第三節:困惑
―人の運命なんてどこで変わるかわからない。―
「ご苦労だった、大尉。さがっていい。」
軽く敬礼するとササクラは一人、部屋を出ていった。
ドアの隙間から見ると部屋の前にはやはり兵士が二人立っていた。
ササクラに連れられ基地司令官室に来るとき何故か兵士が立っていたのだ。おかしい。やけに厳重だ。
「少将、彼がそうなのかね?」
どこか疲れた、しかしなにか力強さを感じさせる声
「はっ!彼がそうです。」
「私はシュトレイ中将。手短に話そう、君はアザーズに感染した。」
意味がわからない。
「感染って?」
「君は、アザーズに刺されただろう?そしてまだ生きている。」
「はい、確かに。」
「アザーズの攻撃を受けた場合、そのウィルスによって細胞の劣化が進み、著しい老化現象がみられる。」
「自分はあと、どれくらいもつのでしょうか。」
率直な疑問。
「まあ、そう先を急ぐな。」
「しかし…。」
俺の生きる、死ぬがかかっているんだ。
「それは普通の人間の場合だ。まだ正確なメカニズムはわかっていないがまれにアザーズのウィルスに耐性を持っている人間がいる。君もそうだ。」
「では、自分は助かるのですか。」
「まあそうだが。…この話しには続きがある。」
「なんです?」
「ネオヒューマンを知っているかね?」
「はい。彼らは最強最高の兵士です。」
「そうだ。そしてここから先は軍の機密に関わる。彼らはアザーズのウィルスに耐えた者達だ。君には耐性があると言ったな。」
「はい。」
「だがいくら耐性があるといってもウィルスの影響を受けないわけではない。」
「どういう事です?」
「細胞の劣化を止めることは出来ても細胞の変化を止めることは出来ないということだ。」
「どうなるんですか?」
「人間でなくなる。そして変化に耐えられなくなった時、君は死ぬ。」
力が抜ける。死ぬ?俺が?しかも人間じゃなくなるって?
「ショックだろう。しかし、悪い事ばかりではない。アザーズのウィルスによる細胞の変化は死へのカウントダウンと共に人間に特殊な力を与えてくれる。」
特殊な力?へぇそりゃすごい。
口から火でも吹くのか?なんでもいい、悪い夢なら覚めてくれ。
そうだきっとこれは夢だ、起きたら俺は医務室にいてなんだ夢か。
って苦笑するんだ。きっとそうだ。
「辞令、イコマ二等兵。第四基地への移動を命じる。以上。」
やっぱりこれは現実らしい。
受け止めるしかないようだ。
「詳しい事は向こうで伝える。心の準備が出来たらすぐに来たまえ。」
―この時、アザーズと戦い続けていつか戦死するはずだった俺の運命が変わった。
多分最終的には変わらない。
俺はきっとどっちでもアザーズに殺されるんだろう。
でも、もう仲間達とボーリングやビリヤードをしたり、ササクラと冗談をいいあったりすることは多分ない。
だから別れを告げずに行こう。
あとの事はきっとササクラがなんとかしてくれる。
だからすぐにこの基地を出よう。すぐに行こう第四基地へ―
どうも、馬力です。なんとか三話目です。連載を始めたものの次のネタが浮かばず時間がかかってしまいました。主人公イコマアズマ(変な名前)はこれからいろんな人と出会い、どんどん成長します。(予定)作者の方も成長する予定です。これからもアザーズをどうかよろしくお願いします。でわでわ