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時代の敗残者 2/2
――体に力が入らない
まるで浮遊しているかのようだ。
否、現に私は突然侵入してきた怪物に担ぎ上げられ
家を後にしようとしている。
…もう二度とこの家に帰れないような気がした。
ついさっき、私は目の前の怪物を撃退すべく対人魔法を唱えようとした。
が、奴の右手に握られた工具のような…何かが私に向けられた瞬間。
冷たい風が体を通り抜けたような感覚。
その直後、目眩、頭痛、平衡感覚の喪失。
間違いない、あれは「呪詛」だ、呪詛の魔法が私の体を貫いた。
おぼつかない足取りだったが、それでも必死で逃げようとしたが
家の奥へ奥へ追い込まれていった。
怪物はゆっくりと、あえて泳がせるように、私を追い詰めた。
その顔に目以外の器官は無い。
だが怪物は確かに、笑っていた。
やがて逃げ場はなくなった
最後に逃げ込んだ書庫
お気に入りのランプはいつの間にか割れていた。
私は組み伏せられ、手足の自由を奪われた後、
怪物は荷物ように私を肩に担ぎ上げた。
これから自分がどこへ連れられるのか
私には知る由もなかった。