傾国の夢
ホラーだけども、恋愛描写が多く混じってます。相変わらず自己満足で書いた駄文です。
「逢魔が時」という言葉を知っていますか。夕暮れは邪が現れるという意味合いです。科学が発達した現代に馬鹿なと思うでしょう。これは、神隠しにあってしまった女の子のお話。
白鳥 蘭は、自分の境遇に不満を抱きながら夕暮れの十字路を歩いていた。
「お嬢さん」
屋台に座った黒いフードをかぶった男に呼び止められる。
「あなたの願いは何ですか?」不審には思ったが
「・・・もてたいし、美人になりたい。あと、皆が言うことを聞いてくれればいいのに」
「では、この本を差し上げましょう。あなたの理想の世界に連れて行ってくれますよ。お金は、要りません」
古びたずっしりとした書物を渡される、もらえるならもらっておこう。
「ありがとうございます」
家に帰ると、ベッドに寝転んで本を開く。中は髪の毛や血液が挟まっていて、呪文のようなものが書いてある。なにこれ、気持ち悪い・・・
「極上の悪夢を、あなたに・・・」
辺りが白い光に包まれた。
「おお、妲己。目が覚めたか」
目前にいるのは、威風堂々とした美青年。私よりは年上みたい。
「どうした?不思議そうな顔をして」
「・・・紂王様?」
「・・・おお、どうしたのだ」
彼の後ろの鏡に映った自身の美貌に驚いたときには、意識がなくなっていた。
「今日はよく倒れるなあ、疲れているんじゃないか」
夢じゃなかったの・・・?不安だよ、どうしよう。帰りたい。このまま家族にあえなかったらどうしよう。このままじゃ私、革命で殺される。
自然に涙があふれてくる。不思議そうに見つめ、悪名高い暴君は私を抱きしめて頭をなでる
「まるで幼くなったようだな。だが、余は今のお前のほうが好きかも知れぬ」
転移したこの世界は不安で、いつでも優しくしてくれる王様に惹かれるようになった。寂しがりやな私は不安になるたび王様に話しかけに行く。とても知識が豊富で利発で誠実で、後世に残っているイメージとはかけ離れたいい人で。日がたつに連れ、家に帰れない不安、殺される恐怖が強まる。
「紂王様、好きです」あくまで私としての告白、抑えられないくらい恋していた。
夕日が当たるせいか、彼の顔も赤い。沈黙が流れ、気づけば彼の唇が重ねられる。自分の世界でもしたことがない、私にとってのファーストキス。
「余もお前のことを、お前を一番愛しているよ。何があってもお前を守ろう。たとえ手遅れでも」
私を妲己と呼ばないことに意味はあるんですか。気づいてくれてませんか、寂しいです
「なあお前。こい、月が綺麗だぞ」
無邪気に笑う表情がさわやかで私は王様に見とれる。この人を狂わせるくらいに夢中にさせた彼女がうらやましい。
「余はお前と会うまでに過ちを犯したかも知れぬ。もう手遅れかもしれぬが、最後にお前と会えてよかったよ」私もこの恋を得られて幸せです
時は満ちた、革命の火蓋は切られる。どうしよう、うまく走れない。ごめんなさい、こんな服装慣れられない
無様に転ぶ、私に駆け寄る王様。敵がすぐ近くにいるの。気持ちは嬉しいけど早く逃げて。足が動かないの。死にたくないのに、私は殺されたくなんかないのに
「言っただろ、お前のことは余が守ると。お前と出会えて余は幸せだったのだ。すまぬな、お前まで巻き込んで」
わかっててくれたんだよね。私を愛してくれてるんだよね。
「お願い。死なないで。私をおいてかないで紂王様」
「すまぬな、お前との約束を果たせなくて」最期に私に微笑むと、雑兵どもが彼をメッタ刺しにする
声にならない悲鳴を上げて、私は最愛の人が目前で殺されてただ泣いていた。?刃物が腹から出ていて、体温が下がっていく。私は死ぬ、家族に会えない
「おお、妲己。目が覚めたか」