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金髪ボクっ娘の太陽神話  作者: 神田大和
第2章「機械仕掛けのストライダー」
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第27話

「なるほど。では、始めようか。幸い、僕らの目当てもそこにいる――」


 ミハエルが構える銃口、それがひとつ増え、狙いを定めた。

 姉さん相手に。いや、姉さんの前に立つクリスを狙った。


「――チェンジバレット・エクスプロード」


 ミハエルが放った弾丸、それを撃ち落とすように放つ一撃。

 続けてミハエルの足元にもう1発。


「……次は殺すぞ、ミハエル」


 最初に殺せなかったのは自分の甘さだ。

 だが、そう簡単に殺せるものか。目の前にいるのは、旧知の仲だ。

 友と呼べるほどに親しい訳ではない。けれど、親しく語ったことのある相手なんだ。


「ベータ、他の奴ら狙っていてくれるか。邪魔が入ったら台無しだ」

「良いですよ、お楽しみください。ミハエル・ロッドフォード」


 そう言いながら両腕を変形させるベータ。複数の銃口が、大まかにこの場にいる全員を狙っていた。

 ミハエルといい、ベータといい、完全にストライダーそのものだ。こちらでは測り切れない機械魔法を駆使してくる。

 いいや、彼らの技術を魔法と呼ぶのが正しいのかさえ分からないけれど。


「……ジェフリー、僕は一度、君と戦ってみたかった」


 静かな笑みを浮かべ、背中から伸びる砲身全てをこちらに向けてくるミハエル。

 右手に握る拳銃も同じだ。伸びている銃口は5つ。

 肩の上から2つ、腰から2つ、右手に1つ。背中の砲身はいったいどう操っているのか。興味深いものだ。


「知らなかった、お前が戦闘を楽しむ部類の人間だったなんて」

「フッ、これでもあちらではそういう仕事をしていてね――君も同業になったんだろう? 傭兵って奴に」


 その言葉と同時だった。奴が引き金を引いたのは。

 応えるようにこちらも爆裂する弾丸を放つ。そして同時にもう1丁の拳銃を引き抜く。


「チェンジバレット・ホーミングレイザー」


 爆炎による敵弾丸の減衰と視覚の簒奪。その中でこちらは”自動で魔力を狙う”弾丸を放つ。

 避けれるものなら、避けてみせろ、ミハエル……ッ!


「流石だ、流石だよ……ッ! ジェフリー……ッ!」


 爆炎を切り裂き、現れるは白い装束に身を纏った男、ミハエル・ロッドフォード。

 こちらの追尾弾は的確にミハエルの装備を打ち砕いていた。

 4つの砲身と拳銃を失った奴は、素手でこちらに殴りかかってきたのだ。


「チェンジバレル、スタンガン……ッ!」


 両方の拳銃を近接用に変更する。これで下手な遠慮なしで全力でぶん殴れる。


「――取ったぜ、ミハエル」


 奴の蹴りを受け止め、その太腿に銃口を突き付ける。

 そして俺は引き金を引いた。さぁ、走れ――雷と化した魔力よ。


「残念だったね。スタンガンへの対処くらい施してあるんだ」

「ッ……! 当たり前の武器だったな、そっちだったら!」


 スタンガンという名前も知識も、ギルドから教わったことだ。

 それを模倣したのがこのスタンバレルに過ぎない。

 なるほど、あちら側ではスタンガンを防ぐための衣服も珍しくないということだ。


「そういうことになる――さて、これで残るは片方だね」


 蹴り飛ばされていく魔法銃。

 そうだ。ミハエルの言うとおり、俺の持つ拳銃は残り1つになった。


「要らねえよ、こんなもん」


 残る片方の拳銃を仕舞い込む。そしてこちらに仕掛けてきたミハエルの拳を殴り飛ばす。


「ふふ、格闘もイケる口か」

「生憎と生まれついて喧嘩には強いのさ」


 交差させる拳と拳。その中でよく分かる。

 このミハエルという男は相当に訓練された実力者だ。

 そして同時にどこか本気を出し切っていない。

 これが俺の買い被りでなければ、こいつは未だに実力の底を見せていない。


「――今度こそ、取ったぜ。ミハエルッ!!」


 奴の顔面を握り締める。そのままの勢いで脳天を地面に叩きつける。

 お前が本気を出していない理由なんて知るか。

 だが、お前が本気を出さないのなら、本気を出す前に打ち倒してやる。

 二度と立ち上がれないように叩き潰す……!


「ッ……完全に取られたね、素晴らしい……」


 脳天を地面に叩きつけられてなおニヤリと微笑むミハエル。

 ……こいつ、こんな男だったのか。それなりに付き合いがあったが初めて知った。


「ッ――!!」


 ――弾丸が、頬を掠めた。


「狙いが逸れましたか。やはり全盛期のようにはいきませんね」

「……おいおい、無粋な真似はやめてくれよ。ベータ」


 思わず飛び退いていた。自由になったミハエルが立ち上がっていた。


「貴方が遊んでいるからでしょう? この局面、貴方が使い物にならなくなっては困る」

「――ふむ、早期の決着をお望みかい」


 そう笑うミハエル。奴にかまわずベータはこちらに銃口を向けた。


「ジェフリー・サーヴォ、貴方を障害だと判断しました。武器を捨てなければ殺します」

「てめぇ、人の顔面ぶち抜きかけておいてなに言ってやがる」


 魔法銃を引き抜く。そして同時に左手で”太陽の雫”に触れる。


「お前こそ殺されても文句言うなよ、ベータ――ッ!!」


 ――”女神よ、我が闘争に祝福を”――

 胸の中で、そう唱えた。かつての彼女のように。

 俺が良く知る太陽神官のように。


「チェンジバレット! エクスプロード……ッ!!」

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