第二話:信長とスマホと補修の陣
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■信長、踊る
尾張の町に、突如響くビート。
馬上の信長はイヤホンから流れる音楽に合わせて、両手を天にかざしながら踊っている。
「イェイ! ウー! カマーン! カモセーイ! フォーッ!」
馬もノリノリでステップを踏み、町人たちは目を丸くする。
ヒナギクはスクーターの陰から顔を出して、ぽつり。
「……信長って、こんな人だったの?」
カゲマルは腕を組みながら言う。
「“うつけ”とは、常識を破る者。
だが、破る者こそ、未来をつくる」
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■スマホ、渡る
踊り終えた信長が馬から降り、ふたりに近づく。
カゲマルは懐からスマホを取り出し、信長に差し出す。
「これは“未来の巻物”です。
あなたの選択を記録し、未来に伝える道具です」
信長はスマホを手に取り、指先で画面をなぞる。
「ほほう……この小さき板に、我が名が残るのか」
ヒナギクはそっと言う。
「選択って……怖いですよね。
あたし、いつも逃げてばっかで……」
信長は彼女を見て、静かに言った。
「逃げるも選択。
だが、逃げた先で何をするかが、物語を決める」
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♫挿入歌:『選択の陣』
(信長・ヒナギク・カゲマルの三人で歌う、選択の意味を問うバラード)
♫ 進むか 退くか
語るか 黙るか
選ぶことは 怖いけれど
選ばなければ 始まらない
逃げてもいい 迷ってもいい
その先に 物語がある
選択の陣を 越えてゆけ
君の声で 歴史を刻め
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■未来への問い
信長は空を見上げ、ぽつりとつぶやく。
「これからは……やっぱり教養じゃな。
知恵と知識が、戦よりも強き武器となる」
そして、ふと振り返り、カゲマルに問う。
「して、わしの未来は……輝かしいか?」
カゲマルは一礼し、にやりと笑う。
「はい、金ピカでございます。
まばゆきほどに」
信長は満足そうにうなずく。
「そうか……それはよきことよ」
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■本能寺の伏線
カゲマルは少し声を落として言う。
「今後もし……“本能寺”に行かれましたらば……
かくれんぼ、いたしませ」
信長は一瞬、眉をひそめるが、すぐに笑みを浮かべる。
「覚えておこう。
かくれんぼは、得意じゃ」
ヒナギクはそのやりとりを聞きながら、胸がざわつく。
「“本能寺”って……なんか、聞いたことあるような……」
カゲマルは静かに言う。
「歴史は、選択の積み重ねだ。
だが、選択の意味は、未来でしかわからん」
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■信長、去る
信長はスマホを懐にしまい、馬に乗り直す。
空を見上げ、ふたりに向かって叫ぶ。
「おぬしらの物語、我が名とともに残るがよい!」
ヒナギクは手を振りながら、ぽつり。
「なんか……この人、すごいな。
怖いくらい、自分を信じてる」
カゲマルはバイクにまたがりながら言う。
「それが“選ぶ者”の覚悟だ。
さあ、次の補修地へ向かうぞ」
ヒナギクはヘルメットを被り、バイクの後部座席に跨った。
《時空号》が再び光をまとい、空へと舞い上がる。
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★次回予告★
ナレーション(カゲマル風)
「次なる補修地は、江戸の町。
秩序に縛られた世界で、ヒナギクが出会うのは――
型破りな浮世絵師と、自由を描く筆。
“選択”とは、ルールを破ることか?
それとも、守ることか?」
「『時空教師タイムライダー』
次回――『浮世絵とフリーダムと補修の筆』
赤点女学生、次なる試練へ!」
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