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うつし世の鬼  作者: タケハタユウ
七章 黒鬼、覚醒
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7話 急転直下

本作は、過去に同人誌として発表した作品を、Web向けに一部改稿のうえ再掲載したものです。


※本作は現代日本を舞台にしたローファンタジー/異能バトル作品です。

※章ごとに話数を分けて投稿しています。



 脈絡もなく現れた海堂に、誰もがあ(ぜん)として見る。蓮華がつなげた場所は、海堂も見知った退魔一課の部屋だった。

 棒立ちの同僚たちの中、すぐに動いた人物が二人。

「おいおい、海堂。急に出てきたから驚いたぞ。お前そんな術も使えたのか」

「いや、蓮峰の空間転移だろう。どうした、豊。彼女は一緒ではないのか」

 同僚の近藤大輝と、管理官の戸川が出迎えた。今一番、海堂が助けを求む二人だ。

「戸川管理官、近藤さん! よかった、いらっしゃったんですね!! お願いです、今すぐ(てつ)()(たい)を動かしていただけませんか!?」

 撤禍隊は退魔部の中でも(せい)(えい)ぞろいの特殊部隊であり、隊長は主任格の人間が(にな)う。現隊長を務めているのが、近藤だった。

「すぐにって言ってもなあ、課長の命令なしじゃ動かせないぞ」

「分かっています、しかし火急を要する件なんです!!」

「豊、落ち着くんだ。――出たのだな、奴が」

 戸川は二人のあいだに入り、周りには聞こえないようそっと(たず)ねた。無言でうなずく海堂に、近藤もことの重大さに気付いた。

「よし、私から課長に報告する。近藤、急ぎ撤禍隊をまとめて海堂に続け。黒鬼の血を引く人員は連れていくなよ」

「了解しました。行くぞ、海堂!」

「は、はい!」

 近藤はすぐさま部屋を出ていく。海堂も続こうとして、戸川に振り返った。

「ありがとうございます、管理官」

「礼はいい。早く行け」

 軽く頭を下げ、海堂は部屋を出ていった。

 残されたのは戸川と、(かた)()を飲んで事態を見守っている局員たち。

 課長に報告する前に、彼らに釘を刺しておかなければならない。戸川の判断は速かった。

「これより(かん)(こう)(れい)を敷く。同僚はもちろん、他部署にも漏らすな。場合によっては事態収拾に動いてもらう。皆、いいな」

 全員が緊張した面持ちで戸川に応える。誰もが、今なにが起きようとしているのかを察していた。


 近藤の命令の下、撤禍隊の隊員たちが武装し、集結する。数は三十人。黒鬼相手の人数としては、やや心もとないが、やむを得ない処置だ。

 撤禍隊は強大な魔はもちろん、鬼の血に耐えられず、暴走した人間とも戦う。(たく)(えつ)した戦闘能力が求められるため、黒鬼の血を引く隊員は多い。

 しかしその黒鬼が相手となると、彼らが親の命令一つで敵にまわる可能性がある。それは鉄鬼の主であり、この隊をまとめる近藤も承知していた。

「海堂、奴の様子はどんな感じだった?」

 籠手を着けながら、かたわらの海堂に訊ねる。黒鬼のことは近藤の中にいる鉄鬼が詳しいが、知識よりも現在の状況を知りたかった。

「すぐに離脱したのでなんとも言えませんが、黒い太刀を持っていました。楠木さんの怪我の影響は軽微と思われます」

「黒い太刀……(げん)(せつ)か。やる気満々だな。準備ができた者から乗車、俺のあとに続け!! 海堂、道案内頼む」

「分かりました――っ、待ってください近藤さん!」

 車が発進する寸前、駐車場の空間が(ゆが)み、中から男子学生が吐きだされた。金色の長い髪の彼に、海堂は見覚えがあった。蓮華の師の息子、アンディだ。

「アンディくん! どうしたんですかこんなところに!?」

 慌てて駆け寄る海堂に、少年は声を震わせた。

「ど、ドクター。カタナが、ヘンなんだ。レンカは俺をかばって、逃げろって――。お願いだ、早く、二人を」

「もちろんです。貴方はここで待っていてください。必ず助けますから。近藤さん!」

「おう! 出動するぞ!!」

 隊員にアンディをまかせ、二人は死闘の続く戦場へ向かった。



今日の更新は19時半、21時半です。引き続きよろしくお願いいたします

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