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後ろ

作者: 雉白書屋

 これは私が夜、一人で帰り道を歩いていたときの話です。仕事が遅くなり、辺りは静まり返っていて、ほとんど人影もなく、嫌な気配が漂っていました。


「なんだか怖いなあ……」


 背筋に悪寒が走り、私は後ろを振り返り、そしてすぐにまた前を向き直しました。


「早く家に帰りたい……」


 恐怖で息が詰まりそうになり、肩に掛けた手さげバッグの持ち手を強く握りしめて、歩調を早めました。


「いる、後ろにいる……」


 怖くてもう後ろを振り返ることができませんでした。ひたすら前だけを見つめ、どうか誰かが向こうから歩いてきてくれますようにと心の中で必死に祈りながら歩き続けました。


「誰もいないなあ……」


 私は恐怖に耐えきれなくなり、鞄の中に手を入れてスマートフォンを取り出しました。でも……


「もう充電がないみたい……」


 体を押しつぶすような絶望感に襲われ、叫び出したい衝動に駆られました。でも、恐怖で声も出ず、ただ無我夢中で走り出していました。


「はあ、はあ、はあ……」


 荒い息が耳に響き、目に涙が滲んできました。


「振り切れない!」


 瞬間、頭の中に、自分が殺されるイメージが浮かび、子供のように泣き叫びながら走りました。

 もうお終い、そう思いました。でも、角を曲がったそのときです。前方から男性が歩いてくるのが見え、私は急いで駆け寄りました。男性は私の泣き顔に驚いたようで、ビクッと立ち止まりました。そして……


「残念……」


 そう言って、後ろから男が私と男性を追い越していきました。

 助かった……と、私はその背中を見送りながら、地面に座り込んで深く息をつきました。

 まともに口がきけるようになるまでには、しばらく時間がかかったのでした……。

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