2話 正義はどちらか
本作は、過去に同人誌として発表した作品を、Web向けに一部改稿のうえ再掲載したものです。
※本作は現代日本を舞台にしたローファンタジー/異能バトル作品です。
※章ごとに話数を分けて投稿しています。
近藤大輝は退魔一課の部屋に踵を返した。一刻でも早く、戸川管理官に会う必要があった。
「戸川管理官、お話が!」
戸川は事件が発生してからというもの、管理官室ではなく、この一室に控えている。現場から寄せられる情報を素早く得るためか、叩きあげの彼の信条なのかは分からない。だが他の上司の目を気にする必要がないので、近藤にとっては話を切りだしやすかった。
「息が荒いぞ、近藤。楠木の処分に関してだろう」
「はい。黒鬼が蓮峰を傷付けたのは確かです。けど楠木は、あいつの姿を見てひどく取り乱していた。自分を強く責めて、処分も仕方ないと考えている。この件は、楠木本人が起こしたものではありません。そんな人間を、本当に殺していいんですか!?」
拘束し、留置所に引きわたすまで、彼は刀と共にいた。彼女ははじめは暴れたものの、その後はただただ蓮華の名をつぶやく機械と化した。そして今は、死刑囚のように自分の死を待っている。
彼女の哀しい笑顔は、拭っても消えそうにない。近藤は昔から、ああいった笑顔を見るのが堪えられず、放っておけない性格だった。蓮華が命を張って助けようとしたことを、無駄にはできない。
「これは、彼女が黒鬼を制御できないからこそ起きた事態だ。彼女がなんらかの処分を受けるのは致し方ない。先ほど緊急会議があった。課長の判断で、三日後に楠木は処分される」
「なっ、いくらなんでも早すぎます!!」
刀への事情聴取は行われているが、一方的なものだ。課長がその結果をもとに判断を下したのは間違いない。彼ははじめから、刀を消すつもりでいる。
「だが、白沢管理官は出張のために会議に参加していなかった。それに、楠木の処分の判断は蓮峰が決める。意識不明とはいえ、彼女の判断を待たずに刑を執行すれば、我々の責任だ。もう少し考えるべきではと、なんとかもう一度、会議に諮る方向には持っていった」
黒鬼に関して、上層部は及び腰の人間が多い。また白沢と新田で争ったいきさつもあり、白沢影響下の管理官たちが、戸川の意見に便乗した。
誰もが楠木刀という、一個人を無視している。だが戸川の説得がなければ、彼女は今すぐにでも殺されていた。上層部の優柔不断さが、今は救いだった。
「……では、それまでは楠木は無事、なんですね」
「三日後の会議次第にはなるが、そういうことだ。その前に、蓮峰が目を覚ましてくれるといいのだが」
「ですね。海堂が頑張ってくれてます。きっとあいつは、助かりますよ」
そうあってほしい、と心の中で祈る。
でなければ、刀の哀しい笑顔が、近藤を押しつぶしてしまいそうだった。
明日は3話分あります。10時、19時半、21時半の予定です。引き続きよろしくお願いいたします。




