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うつし世の鬼  作者: タケハタユウ
一章 蠢動する闇、日常の終わり
9/15

8話 局潜入

本作は、過去に同人誌として発表した作品を、Web向けに一部改稿のうえ再掲載したものです。


※本作は現代日本を舞台にしたローファンタジー/異能バトル作品です。

※章ごとに話数を分けて投稿しています。

 海堂に導かれるまま、寺の最寄り駅から地下鉄に乗りこむ。

 行き先は管理局だと気付いたが、海堂は霞が関の駅よりも手前で降りた。ここから徒歩で向かうのかと思いきや、彼はなにかを探して左右を見わたす。

「局に行くんじゃないの?」

「もちろんです。ただ休職中の蓮華さんを、堂々とお連れするのははばかれますので――」

 海堂の視線が一点に集中した。なんの(へん)(てつ)もない防火扉。そのそばの壁を、彼は掌で叩く。

「蓮華さん、この壁の先に、局への隠し通路があります。出入り口はふさがっていますが、貴女の力ならば、進入可能のはずです」

「まあ、それくらいは簡単だけど。妙に自信たっぷりね。本当に、ここに道が?」

 ここに隠し通路の存在は、蓮華も聞いたことがなかった。もし知られた通路なら、他の局員も利用しているだろう。

「戦中に、うちの一族が掘らせた秘密の通路です。結局使われないまま終わりましたが、通路じたいは生きています。風の通る音が聞こえますから」

「ふうん、ならちゃんとつながってるってことね」

 海堂家は、かつて陰陽師の一族として(あん)(やく)していたらしい。

 自然の力を操る彼らは、天災が起きるたびに被災地の(ちん)()に駆りだされた。そのため、彼らがこの災害を引き起こしたのだとまことしやかに(うわさ)された。

 陰陽師という役職が廃止されたのちも、国の中枢に留めおかれた一族であったが、現在、直系にあたる彼以外に、海堂を名乗る人間はいない。

 彼は呪符を取りだし、足下に張りつけた。呪符はすぐさまコンクリートの中に吸いこまれていき、二人の立つ場所は白い光で覆われた。

 駅を行きかう人々は、不思議と光を避けて歩いていく。

「人払いの術は掛けました。私には空間をつなげられませんから、頼みます」

「了解」

 蓮華は一息吸い、左手を壁にかざした。コンクリートに、まるで水のような波紋が浮き立った。

 波紋の先は、真っ暗だ。蓮華は左手をそのまま、やわらかくなった壁を突き抜けた。

 指の先に、風を感じる。海堂の言うとおり、ここにはなんらかの空間がある。

「あたりね、行きましょう」

「はい。道案内はお任せください」

 暗闇の中に、(りん)(こう)がぽっと浮かんだ。二人の足下を照らすほどのものだったが、歩くには問題ない明るさだ。通路にはつるはしの跡が生々しく残っている。ここまで掘るのに、どれだけの労力がかかったのだろう。

 迷うことなく、海堂は先を進んでいく。彼の家には、通路の地図が残されているのかもしれない。

「この道、どこにつながるの?」

「局の地下三階です。もちろん壁で閉ざされていますから、あちらからは気付かれません」

 海堂が向かっているのは、どうやら地下にある部署、技術部のようだ。

 対異総合管理局には、退魔部の他に管理部、技術部などが存在する。

 異動や他部との連携は少ない。管理部から魔の出現報告を受け、退魔部が動く。その程度が関の山だ。

 技術部は主に魔の弱点の研究、武器や魔の早期発見システムの開発を行っている。

 話には聞いていたが、ここに来るのは蓮華ははじめてだった。

 技術部は主に魔の弱点の研究、武器や魔の早期発見システムの開発を行っている。

 話には聞いていたが、ここに来るのは蓮華ははじめてだった。

「よし、ここです。中に入りますよ」

 先ほどと同様、蓮華が通路と局をつなげた。侵入を知らせるアラームは鳴っていない。大丈夫そうだ。

 ところが、海堂は技術部には見向きもせず、どんどん奥へ進んでいく。心なしか廊下の灯りは暗くなり――一部は切れかかっている――、人の気配も感じられない。

 ようやく海堂が立ち止まった先に、鉄の扉があった。ドアノブには立入禁止の札がかけられていたが、彼は構わずノックし、扉を開けた。

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