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廃墟に横たわる娘

作者: ぼんべい

 暗くなっても昼間の様に暖かくてワンピース一枚でも肌寒くない

 見捨てられた丘の中の捨てられた場所

 樹木の中に佇むそれを

 皆は朽ち行くものだと言うけれど

 私がもっともっと幼くて

 何にも知らなくて

 もっともっと色々な事を感じていた頃から

 ここは変わらない


 崩れ行く途中で止まったこれは

 築き上がっていくものよりも

 時間をはやくはやく流れさせる


 いつものように吊るしたカンテラの明かりを灯すと

 ぼわりと浮かび上がる

 崩れ残った煉瓦の壁と

 それに据え付けられている煉瓦の椅子

 蔦が絡まり作る模様が

 この煉瓦の作り手が自然だと思わせる

 でも、きっと、大昔にこれを作った人間も

 もう土に還ってるだろうから

 この場所は自然が作ったんだ


 「その時僕達の頭の上で輝いていたランプは

  夜の月明かりのようで

  僕達二人を祝福してくれていた

  きっと彼女の顔が赤かったのは

  『明かりに二人きりで包まれる』という事を体験したのが

  はじめてだったから」

 夜空の下で廃墟の中でなぞる詩は

 やさしく私の心を冒す

 私はそれに緩やかに任せて

 やがて眠くなると

 そっと本を閉じてそれを枕代わりにして

 静かに眠る

 

 母は今頃演奏旅行

 その巧みで力強いピアノの演奏で

 多くの他人を魅了している

 父は今頃何をしているのだろう

 母は自由奔放だ

 演奏旅行先で私を身篭もると

 ここで私を産んで

 そしてまた演奏旅行に出かけてしまった

 私の父親を尋ねると

 私も知らないわ、と答えた母を

 あの時の私はうらやましく思った


 眠る私に自然が触ると

 私は生々しい現実を感じる

 学校というはかない幻想では感じる事のない

 生き物が生きる匂い


 このまま私も自然に還ってしまえばいいのに

 そう願いながら私は今夜も廃墟に横たわる


 母のお土産話と

 詩とが私は大好きで

 いつもこの場所でそれらを楽しむ


 お願いだから私を揺り動かさないで

 溢れてしまいそうな心がどうにかなってしまわないように

 ただ、母が帰ってくるのが待ち遠しいだけなの

 廃墟は崩れないから

 廃墟のままで残っているのだから

廃墟感みたいなのをもっと出したかったですね。あと、自分では違う技法を使ってるつもりでも、大きな目で見ると同じようだったりする罠からも抜け出せるようになりたいです。

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