表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その痛みを強さに変えて  作者: 志未透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

1.聖女との出会い

初投稿作品です。

温かい目で見てもらえればと思います。

指摘などありましたら遠慮なくお知らせください。

途中修正等あると思いますがよろしくお願いします。

空を見上げると、そこにはいつもと変わらない「青」が広がっていた。


ボクたちが住むこの大陸、エリアルシャスタ。

空に浮いていると言われるこの大陸で、ボクは土にまみれて生きていた。


「リョウト! 手が止まってるぞ! さっさと運んじまいな!」

「あ、ごめん、叔父さん! すぐやるよ!」


ボク、リョウトは慌ててジャガイモの詰まったカゴを担ぎ直した。 十五歳。 村の同年代はみんな、自分の「特性」がいつ目覚めるのかを夢見ている。


神様から授けられる、唯一無二の力。

それさえあれば、こんな田舎を出て、行方不明の両親を捜す旅にだって出られるのに。


でも、ボクにはまだ、何もない。

ただ力が強いわけでも、足が速いわけでもない、平凡な少年のままだ。


そんな平和で退屈な村の空気が、その日の午後に一変した。


カチャリ、カチャリと不気味な鎧の音が響く。  

村の入り口に現れたのは、豪華な馬車と、それを守る柄の悪い男たちだった。


「おい、村長を出せ。聖女様のお出ましだ」


リーダー格の男が、唾を吐き捨てながら言った。

村の広場に、青ざめた顔の村長が連れてこられる。

村長はひどい病を患っていて、もう一人では歩くこともままならない状態だ。


「……お、おお。これが噂に聞く……」


馬車の扉が開いた。

中から出てきたのは、ボクと同じくらいの年齢の女の子だった。


透き通るような白い肌。

だけど、その瞳はどこか遠くを見ていて、深い悲しみを湛えている。


「カイナ、やりな」  

男の冷酷な声に、彼女――カイナは小さく頷いた。


彼女が村長の胸にそっと手を触れる。

その瞬間、柔らかな光が溢れ出した。


「……え?」

「う、動く……。体が軽いぞ!」


さっきまで死にかけていた村長が、奇跡のように立ち上がった。

これが特性。『ヒールマジェスティ』。 死以外は何でも治すという、神の力。


村人たちが歓喜に沸いた。  

ボクも、胸が熱くなるのを感じた。

なんて、素晴らしい力なんだろう、と。


けれど。


「さて。治療代を払ってもらおうか」  

男がニヤリと下卑た笑みを浮かべた。


「は、はい。こちらに用意した金貨を……」

「足りねぇな。……村の全財産、今年の収穫物も全部だ。それと、そこの若いやつらも数人、奴隷として出してもらおうか」


広場が、凍りついた。 そんなの、この村で死ねと言っているようなものだ。


「そんな……! それでは、冬を越せません……!」

「知るかよ。聖女の力はタダじゃねぇんだ。嫌なら、治ったばかりの村長には死んでもらうしかねぇな」


男が剣の柄に手をかけた。

大人たちが、恐怖に震えて俯く。

正義なんて、この圧倒的な力の前には無力だ。


ボクも、足が震えていた。

怖い・・・。

逆らったら殺される。


でも、ボクの視界に、カイナの顔が映った。


彼女は、自分の意思とは関係なく、道具のように扱われている。  

その顔が、あまりに寂しそうで。

震える拳を、ボクは強く握りしめた。


「……待てよ」


気づけば、ボクは一歩前に踏み出していた。


「ああ? なんだ、ガキ」

「……そんなの、おかしい。彼女の力は、人を助けるためのものだろ! あんたたちが私腹を肥やすための道具じゃない!」


叫んでいた。

叔父さんが顔を真っ青にしてボクを止めようとする。  

だけど、止まれなかった。


「ハッ! 正義感か? 反吐が出るぜ」  

男がゆっくりと歩み寄ってくる。  

威圧感だけで押し潰されそうだ。


「ボクは……納得しない。彼女を、自由にしてあげてよ!」


その時。

俯いていたカイナが、弾かれたように顔を上げた。


驚いたような、見たこともないものを見るような目で、ボクを見つめている。

ボクと、カイナの視線が重なった。


「君……わたしのために……?」  

消え入りそうな声で、彼女がつぶやく。


「うるせぇ! 死ねよ、クソガキ!」


男の拳が、ボクの顔面に迫る。

ボクには何の力もない。  

避けられない。


ボクの意識は、そこで一度、真っ白な光の中に消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ