11話 消えるぬくもり
これで七章は終わりです。続きをお楽しみに。
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刀は檻の中で、自分と蓮華が戦う様を眺めることしかできなかった。怪我を負いながら立ち向かう蓮華の姿に、彼女の勝利を祈った。
だが、決着は見届けられなかった。激しい稲光に打たれ、意識を失ったからだ。
「ん……」
気が付けば、あのマンションの近くにいるようだった。
(もしかして、あれも夢だったのかな……?)
長い夢を見ていたせいか、少しぼんやりしている。頭を二、三度振って、ようやく意識が目を覚ます。
「もう、起きたの……? タフね」
耳元に、聞き慣れた声。刀はその声の主に、抱きとめられていた。
「っ、蓮華! あの、あたし、もしかして」
「大丈夫……あいつなら、約束どおり、追いはらったわ」
「!」
腕の中に収まったまま、あたりを見わたす。
アスファルトはひび割れ、砕けて地面が見えていた。自分たちが膝をついている場所も、クレーターに似た大穴が開いている。
「痛むところ、ない?」
「う、うん。大丈夫……」
「……そう、よかっ、た」
「蓮華!?」
ずるりと蓮華から力が抜け、今度は刀が支える形になった。
「どうしたの蓮華!! しっかり――!!」
ぬるりと温かいものに手がふれる。
蓮華の背中には、禍々しく光る刃の切っ先がのぞいている。
刀たちの足下には、すでに血だまりも広がっていた。
「あ……あぁ」
腹部から背中を貫いた一振の太刀に、目がとまる。
その黒い刀身に見覚えがあった。
夥しく流れる血の匂いを、どこかで嗅いだ。
暗闇の中、この太刀を握り、人の死ぬ様を、あふれる血を眺めていた。
斬り殺したのは、他でもない自分。
理由は覚えていない。それでも。
「あ、あああああ……!!!」
あの時と同じ、自分は今、蓮華を傷付けた。
「やだ……やだよ、蓮華。死んじゃいや!! 目をあけてよ!!!」
肩を揺さぶっても、応えは返ってこない。血の気を失い、彼女の肌はいっそう白く映る。
「れんか!! おねがい……目をさまして!!」
何台もの車が止まる音と、複数の人間の足音が聞こえた。蓮華の名前を呼ぶ男性の声も。
「れんかっ、れんか……!!」
「馬鹿、怪我人を揺らすな!!」
なおも肩を揺さぶる刀を、誰かが羽交い締めにした。
「やだっ、はなして!!」
男の腕を解こうにも、関節をうまくおさえられてしまった。足で抵抗を試みても結果は変わらない。
「蓮華さん!! 私です、海堂です! 聞こえますか!?」
白衣を着た男性が蓮華のそばに座り、怪我の状態を見て顔をしかめる。
「海堂、蓮峰は」
「……全力を尽くします」
「分かった。俺はこいつを連れていく、戸川管理官からの命令だからな」
「はい、お願いします」
羽交い締めにされたまま、刀は車へと引っ張られた。
「やだっ、まって!! れんかっ、れんかがっ!! あたしのせいでっ!!」
「大丈夫だ、蓮峰なら海堂が助けてくれる!! だから、落ち着け!」
男が刀と乗車したのを確認し、車のドアが閉まる。
「ほんとはつけたくはないが、ガマンしてくれな」
手錠がかけられ、呪符がその上から貼られる。訓練所にいたころと同じもの。当然の処置だ。人を殺そうとしたのだから。
救急車へ乗せられる蓮華を、ドアにかじりついて目で追いかける。
「れんか……っ」
サイレンを先頭に、彼らの車は動きだした。




