第三話:浮世絵とフリーダムと補修の筆
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■江戸へタイムスリップ
《時空号》が光の渦を抜け、着地したのは――
江戸の町、夕暮れ時。
瓦屋根が並び、行き交う人々の着物が風に揺れる。
でも、どこか空気がピリッと張りつめている。
ヒナギクはカゲマルのバイクから降りて、周囲を見渡す。
「うわ〜、みんな同じ格好してる……なんか、自由がないって感じ?」
カゲマルはスマホを腰にくくりつけ、静かに言う。
「ここは“秩序の町”。
自由は、絵の中にしか許されていない」
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■型破りな絵師、登場
そのとき、路地裏から派手な柄の着物を着た男が現れた。
髪は逆立ち、筆をくわえ、背中には巨大な絵巻。
名を――写楽・シャラク。
「おう、そこのポニーテール嬢ちゃん!
君の顔、いいねぇ! 描かせてくれよ!」
ヒナギクは目を丸くする。
「えっ!? あたし!? なんで!?」
「自由ってのは、型を破ることさ。君の顔、型破りで、Youは最高だよ!」とシャラク。
カゲマルはうなずいた。
「彼は、秩序の中で“自由”を描き続けた絵師。
補修のテーマにぴったりだな」
「ちょ、センセ〜!あたし型破りの顔とか言われてんですけどぉ〜、褒めてるのかな?」ヒナギクが不服そうだ。
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♫挿入歌:『筆の自由』
(シャラクとヒナギクが歌う、自由の意味を問うアップテンポソング)
♫ 筆は語る 声のかわりに
型を破って 色を放つ
誰かのルールじゃ 描けない
君だけの 線がある
秩序の町に 風を起こせ
自由は 絵の中に生きてる
君の顔も 君の声も
世界を変える 筆になる
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■ヒナギクの気づき
シャラクが描いたヒナギクの肖像画は、
ポニーテールが炎のように燃え、
スクーターが雲を突き抜ける龍になっていた。
ヒナギクは絵を見て、ぽつり。
「……あたし、こんなふうに見えるんだあ」
少し間を置いて、ヒナギクが言う。
「ねえ、他の絵も見せて。シャラクの“自由”って、もっと知りたい」
写楽はニヤリと笑って、絵巻を広げる。
そこには、怒り、哀しみ、狂気、笑い――役者たちの“顔”が並んでいた。
カゲマル(横から解説口調で)
「デビュー作は、いきなり28枚同時発表!版元・蔦屋重三郎のプロデュース。江戸の町がざわついたんだぜ。現代で言えば、無名の新人がいきなりアルバム出して、全曲MV付きで公開するようなインパクトだな。」
写楽は鼻で笑って言う。
「おうよ、しゃらくせーが……ツタジューのおかげだわ。あいつの目利きはモノホンだ。」
カゲマルは言う。
「自由とは、自分を知ること。
そして、選ぶことだ」
ヒナギクはうなずく。
「じゃあ……あたし、逃げるだけじゃなくて、選びたい。自分の“赤点”に、向き合ってみたい」
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■補修進行度、更新
スマホが震える。
画面に表示されたのは――
> 【補修進行度:80%】
> 【次の補修地:昭和の商店街】
> 【テーマ:記憶とつながり】
ヒナギクは目を丸くする。
「えっ、次は昭和!? レトロ!? 駄菓子屋!?」
カゲマルは笑う。
「そうだ。次は“つながり”を学ぶ。
歴史は、記憶の連鎖だ」
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★次回予告★
ナレーション(カゲマル風)
「次なる補修地は、昭和の商店街。
懐かしさの中に、忘れられた絆が眠っている。
ヒナギクが出会うのは――
記憶を守る駄菓子屋の婆ちゃんと、消えかけた約束。
“つながり”とは、何を残すことか?」
「『時空教師タイムライダー』
次回――『駄菓子と記憶と補修の約束』
赤点女学生、心の旅へ!」
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