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その痛みを強さに変えて  作者: 志未透


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3/4

3.その痛み、二倍にして返す

静寂。  


広場にいた全員が、ボクの手元と、吹き飛んだ男を交互に見ていた。


「な、なんだ……今の力は……」


リーダー格の男が、引きつった声を出す。  ボク自身も、自分の右手に宿る熱量に戸惑っていた。


(これは……あの時に殴られた「痛み」か?)


頭の中に、創造主の声が反芻はんすうする。 『その痛みを、強さに変えなさい』


直感的に理解した。  

ボクに授けられた特性ユニークポイント。  

それは、受けた攻撃を二倍の威力にして放つ力だ。


さっきのパンチは、ボクが意識を失う前にアイツからもらった殴打を、そのまま二倍にして放ったもの。

ボクの筋力が上がったわけじゃない。  

ただ、受けた「痛み」が力としてボクの中にストックされているんだ。


「……ふん、マグレが! 全員でかかれ! そのガキをなぶり殺せ!」


リーダーの怒号で、残りの男たちが一斉に抜剣した。  

鋭い剣先がボクに向けられる。


怖い。  

足が震える。    

でも、ボクが退けば、あの女の子がまた道具として使われてしまう。  

それだけは、嫌だ。


「死ねッ! ――『ガスト・スラッシュ』!」


一人の男が、剣を振り下ろした。

刀身に薄っぺらな風の渦が纏わりつき、剣筋を鋭く加速させる。


「あ……っ、が……!」


風を纏った刃が、ボクの肩を深く切り裂いた。  

身体を強化する特性じゃないボクにとって、ただの切り傷だって致命傷になりかねない。

あまりの激痛に、視界がぐらりと揺れる。  

だけど、それと同時に「視えた」。


ボクの中に、今受けた衝撃と風の感覚が、エネルギーとして蓄積される。

――特性を一時ストック。  ――『ガスト・ラッシュ×2』:使用可能。


ボクは足元に落ちていた、折れた農具の木製の柄をひっ掴んだ。  

特性のルールが、本能でわかる。

受けた特性を返すには、その「媒介」となるものが必要だ。


「ボクに……触るなっ!」


叫びながら、折れた木の棒を男の首筋目掛けて振り抜く。


ドォォォォンッ!!


ただの木の棒に、男が纏わせていたものとは比較にならないほどの暴風が吹き荒れる。  


二倍の密度、二倍の質量。    


木の棒が空気を引き裂き、巨大な風の塊を伴った打撃が、男を文字通り「吹き飛ばした」。


「なっ……バカな! 俺の特性より……っ!?」


吹き飛んだ男が地面を転がり、動かなくなる。  

残りの連中が、恐怖に顔を歪めて後退りした。


「化け物……化け物だ!」 「ひ、ひいぃっ!」


仲間の特性を、よりによって「木の棒」で倍返しにされたのがよほど怖かったのか。  

連中は馬車を置き去りにして、一目散に村から逃げ出していった。


「……はぁ、はぁ、はぁ……」


ボクの手から、ボロボロになった木の棒がこぼれ落ちる。  

全身から力が抜け、その場に膝をついた。


肩の傷から血が溢れる。  

熱い。

痛い。  

アドレナリンが切れて、急に意識が遠のきそうになる。


「……あ、あの」


震える声に、顔を上げる。  

そこには、呆然とこちらを見つめていたあの女の子がいた。


彼女は、ボクに駆け寄り、血まみれのボクの体を優しく支えた。


「……どうして。どうして、私なんかのために」


「……どうしてって……君が、泣いてたから……」


ボクが途切れ途切れに答えると、彼女は一瞬、目を見開いた。  

それから、消え入りそうな声でボクに尋ねる。


「……お名前、なんていうの?」


「……ボクは、リョウト……」


「リョウト……さん」


彼女がボクの名前を、慈しむように呟いた。  


そして、彼女の両手から温かな光が溢れ出す。


――特性:『ヒールマジェスティ』。


彼女の力が、ボクの酷い傷を、ゆっくりと癒していった。

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