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金髪ボクっ娘の太陽神話  作者: 神田大和
第2章「機械仕掛けのストライダー」
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第40話

「――ハァ……まさか出し抜かれるとはね、殺しておけばよかったわ」


 ドクターケイの研究所、その中で最も大掛かりな発明。

 転移装置が置かれた部屋の中で、ニコレットと銃を向け合う。

 この距離だ。冷却による不発はあり得ない。どちらかが引き金を引けば、それだけで相手を殺し得る。


「悪いな、機械魔法だけが俺の力じゃないのさ」

「……その不自然な治癒、また別の力ってわけ?」

「ああ、流石に機械魔法で神官の真似事はできないさ」


 ニコレットから意識を外し切ることなく、周囲を見渡す。

 先ほどまで開いていた背後の暗闇は閉じた。……いったいあの空間が何だったのか、それは分からないが、あれに閉じ込めれば出てこられないみたいな仕組みではないのだろう。

 もしもそうなら俺とクリスを捕まえた時点でニコの勝ちだ。中に入ってくる意味がない。


「神官の真似事……あんた、いったい何を手に入れたわけ?」

「手の内を晒す傭兵がいるわけないだろ?」


 背後の暗闇が閉じた今、気を配るべきは、転移装置の操作盤の近くに立つミハエル、ベータ……

 ……おいおい、マジかよ、なんでベータがもう1人いるだよ。クリスと戦っているのはいったいなんなんだ……?

 なんてことを今考えてもしょうがないか。現に戦力が1人多いという事実があるだけだ。


「流石はタンミレフトの英雄様って訳ね。まぁ、良いわ。

 ここに来てしまった以上、あなたにも同行願おうかしら? 私たちの機械魔法で地球でも征服してみない?」


 転移装置が鈍い音を立てていた。

 そして操作盤よりも上、階段が続いた先、姉さんが捕らえられているのが分かる。

 椅子に縛られ、ガラスで括られた空間の中に閉じ込められているらしい。

 ニコめ、何が何でも逃がさないつもりか。しかし、その近くにエルトがいるのはどういうことだ……?


「……ああ、この部屋の中にいる人間は全員が転移するって訳かい」

「ええ、その通りよ。既に装置は起動している。あとは時間が経てば私たちの勝ち」


 一瞬ばかりエルトに視線を送る。

 ……相変わらず読めない表情をしているものだ。

 こいつ、いったい何を考えているのやら。あの時に見せた合図を信じても良いものなのか。


「その前にお前を倒してしまえばいい訳だ」

「できる? 3対1なのよ、私1人を倒せなかったのに」

「それをやるつもりでお前を追ってきたのさ――」


 ミハエル――!と叫ぶニコ。瞬間、ミハエルの銃口がこちらを向いた。

 

「君ほどの才能、殺したくはないのだけれどね」

「安心しろ、殺されてやるつもりもない」


 向けられている銃口は3方向、ミハエルとニコレット、そしてベータから。

 ベータは腕が変形した銃ではない。ただの拳銃だ。


「チェンジバレット・フラッシュバン」


 3発ほど強烈な閃光弾を放つ。

 そして、この場にいる全員の視覚が死んだところで”太陽の雫”を使って瞬間的に視野を回復させる。

 さて、これで後は――


「ッ――こんなもので私の視界を奪えるとでも……ッ!」


 ――聞こえる声、駆け上がる階段、すれ違う影に全てを託す。

 どうにもベータに閃光弾の効果はなかったらしい。けれど、俺が対策を打つ必要はない。

 だって、あいつもまた避けていたのだから。俺の攻撃を読んでそもそも何も見ていなかったのだから。


「やはり貴女が真っ先に越えてきましたね――」


 金属片が空を切る音がする。瞬間、ベータの持っていた拳銃が吹き飛ぶ音がした。

 相変わらず恐ろしいくらいに正確な狙いだ。見ていなくても分かる。

 そして、続く2つの音。恐らくニコとミハエルの拳銃も撃ち落としたのだろう。


「ッ、どういうつもり……エルハルト、カーフィステイン!!」

「騙し合いは貴族の嗜みだろう? 君がそうしたように、僕もそうしただけのことだ」


 姉さんが囚われているガラスに辿り着く。そして一瞬ばかり、振り返って見下ろした。

 パチンコを引き抜き、構えたエルトを。


「あちら側への転移に立ち会いたいんじゃなかったの……?」

「ふん、そんなものジェフリーのお姉さんを犠牲にしてまで見たいわけないだろう。

 僕は君が本気でシェリーを守りながら今回の事態を収束させるつもりだと信じたから、彼女を連れてきたんだ――」


 エルトから視線を外し、眼前に立ちはだかる壁を見つめる。

 姉さんを捕らえるこのガラス、どう突破する? 拳銃で破壊できるか……?

 エクスプロードを使えば、姉さんを傷つけてしまうだろうか。これの強度はいったい……


「――ニコレット・シルキーテリア、君はこのエルハルト・カーフィステインの顔に泥を塗った。覚悟を決めてもらう」

「ふん、勝てると思わないことね。機械魔法を使うことのできない貴族風情が……!」


 引き金を引く音、響く冷却音。空気が凍てつく、乾いた音が響く。

 ゾッとして振り返るけれど、冷却の中心地にエルトは居なかった。階段を滑り降りていたのだ。相変わらずの器用さに恐れ入る。


「ジェフ! こちらは任せてもらう! そっちは任せた!」

「頼むぜ、エルト……!」


 ……このガラス、出入り口が見えない。

 下の操作盤で開く仕組みなのか、そもそも開くことを想定していないのか。

 ニコたちは転移を使える。ならば完全に閉じられた空間を用意しても何の支障もない。自分たちだけが出入りできる最高の空間だ。


「……チェンジバレット、キリングイット」

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