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金髪ボクっ娘の太陽神話  作者: 神田大和
第2章「機械仕掛けのストライダー」
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第42話

「クソッ、姉さん……」


 キリングイットからガトリング、エクスプロードまで一通りの攻撃を仕掛けてみた。

 だが、眼前のガラスは傷ひとつ着いていない。

 ……しかし、姉さんが目を覚まさないのはなんだ? ニコレットめ、姉さんにいったい何を。


「一撃で壊すのが無理なら――」


 太陽の雫を握る。そしてこのアーティファクトが与える力、疑似的な神官を仕立て上げる加護を最大限に引き出す。

 ……リリィなら壊せるのだろうな。この程度の仕掛けくらい。

 そんなことを思いながら、右手に最大限の炎を起こし、ガラスに触れた。


(ここからは根競べか……)


 背後では戦闘音が響き続けている。エルトが戦う音が響いている。

 ……あいつは大丈夫だろうか。機械魔法なしで、あのニコレットに勝てるんだろうか。

 ベータは、ミハエルは……? さっき聞こえた冷却弾が2回弾ける音は……?


「……効果あり、だな」


 幾層にも重ねられているように見えるガラス、その表面が歪み始めたのが分かる。

 なるほど。この疑似神官の炎をもってすればぶち抜けそうだ……!


「――へぇ、その紅い髪、神官にでも転向したのかい? それとも何かの反動かな」


 背後からミハエル・ロッドフォードの声が聞こえた。

 振り向いた先、開いた暗闇の中から白い服に身を包んだ色男が立っていた。

 ……ニコレットとベータの力で送り込まれてきたということか。あと少しで姉さんを助けられそうなところなのに。


「ミハエル……せっかくの奇襲の機会、捨てて良かったのかよ?」

「ふふ、僕の目的は”こちらとあちら”を繋ぐことだ。君ほどの才能を殺してしまっては意味がない」


 ……そういえば裏切った時にも言っていたな。

 5年もかけるのは遅すぎると。姉さんだけ奪われたのならば、俺は5年もかけずに転移装置を完成させるはずだと。


「……ちょっと教えてくれよ、ミハエル。俺さ、お前から帰りたいって聞いたことないんだ」

「ああ、そうだね。言ったことがないからね。だからバトーも僕を信用した」

「ならば、どうしてニコレットについた? 何のために?」


 伏せていただけだとは思えない。

 こいつの飄々とした振る舞いからして、知らない場所でも地位を築き直せる人間だと思うし、過去に執着するような部類にも見えない。

 それこそケイのようにスカーレット王国での身分を用意することに注力しててもおかしくない奴だ。


「言っているだろう。僕の目的は”行き来”だ。なるべく早く行き来できるようにしなければいけない」

「……何のために?」

「2つの世界を行き来することで技術のやり取りができるようになる。それは間違いなく金になる」


 ……ふむ、転移技術の独占でも狙っているんだろうか。

 それにしては自分は地球に帰って、俺に開発させようとするのは腑に落ちないが。


「お前、金に興味があったのか。知らなかったよ」

「金に興味のない人間はいないさ。それにだ、既にこの2つの世界を行き来している奴らがいるとは思わないか?」

「……あ?」


 既に行き来してる奴らがいる……? いや、確かにクリスの父親がそれか……?

 でも使い捨ての上に、再生産することは無理だってケイが言ってたよな。


「ふふ、ただの戯言だよ。忘れてくれ――」

「……それで、お前はどうしてもシェリーを使って転移するというのか?」

「もちろん。この場にいる全員があちらに行ったのなら、かなり早期に転移装置を造り直せるさ。あっちの技術でね」


 ……こいつ、俺がここに来たのは思惑通りとでも言いたげだな。


「それにさ、ジェフリー。君だって姉さんと一緒ならばこちらにこだわる理由なんてないんじゃないのかい?」


 引き抜いたのはただの拳銃。背中を動く4つの砲身は品切れと見るべきか。

 クリスにビッグナックルとやらを壊されていたし、根幹が同じであれば修理できていないとも考えられる。

 しかし、そうと見せかけたハッタリの可能性もある。こいつがいくつの武器を持っているかなんて分かっていないのだから。


「……お前らのいけ好かない計画に乗って見知らぬ世界になんていくわけねえだろ」

「王国貴族なんて永遠に見なくて済む場所だよ? ジェフ」


 ――気に入らねえな、こいつの見透かした態度が。


「やかましいぜ、ミハエル」


 今の弾丸はエクスプロードだ。本気で狙えば殺せる。

 それでも、太陽の雫で強化せずに若干外して狙えば死にはしないだろう。

 命だけは助かるはずだ。


「……僕じゃなかったら、死んでたよ」


 そう笑うミハエルの左腕には巨大な盾が構えられていた。

 ……つくづく地球の機械技術というのはどうなっているのか分からないな。


「死なねえよ、あの狙いじゃ――」


 そう答えた直後、肩に強烈な衝撃を受けたことを理解する。

 ……直撃か。クソ、甘く見てたな。


「……俺を殺さないんじゃなかったのか?」

「死んでないだろ?」


 ふふ、違いない。確かにその通りだ。


「っ――その再生力と紅い髪、ジェフ、本当に神官になったのか? 君は」

「質問に答える必要性を感じないな」


 こちらが弾丸を放つよりも速く、相手が引き金を引いてくる。

 ……さて、こいつを殺してしまうこと自体は容易いが、どうにも気乗りしない。だから――


「――チェンジバレル・ワイヤーガン、チェンジバレル・スタンガン」

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