短編 異世界転生して工場長として生きる人生
第九章:奇跡の技術革新
王都の武具展示会が迫るなか、俺たちの工場は焦燥感に包まれていた。
「クロノス工業の新製品情報が入りました!」
技術班のリーダーが息を切らしながら報告してくる。
「魔導機械による完全自動鍛造システムを完成させたそうです!」
「……ついにやりやがったか」
クロノス工業は、魔導機械を駆使して職人の手を完全に排除した自動生産を実現したらしい。それがどれほどの精度なのかはわからないが、量産速度では確実にこちらを上回る。
「工場長……どうしますか?」
「決まってる。俺たちは俺たちのやり方で勝つ!」
職人の技と最新技術を融合した、俺たちにしか作れない武器を仕上げるんだ――。
第十章:閃きの瞬間
展示会前日。俺は設計図とにらめっこしていた。
「何かが足りない……何かが……!」
クロノス工業との差を埋めるだけじゃダメだ。俺たちが勝つには、まったく新しい価値を生み出す必要がある。
「……っ!」
その時、俺の脳裏に電撃が走った。
「そうか……! 魔導と職人技の“融合”じゃない……“共鳴”だ!!」
すぐに職人たちを呼び集めた。
「みんな、俺の最後の賭けに付き合ってくれ!」
「当然だぜ、工場長!」
俺たちは夜通し作業を続けた。
第十一章:奇跡の武器、誕生
武具展示会当日。
王城の広場には、王国中の貴族や戦士たちが集まり、各工場の新作を見比べていた。クロノス工業は自動鍛造による**魔導剣**を発表。その圧倒的な量産力と均一な品質に、会場がどよめく。
そして俺たちの番が来た。
「工場長、準備はできています!」
「よし……いくぞ」
俺たちの新作は、魔導共鳴剣。
「この剣は、持ち主の魔力に応じて性能が変化する」
「なんだと!?」
通常の魔導剣は、あらかじめ決められた魔法を発動する仕組みだが、《エンシェント・ハーモニー》は持ち主の魔力量や属性に共鳴し、剣自体が進化する。
「試してみるか?」
俺は会場にいた騎士に剣を握らせた。すると――
ヴォンッ!!
剣が騎士の魔力を吸収し、刃に蒼い雷が奔る。
「な、なんだこれは!? 俺の雷属性に応じて変化しているのか!?」
「そういうことだ」
「す、すげえ! こんな武器、見たことがない!」
会場が一気に熱気に包まれた。クロノス工業の社長・ヴェルトも驚愕の表情を浮かべている。
「馬鹿な……そんな技術、聞いたことがない……!」
「これは、職人技と魔導技術が融合し、さらに共鳴し合うことで生まれた奇跡の武器だ」
俺たちの勝利は、決定的だった。
最終章:新時代の幕開け
王国は、俺たちの《エンシェント・ハーモニー》を正式採用。クロノス工業は敗北を認め、ヴェルトは静かに俺に言った。
「……完敗だ。しかし、これは終わりではない。また新たな技術で、お前に挑む」
「望むところだ」
こうして、俺たちの工場は世界最強のものづくり帝国への第一歩を踏み出したのだった。
(完)