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存在しない幸福
たとえば僕がここに存在しなかったとして
そしてみんなの心から消え去ったとして
それでも僕はここで生きている
赤く光る液体を体中にめぐらせながら
ここに生きている
別にみんなから忘れられたとしても
それはただの現象に過ぎない
心が張り裂けそうになるときに
零れ落ちるしずくが言葉になり
みんなの心に届いていただけ
張り裂けた心からは黒く変質した泥が流れ出すだけ
今はただ空を見上げて深く息を吸い込む
そのうち心の欠片が元通りになり
また張り裂けそうになっていく
零れ落ちる言葉はそれまでお預け
僕には存在しないことの幸せがあることを知っている
誰にも邪魔されない僕だけの世界




