弾へと魔力弾の性質を戻し、近づいてくる死体どもの脳天を撃ち抜く。

 ……もう、無駄弾は使わない。的確に脳天を撃ち抜き、その動きを止めていく。

 人間の要は”頭”だ。ここを砕けば、死の女神の声を聴くこともできない。


「チッ、小綺麗な真似をしていられるもの、ここまでか……ッ!」


 死体どもの数がドッと増えてくる。走る死体の足音で、更に死体が寄ってくるのだ。

 これほどに数が揃えば、こちらの作戦には充分。

 だが、その分、こちらが生き残るために必要な労力も、跳ね上がった。


「チェンジバレル・ガトリング……ッ!」


 ひと方向から襲ってくる死体の数が10人を超えた。それが複数方向だ。

 10回も頭を撃ち抜いている余裕はない。だから、俺は、銃身の構造を変化させる。

 複数の銃口が回転しながら次々と弾丸を連射できる銃身”ガトリング”へと。


「ッ、まだか! アティ、ファ……ッ!」


 屋敷に仕掛けられた防御術式を破れないのなら、これはただの自殺行為だぞ……ッ!


「……っ、ジェフ、あと10秒!」


 10秒!? あと、10秒だと……ッ!

 くそ、アティめ、屋敷の防御術式はすぐに解除できると言っていたじゃないか。

 話が違うぞ……ッ! ちくしょう、恨み言を言っている余裕もねえな……!


「ッ、チェンジバレット、リードショット……ッ!」


 ガトリングだけでも反動と魔力の消耗が大きくなる。

 だが、この連射性能をもってしても死体どもの動きを止め切れていないのだ。

 ならば、これしかない。ここにあと10秒留まるというのならば、答えはひとつだ。

 連射される弾丸の”散弾化”――これ以上の”面制圧”は、俺には出来ない!


「……これで、こうでしょ! だから、よし、抜いた! ジェフ!」


 開く正門、無数の死体を引き連れて突っ込んでいく。タンミレフト家の屋敷へと。

 足の速い死体どもと、命がけの追いかけっこだ。


「チッ、すっころんでろ! 死体ども!」


 最前列の死体、その足を撃ち抜き、地面に転がす。

 そこから起きるのは、ドミノ倒しだ。狙い通りだぜ!


「ジェフ! 扉をぶち抜いて!」

「はいよ、注文通り!」


 屋敷の庭を駆け抜け、館そのものの扉を叩き壊す。

 その拍子にいくつかの防御術式が発動したように見えるが、それらもすべて撃ち壊してくれる。


「ここからは!?」


 館の中に入り、真後ろまで迫った死体どもに視線を向ける。

 ここからも、面制圧をするのか? だが、それは、余りにも無意味な消耗じゃないか?


「すこし隠れる、つかまって!」


 ガッと俺の身体を抱き寄せ、ワイヤーガンを引き抜くアティ。

 これまたシャレた道具を持っているものだ。なんて感想を抱いた直後、アティに抱えられた俺の身体が天井まで引き上げられた。


(この技術、まさかドクターケイの関係者……? なんてことは、ないよな……?)


 金属の糸なんてものを用意するには、かなり高度な魔術式が必要になる。

 それを用意していること、それを銃の形にしていること、そこから感じ取れるのはドクターケイやトリシャの系譜だ。

 彼と彼女以外に、この機械魔法の系譜を使う人間が居るのだろうか?

 ……いや、機械魔法なんて学科が立ち上げられたのだ。すでにどこまで広がっていても、おかしくは、ない。


「さて、あとは釣りの要領ね」


 俺の身体をしっかりと抱きしめてくれているアティが、首元で囁く。

 その声にくすぐったさを感じながら、俺はアティの握るワイヤーガンを握り、彼女の身体を支え返した。

 女に支えられるのは、趣味じゃないんだ。


「あら、紳士なのね?」

「……生きている女くらいには、優しくしたい」


 見下ろし、そこに広がる地獄に、息を飲む。

 老若男女ありとあらゆる人間が揃っていて、俺は思わず探してしまう。

 あの看板娘の、その姿を――


(ッ、クソ、考えるな……どうしようも、ないことだ……!)


 今からあのカフェテリアに戻るか? 生き残りを探すか?

 この死体の群れを前にして、それに意味があると? そんなこと、思えるはずがない!


「――やれやれ、ネズミが入ったかと思えば、これか」


 足音がした、余りにも整然とした足音が。声が響いた、余裕のある男の声が。


(あれが、魔術師フランセル……ッ!)


 魔術師らしく、自らに仕込んだ術式や魔道具を隠すようなローブを身に纏っている姿を見れば、間違えるはずもない。

 そして、露出した顔は青白く、肌の一部が崩れて部分的には骨まで露出している。

 間違いない。あれは、死の女神・サータイトと契約した者の姿だ。


「よかろう、計画を早めることとしよう――」

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