表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うつし世の鬼  作者: タケハタユウ
三章 異邦に放りこまれたもの
15/15

1話 一寸先は、異邦

本作は、過去に同人誌として発表した作品を、Web向けに一部改稿のうえ再掲載したものです。


※本作は現代日本を舞台にしたローファンタジー/異能バトル作品です。

※章ごとに話数を分けて投稿しています。

「まずは、簡単に説明からね」

 管理官たちの部屋から退出し、即座に蓮華はこっちだと指差す。

 白沢という管理官は知的で冷静沈着な印象を受けたが、蓮華には気高さや、自信に満ちた雰囲気を思わせる。

 二人とも切れ者なのだろう。彼女らと同じ部屋に閉じこめられれば、十分も耐えられないかもしれない。よっぽど強いポテンシャルを持たぬかぎり、優秀な人材にはさまれた人間は、プレッシャーでつぶれてしまう。

「ここが退魔部退魔第一課。今は……ほとんど出払っているわね。基本外まわりだから」

 退魔一課の部屋はすりガラスで区切られており、廊下からでもうっすら中の様子が見えた。

 中に入れば、デスクと椅子が整然と並べられている。

 人の姿は数えるほど。だがそれぞれの席に誰かがいることは、机の上の私物でうかがい知れた。

「けっこう大所帯なんですね――っ!」

 刀は部屋をのぞいたとたん、一人の局員と目があった。

 彼は緊張した面持ちだった。訓練所でも何度となく見た、自分を恐れる目だ。

 コッキノアルジ、とつぶやく声が耳に届く。

「噂が広まるのは早いわね。楠木さん、次に行くわよ」

「あっ、えっ?」

 蓮華が説明をはじめて、まだ数分しか経っていない。自分が所属する部署の説明にしては、あまりに簡単すぎではないだろうか。

「ここだと周りが落ち着かないから、場所を変えるだけ。もともと部屋の場所以外は、おいおい教えるつもりだったし」

「は、はあ……分かりました」

 刀はすなおにしたがった。彼女の(げん)はもっともだろう。

 このままここに居続ければ、他の局員たちの(どう)(よう)をまねく。針の(むしろ)と化すのは目に見えていた。

 奇異の目で見られること数度、その視線からはなれられたのは、大通りに出たあたりだった。

 多くの店が入った商業ビルが立ち並び、平日にも関わらず、買い物客で賑わっている。

 これなら人の中にまぎれ、局員の目も気にならない。通行人にとっても刀はただの他人だ。ほっと胸をなで下ろす。

 蓮華もこのあたりで話をしよう、と近くの喫茶店を指差した。

 手頃な値段のコーヒーを提供しているらしく、店内はすでに客でごった返している。

「好きなの選んで、(おご)るわ」

「えっ、いえっ、なんか悪いです! と、というか。ほら、ここのシステム、なんかよく分かんないですし、ね?」

 ただレジで注文すればいいだけなのだろうが、その客の声は、呪文かなにかにしか聞こえない。客からの複雑怪奇な呪文を復唱し、注文どおりに作っている店員の手さばきも、魔法のようだ。

「なら適当に頼むわ」

「あっ、はい……」

 刀の焦りをよそに、蓮華は他の客と同様、レジに向かう。ただ先の彼らと違い、呪文は短めだった。

「カプチーノのトール、二つ」



明日はいつも通り、平日の更新時間21時半に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ