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4話 天使・天使・人間 ー ドアホ・癒し・社会不適合者


「………ってなワケで、分かりましたー?異世界のこと。

もー2度は説明しませんからねー」

 

 天使の事前解説が終わり、俺は異世界についてなかなか詳しく知ることができた。

 

「意外と夢ないんだな…異世界って…」

 

 長々と異世界の情報を語っていたが

そのほとんどが注意事項で、

コレをやったら死ぬ、アレをやったら生きて帰れない、

と言ったことばかりを説明された。


「ふふんっ、分かってくれましたかー?異世界の怖さ。

ちなみにここまで親切に説明してあげる天使もなかなか

いないんですよー?

もっと感謝し、崇め奉ってくださいねー!」

 と天使が両腕を腰に当ててドヤ顔してくる。


 …マジかよ異世界、マジかよ天使、


 人格、いやこの場合は天使格か?

破綻しすぎだろ………


事前説明くらい丁寧にやってくれてもいいだろ…

やっぱ天使ってのはみんなこんな感じなのかな…


「ちょっとー?褒められ待ちなんですけどぉー。

まだっすかー?ねーねーねー」


目の前の天使がお褒めの言葉を強請ってくる。


「あ、ありがとうございます……………?」


「……少ーし語彙の上がり方が気になりましたが………

まぁいいでしょー、

んじゃま早速、右をご覧くださーい」


 え?右?

言われた通りに右を見てみる。


「………」


「うわぁッ!?」

「ピィッ!?」


 真隣にでっかい「物質」があった。

…って、人?


「あのー…」


 恐る恐る声をかけてみた。

よく見てみたら頭の上に輪っかが浮いているし、

羽も生えている。

 顔も整っているし、どうやら天使のようだ。

鼻は太眉の残念天使よりもシャープで鼻筋が整っている。

 目は大きく、これまた吸い込まれそうな漆黒だった。

ちなみにこっちは眉は細め。


 これだけならただのべっぴんさんだろう。

だが………体が異様に大きかった。

 別に太っているというわけではないだろう、

どうやらえげつないほどの重ね着をしているらしい。


 重ね着のしすぎで、一番外に来ているダウンジャケットらしきものが、イヤリングではない方の合体戦士が来ている、とある星の民族衣装のようになっている。

 面白い人だな…俺、ワクワクすっぞ!


 そんなことを考えていると、

今まで喋っていた方の天使がうぉっほんと咳払いをして、こちらの注目をひきつけた。


「えー、私から紹介しましょーう!

彼女は私の同僚で、君に異世界の言葉だとかを

習得させる天使でーっす!さぁ!自己紹介を!」

 

「…………」


 太眉天使が元気に自己紹介をするようにすすめるが、

重ね着の天使は口をもにょもにょして何も言わない…


「さて、自己紹介は済んだようですねー!

んじゃま、早速向こーにいってもらいましょー!」


「………えっ!?今自己紹介されたんですか!?」

 

「そだよー、もしかして聞いてませんしたー?」

こちらにジトっとした目を向けてくる。


 いや、聞いてなかったっつーか、聞こえなかったかな…


「まーいーでしょー、じゃあ早速……って

もう始めちゃってますねー、それじゃ終わったらこっち

来てくださいねー」


 えっ?もうされてるって?

なんとなく右側に視線を向けてみる。


 そこには頑張って手が俺の頭に届くように体を傾け、全体を青色に光らせてる重ね着天使さんがいた。


 っ!?


 俺は重ね着さんがビックリしないように、すんでのところで大声を出すのを我慢した。


 …なるほど、これが俺に異世界の言葉を

習得させてくれているのか………。


これ使って英会話勉強とかしたら、大学入試とかも

ラクラクなんだろなぁ…

 

 とか思っているうちに脳内インプット作業は終わったようで、重ね着さんは俺の頭上から手を離した。


「…………」


 あ、なんか耳を澄ませるとボソボソ聞こえる気がする


「あ、ありがとうございました、た、助かります」

 

 俺が感謝の意を示しお辞儀をすると、

重ね着さんがなんだか嬉しそうにちょっと口元を上げていた。

 

 かわいい…

その微笑、プライスレス…ッ!


「じゃーもう行きますよー、こっち来てくださいねーぇ」

太眉が手をチョイチョイとし、俺を呼ぶ。

 どうやら、この場所ともお別れのようだ。

 

 白い世界を真っ直ぐと歩いて行き、太眉の正面で

立ち止まる。


「じゃあ送りますよー、

言い残したことはありませんかー?」

と太眉がニコニコしながら聞いてきた。

 

 …なんか死ぬ前みたいで縁起悪いな……

いや、死んだあとだったわ………


 特に、これといって言いたいことはなかったので、

とりあえずお礼を言っておく。

 

「えー、なんかまぁ、色々とお世話になりました。

向こうでも頑張っていきたいと思います」


 言い終わり、俺が2度目のお辞儀をすると、

重ね着さんは身体をゆさゆさと揺すった。


 …たぶん手を振ろうとしているんだろう。

ホント可愛らしい方だな………


 太眉は「もういっすかねーぇ」とか言ってる。

重ね着さんを見習って欲しい。


 別れを再度実感し、なんだかしんみりとした気分になっていると…


「じゃあ転送しますからねー歯ぁくいしばってくださいよー」


 え?歯?


 なんだか聞き捨てならないことを言ったぞコイツっ!!

 

「でかめの衝撃が来ますから気をつけてくださーい」

太眉はそう言って指をパチンと…

ならせずにパスっと悲しい音がした。


 ちょっ まっ


 目の前が一瞬で掻き消え、一寸先を暗闇が支配した。


 それとともに、まるで何か大きな穴にでも落ちたかのような浮遊感と衝撃がくる。

 不思議なことに体は動かず、暗闇の中をぐるぐると回転することはない。

 しかし衝撃はモロに来る。

 例えるなら、ジェットコースターの降りたときに感じる

ふわっとした感覚。あれが永遠に続く感じだろうか。

 ただし安全バーはなく、風にぶつかるのは上半身だけでなく、全身くまなくだ。

 

 俺は半分意識を失いながら、初の時間軸世界旅行を体験した。



次回から異世界のお話です。


ちなみに重ね着さんは、実は聞こえずらい声で主人公の悪口を言っている……とかはありません。

ホントですよ?

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