表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金髪ボクっ娘の太陽神話  作者: 神田大和
第2章「機械仕掛けのストライダー」
133/310

第12話

 ――転移装置を起動する鍵となってしまったシェリーさん。

 それを狙うストライダーズ・ギルドから逃れるため、ドクターケイは彼女をアカデミアへ送り込んできた。

 ここにはトリシャ教授もジェフリーさんも、そしてボクもいる。確かにこれ以上の安全は無い。


(問題はシェリーさんの特異体質か……)


 ”魔力が見える”という特異な体質。そのせいで彼女は人混みに弱い。

 今は来たばかりだから大丈夫だろうけど、長期に渡れば体に毒なのは分かる。

 それにストライダーズ・ギルドという組織に対して守りにしか徹することができないのも危うい。

 現状はまだ彼らの故郷に近いシルキーテリア支部しか情報を知らないらしいけど、アカデミアにもギルドはあるんだ。


「――この現状、ジェフリーさんはどう考えています? 守りだけで解決できると?」

「解決はできない。ケイの打った一手は対症療法に過ぎない」


 そう言ったジェフリーさんの瞳が鋭利なものへと変わる。


「……クリス、君が姉さんの護衛をしてくれるんだったな?」

「ええ、トリシャ教授から言い値をもらう予定ですから」

「なら俺がここにいなくても良いな――」


 ……何か動くつもりか。彼は。まぁ、そういう人なんだろうな。

 トリシャ教授に土地を買われた土地借り百姓。だからこそ彼は土地を買い戻すために破竹の勢いで金を稼いでいる。

 そういう人なのだ。自分の姉が狙われているときに、狙っている相手を叩かない男ではない。


「どうするつもりですか?」

「シルキーテリアに向かう。ケイと合流してギルドを叩く」

「無茶じゃない……? 危ないよ……?」


 弟さんを気遣うシェリーさん。彼女にやさしく微笑むジェフリーさんの表情を見ていると信じられない。

 彼がタンミレフトの惨状を戦い抜いた戦士だなんて。

 けれど、お姉さんから視線を外した瞬間の冷徹な目を見て思うのだ。ああ、確かにこれは戦う人間の類いなのだと。


「ケイがいる。ギルドの一員でありながら帰還の一手を潰したあいつこそが一番危険だ」

「それは、そうだけれど……ジェフ……」

「俺はシャープシューターズ、傭兵だ。戦いには慣れている」


 言いながら立ち上がるジェフリーさん。

 ……引き留めた方が良いのだろうか。けれど実際こちらからの先制攻撃を仕掛けない限り、いつか狙われるシェリーさんは怯え続けることになる。

 ジェフリーさんの取ろうとしている行動は間違いじゃないはずだ。ましてやあちらにドクターケイという重要人物がいるのなら尚のこと。


「ま、待って。戦いになるって決まったわけじゃ、ないよ……?」

「そんなに穏便に事を済ませてくれると思うか? 敵はギルドだぜ? さすらい人たちの連合結社だ」


 ジェフリーさんの言葉に、返答を失うシェリーさん。

 けれど彼女は弟さんを止めたくて仕方がないって顔をしている。

 それもそうだろう。自分の弟が、自分が逃げてきた死地へ向かおうというのだ。誰だって止めたい。当たり前だ。


「――せめてトリシャさんと情報共有してから向かったほうが良いと思いますよ。遠いんでしょう? シルキーテリアって」

「ああ、もちろんそのつもりさ。とりあえずあいつを捕まえてくる」


 教授室を後にしようとしたジェフリーさん。

 その動きが止まる。扉を開いた直後に。


「血相を変えてどこに行くんだい? ジェフ」

「……エルト、戻ってきてたのか」


 出ていこうとしていたジェフリーさんを自然に押し戻す”エルト”と呼ばれた男の人。

 そのエメラルドのような瞳に息を呑む。白に近い金色の髪と相まって本当に宝石のような人だ。

 なんて美しい。


「ああ、ちょっと前にね――えっと、ジェフリーのお姉さんと貴女は……ひょっとしてクリス・ウィングフィールドさんですか?」

「知っているんですか? ボクのことを」

「ええ、貴女ほど有名な人はいませんからね。グリューネバルトを救った英雄”死竜殺しのクリスティーナ”さん。一度お会いしてみたかった」


 そう言いながらボクに簡単にお辞儀をする、エルトさん。

 彼の動きは全てが洗練されていて無駄がない。


「そしてシェリーさん。弟さんにはいつもお世話になっています。エルハルト・カーフィステインと申します」

「エル、ハルト……それでエルトなんだ! よろしくね、エルト君♪」


 さらっと握手を交わすエルトさんとシェリーさん。


「それでジェフ、君はどこに行こうとしていたんだい? ひょっとしてあれかな? シルキーテリアに行こうとしていた、とか――」


 エルトさんとジェフリーさんの瞳が一瞬でぶつかり合うのが分かる。


「お前、なんで知ってる……!?」

「ふふっ、これでも貴族だ。僕の情報網を甘く見ないでほしいな」


 これ、エルトさん、ジェフリーさんを逃がさないために餌を巻いたんだろうな。

 自分の手札を敢えて晒してでも。


「誰だ? 誰から聞いた……?」

「察しはついているんじゃないかい? 僕が貴族として会っていた相手、そして君たちの幼なじみでもある」


 ジェフリーさんとシェリーさんの表情を見ていると2人は察したらしい。

 エルトという人が誰に会っていて、今回の話を聞いたのかについて。


「ニコ、ニコレット・シルキーテリアだな……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=801327974&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ