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人は人を殺す
僕は人を殺したことがある
正確に言えば死んでいく彼女をただ見続けただけ
彼女は突然僕の前に落ちてきた
ビルの屋上から世界に別れを告げた彼女
頭の半分がコンクリートですりつぶされ
血も内臓も脳髄も薔薇の花びらのように飛び散る
手も足もまるでマリオネットの糸が切れたよう
服の裾はめくれ上がりあらわな姿になっていた
それでも彼女は息をしていた
僕を見つめる彼女の目にはひとすじの涙が流れた
僕は座り込んで彼女に言った
「死に逝く君はなぜ生を望む」
彼女の目から灰色の魂が抜けていく
天にも昇らず
地にも帰らず
そこにはただ、死体が転がり
僕は人殺しになった




