少し真面目な話
すっかり放課後の部活動が日課になっている。
……が、今日は少し違った。
部室の前に日向先輩が立っている。
私と目が合うと、口元でシーっと人差し指を立てる。
部室からは、なにを話してるかはわからないが、佐倉先輩?と聞き覚えのない声がわずかに聞こえる。あまりいい話をしていないことはわかる。
日向先輩の手招きで部室から離れた。
「ひなと少し真面目な話しない?」
いつものおっとり、ぽわぽわした日向先輩の顔じゃなかった。
スクールバッグを日向先輩の教室に置かせてもらい、外に出た。
ちょうど、部室の真下に寂れたベンチがある。
ここ最近で一番冷えている気がする。
アウターのジッパーを首もとまで上げる。
なんとなく本題に入りにくく、天気とかの話で話題を繋いだ。
沈黙の頻度が増えてきたとき、私は尋ねた。
「佐倉先輩は誰と話していたんですか?」
「んー……何人か心当たりはあるけど……聞いたことのない声だったかも……」
……まだ、入部して間もないが、佐倉先輩の言葉を辿れば、この、ぼやけた部活動の意義とか輪郭を見つけることができた。
「もしかして、なんでも部って、学校のセーフティネットとかですか?」
日向先輩は、一瞬、虚を突かれたような顔をした。
小さく息を吸い、なにかいいかけてやめてを繰り返す。
……長い沈黙をやっと破った。
「……それはちょっと言いすぎかな。もっと軽い感じの……」
日向先輩が続ける。
「学生同士でしか解決できないこともあるからね。
……大人が間に入ると面倒になることもあるし、」
それ以上はなにも言わずに、日向先輩は立ち上がった。
「寒いしそろそろ戻ろうか。話が終わってなかったら、今日は帰ろ。」
彼女の少し申し訳なさそうな顔が印象的だった。
ベンチは校舎の影に隠れていた。




