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金髪ボクっ娘の太陽神話  作者: 神田大和
第2章「機械仕掛けのストライダー」
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第37話

「……流石じゃな、バトー。君の力には恐れ入るよ」


 この作戦、バトー・ストレングスを招き入れたのには理由がある。

 本来であればストライダーであるバトーを巻き込みたくはなかった。彼が帰還にかける思いを知っているのだから。

 けれど、こやつの力を借りるしかなかった。この老いた身体では戦闘らしい戦闘はもはやできない。

 だからこそ必要だったのだ。バトーとバトーの持つ”万能鉱石”が引き起こす、光学迷彩によるカモフラージュの力が。


「――元来、これができるから重用されてきた。それよりもケイ。教えて欲しい。

 あのベータタイプ・ウェブドールとは何だ? 貴方はあちら側では何者だったのだ?」


 バトーは頷いてくれた。転移装置を破壊するワシの作戦に。

 それが仮初であるかもしれない。思いが揺らぐかもしれない。けれど今は信じるしかない。

 そして頷いてくれた彼ならば、答えるほかあるまい。今まで誰にも話してこなかった過去を。


「――東側の工作員と言えば、通じるかな?」

「あらかたな……ベータタイプというのは、どこが開発していた?」

「米国、ボックスシップというダミーカンパニーじゃが、その大本は分からぬ。

 若き日のワシに命じられたのは、あれについての情報の奪取だけじゃ」


 我々が潜入しようとする裏口、そこには数体の機械が構えていた。ワシが開発した移動砲台じゃ。

 そう、これらと戦わずして越えるためにバトーを引きずり込んだのだ。酷な役割をさせると分かっていても。


「……こいつら、遠隔操作、だったよな?」

「そうじゃ」


 領兵を追い返し続けたそれらを、ワシらは素通りしていく。

 あれは遠隔操作ができる砲台に過ぎない。センサーの類いはなく、視覚情報が通信されているだけだ。

 ……今回はそれに助けられた訳じゃが、今後は熱や振動に反応するセンサーを積んでおくべきかもしれぬな。


「――裏口の数だけ、動いているのだとしたら、おかしくないか?」

「動かす人間の数が足りぬと言いたいかの? バトー」

「ああ、敵は4人。ジェフリーたちの迎撃に最低でも1人は出ているはずだ。3人ばかりで、これだけの数の映像を見て指示を下せるか?」


 無理じゃなと答える。そう無理じゃ。裏口の数は8つある。それぞれに複数体の人形を配置して操作する。

 そこまでだけならば無理ではない。

 ただ、かなり訓練された領兵たちを打ち負かすような高度な操作となると話は別だ。まともな人間にはできることではない。


「無理だというのなら、どういうカラクリが……」

「ベータの特性じゃ。奴の名は”ウェブドール”じゃろう?」


 こちらの言葉に首を傾げるバトー。まぁ、無理もあるまい。

 ワシ自身もアレの特性を理解し切っているかと言えば、どこか分かっていない部分もある。


「あれは人形の網なんじゃ。あれは複数の身体をひとつの意識で運用することができる。

 もっとも、あいつ自身の身体は3つ程度しか残っておらぬが、他の身体を運用する分には問題ないということじゃろう」

「ひとつの意識で複数の身体を操るだと……?」


 バトーの言葉に頷く。そして彼の姿に昔の自分を思い出す。

 そう、ワシも驚いたものじゃ。潜入した先、お目当ての機械人形があったと思ったら、同じ姿のそれらが並んでいた時には。

 彼奴との戦闘の中で、ベータの特性である転移が発動してしまった。ジェフの話ではニコレットも発現させていると聞くそれが。


(65年か……本当に途方もない時間が過ぎたものじゃな)


 ――ただの使い捨ての駒でしかなかったあの頃から、こちらに来ていくつものを築き上げてきた。

 シルキーテリア家の令嬢に見初められ、お抱え魔術師となった時から人生が変わった。

 本当の意味で誰かに必要とされることの意味を知った。そして、同じような仲間たちもできた。

 もはや、自分自身の帰還など望んでいない。あちらに戻ったとして誰が生きている訳でもないだろう。けれど、それでも返してやりたいと思う。

 バトーのことを、ミハエルのことを、若き日のワシのようにこちらに来てしまって、そしてあちらに何かを残してきている若人たちを。


「――やはり生きていましたか、ドクターケイ――」


 研究所の地下深く、いくつかの重要な万能鉱石に仕掛けている自爆装置を起動するための最奥の部屋。

 その扉を開いた瞬間だった。昔懐かしい彼女の声が響いたのは。


「見えているのか? なんて質問は無粋かな」

「ええ、見えてなくても分かります。この状況でこの扉を開くなんて貴方以外には居ませんよ。

 そして、足音からして2人いるのでしょう? 連れ添いはどちら様です? バトー・ストレングス?」


 バトーが光学迷彩を解除する。


「何も解くことはあるまいて」

「……アンタ、こいつと昔話がしたいって顔、してるぞ」


 ――ふむ、顔に出ていたか。ワシもまだまだじゃな。


「あら今更になって私と何を語ろうというのでしょう? 私を殺し、私を捕らえ、私を元に今の地位を築いた貴方が」

「そうじゃな、なに単純に昔話と……最も知りたいのは”今のお主”が地球に戻りたがる理由じゃよ。ベータ」

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