7話 急転直下
本作は、過去に同人誌として発表した作品を、Web向けに一部改稿のうえ再掲載したものです。
※本作は現代日本を舞台にしたローファンタジー/異能バトル作品です。
※章ごとに話数を分けて投稿しています。
◇
脈絡もなく現れた海堂に、誰もがあ然として見る。蓮華がつなげた場所は、海堂も見知った退魔一課の部屋だった。
棒立ちの同僚たちの中、すぐに動いた人物が二人。
「おいおい、海堂。急に出てきたから驚いたぞ。お前そんな術も使えたのか」
「いや、蓮峰の空間転移だろう。どうした、豊。彼女は一緒ではないのか」
同僚の近藤大輝と、管理官の戸川が出迎えた。今一番、海堂が助けを求む二人だ。
「戸川管理官、近藤さん! よかった、いらっしゃったんですね!! お願いです、今すぐ撤禍隊を動かしていただけませんか!?」
撤禍隊は退魔部の中でも精鋭ぞろいの特殊部隊であり、隊長は主任格の人間が担う。現隊長を務めているのが、近藤だった。
「すぐにって言ってもなあ、課長の命令なしじゃ動かせないぞ」
「分かっています、しかし火急を要する件なんです!!」
「豊、落ち着くんだ。――出たのだな、奴が」
戸川は二人のあいだに入り、周りには聞こえないようそっと訊ねた。無言でうなずく海堂に、近藤もことの重大さに気付いた。
「よし、私から課長に報告する。近藤、急ぎ撤禍隊をまとめて海堂に続け。黒鬼の血を引く人員は連れていくなよ」
「了解しました。行くぞ、海堂!」
「は、はい!」
近藤はすぐさま部屋を出ていく。海堂も続こうとして、戸川に振り返った。
「ありがとうございます、管理官」
「礼はいい。早く行け」
軽く頭を下げ、海堂は部屋を出ていった。
残されたのは戸川と、固唾を飲んで事態を見守っている局員たち。
課長に報告する前に、彼らに釘を刺しておかなければならない。戸川の判断は速かった。
「これより緘口令を敷く。同僚はもちろん、他部署にも漏らすな。場合によっては事態収拾に動いてもらう。皆、いいな」
全員が緊張した面持ちで戸川に応える。誰もが、今なにが起きようとしているのかを察していた。
近藤の命令の下、撤禍隊の隊員たちが武装し、集結する。数は三十人。黒鬼相手の人数としては、やや心もとないが、やむを得ない処置だ。
撤禍隊は強大な魔はもちろん、鬼の血に耐えられず、暴走した人間とも戦う。卓越した戦闘能力が求められるため、黒鬼の血を引く隊員は多い。
しかしその黒鬼が相手となると、彼らが親の命令一つで敵にまわる可能性がある。それは鉄鬼の主であり、この隊をまとめる近藤も承知していた。
「海堂、奴の様子はどんな感じだった?」
籠手を着けながら、かたわらの海堂に訊ねる。黒鬼のことは近藤の中にいる鉄鬼が詳しいが、知識よりも現在の状況を知りたかった。
「すぐに離脱したのでなんとも言えませんが、黒い太刀を持っていました。楠木さんの怪我の影響は軽微と思われます」
「黒い太刀……玄雪か。やる気満々だな。準備ができた者から乗車、俺のあとに続け!! 海堂、道案内頼む」
「分かりました――っ、待ってください近藤さん!」
車が発進する寸前、駐車場の空間が歪み、中から男子学生が吐きだされた。金色の長い髪の彼に、海堂は見覚えがあった。蓮華の師の息子、アンディだ。
「アンディくん! どうしたんですかこんなところに!?」
慌てて駆け寄る海堂に、少年は声を震わせた。
「ど、ドクター。カタナが、ヘンなんだ。レンカは俺をかばって、逃げろって――。お願いだ、早く、二人を」
「もちろんです。貴方はここで待っていてください。必ず助けますから。近藤さん!」
「おう! 出動するぞ!!」
隊員にアンディをまかせ、二人は死闘の続く戦場へ向かった。
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