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不良生徒

 その後先生と別れて、俺は校門まで歩いていた。


 先生は他にもいる成績不良者と話があると言って向かったので、心の中でその人が泣かされないよう祈っとこう。


 そうして門に続く学校の広い敷地を歩いていたら、知ってる顔がベンチに座っていた。


「よう。結構遅かったじゃねえか」


 その知っている顔は俺のことを待っていたらしい。


 こいつは友人のヘルフェン・アイヒホルン。


 茶色の髪をオールバックにしたカッコイイ顔している。制服の上からでも分かる筋肉質な身体をしていて、いかにも体育会系といった感じだが割と不良で、よくない連中とつるんでいるという噂もある。


 俺も最初は避けていたのだが、話してみれば意外といい奴というのが解り、俺の数少ない友人となった。


「なんだヘルフェン。もう帰ったのかと思った」


「いやなに、オレもシャロムの奴に目を付けられてな、少し説教を受けてたんだ。そんで『次はやっとカエデスだ』と呟いてたもんだからテメェを待ってたんだ」


「お前もシャロム先生に呼び出し食らったのか、お互いバカは辛いな」


 俺の言葉に対して、そうだなと言って笑うヘルフェン。


 ヘルフェンは学校にこそ来ているが、授業には参加せずにどこかでサボることが多い。テストの時は流石に出ているが、適当にやって腹痛を訴えトイレに行き、そのまま家に帰るというある意味猛者な男だ。


 その為成績はかなり悪いが、実はこいつかなりデキる方で、実技も筆記もその気になれば満点に近い点数を取ることが出来るが何故かしないのである。


 理由を聞いたら、くだらないから、らしい。意味不明。


「あれ、でもいつ終わった?帰りのホームルーム前からやってたのか?」


 先生が来た時は四十五分、ホームルームが終わる時間は半。俺との話は三十分くらいという事は、一人あたりそんなものだろう。他にもいるようだったから、俺は最初の方だったのか?


「あ?何言ってんだ?説教って言っても数分小言言われたぐらいだぞ。いくらあいつが色々話しに首突っ込むからって、そんなマジの生徒指導だったら担任も一緒だろ」


 ……おかしい、俺は担任の先生には何も言われてないし三十分ぐらい話してたのに他は数分?


「なあ、なんか学校生活がどうのって話した?」


「ンなもんやるわけねえだろ、入学当初じゃあるまいし」


 ……え、なんで?なんで俺だけ遅いの?俺そんなに問題児だった?それとも嫌がらせのつもりだったのかあの人?


「……おい、マジで気づいてねえのか、お前?」


 こっちが先生の謎の行動を考えていると、ヘルフェンはどこか呆れた様子を見せてきた。


「は?なんだよそれ」


「いいや、なんでもない。それより用件があるんだが聞いてくれるか」


 俺の疑問を受け流したと思えば、俺に用があると言い出した。流すなよとは思うが、ちょうどいい。


「待て、だったらこっちも用件がある」


「……なんだよ」


「金がない。貸してくれ」


 俺の言葉にヘルフェンは啞然としたが、しばらくして腹を抱えて笑い出した。


 金がないのがそんなに面白いのだろうか……?


「おい、なに笑ってんだ。こっちは真剣なんだよ」


「ハハハハハ……!いや~悪い悪い。まさかそっちがそれを言うとは思わなかった……ハハ、ハハハハハ!!」


 ホントに何が面白いのかツボに入ってやがる。


「いやぁ、ホントに悪いな急に笑い出して。それで金だっけ?」


 笑いすぎて出た涙を指で拭きながら、ヘルフェンは答えた。


「悪いが今は金貸せねえんだわ」


「何で。お前金持ってたじゃねえか」


 ヘルフェンの家は中々の金持ちらしく、毎月とんでもない額が小遣いとしてコイツに与えられている。


 前にコイツと一緒にやらかしてバカ高い芸術品?の弁償をすることになったのだが、何食わぬ顔で、ポンと俺の分も出したのを覚えている。


「それがよ、最近ちょっとハメ外し過ぎてこっちも金がねぇんだわ」


「えぇ……今までも外してたじゃないか。何で急に金がなくなるんだよ」


「女がらみでちょっと。まあ、ほとんどキャバクラとか行きまくったのが原因でな。親に黙って通ってたんだが、それがバレて結構シバかれたぜ。『そんな卑猥な場所に行く許可出してない!!!』ってな。しばらく小遣いは貰えそうにねぇんだ。悪ぃな」


 つまり夜の街に入り浸っていただと!?俺の町にそんなのないのに!


「まあ、そういうわけで金は貸せない。悪いな」


「何してんだよお前。あれ、でも連れの連中から金もらえないのか?ほら、よくお前と一緒にいる」


 悪い奴らとつるんでいると言ったが、コイツはその連中に気に入られていて、金とか色々貰ったりしている。普通逆じゃね?とはいつも思ってる。


「……それがちょっと面倒なことになってんだよ」


「面倒な事?」


「今うちのグループが別のグループとバチバチでな、先月怪我人が出たぐらいだ」


 ……なんか、すげぇ穏やかじゃないねソレ。


「相手のグループは同校(ウチ)や他校の上級生が混じったグループなんだが……タチが悪い事にあいつら、なまじ力あるからイキってるタイプなんだよ。一度オレも出たことがあるんだが、一人一人がそこそこレベルの高い魔法を周りを気にせず普通に撃ってきやがる。ったく、人様の迷惑考えろよなってんだ……」


 心底ウザそうな顔をしてるが、俺からすれば人様がいるところで乱闘してる時点でどっちも変わらないのでは?と思う。シャロム先生が言っていた学校の方針云々の原因こいつらじゃねえかな。


「当然、学校側にバレてな。停学処分になったらしい。ま、連中がそんなんで大人しくなるわけねぇと思っていたんだが......」


「だか?」


「意外なことに大人しくしている。こっちが煽っても見向きもしなくなりやがった」

 

 いや煽るなよ。大人しくなってるならいいやないかい。


「ただ、裏でコソコソ何かやってやがる。うちの連れが連中の中に見たことない奴が紛れ込んでるのを目撃したらしい」


「なんか仕返しの準備してるんじゃないか?」


「いや、あいつらの反応的に俺たちにはもう興味がねぇ感じだった。多分、何か別のことに夢中なんだと思う。でもうちのグループはそれを舐められていると感じていてな。ここ数週間ピリピリして、とてもじゃないが金を借りれる雰囲気じゃねえんだわ」


 怪我人が出るほどバチバチだったのに、いきなり興味がなくなる?そんなに新しいことが面白いんだろうか?


 ……ま、俺には関係ないか。


「お前らのことは知ったこっちゃないけど、とにかく金は貸せないってことだな?」


「ああ、悪いがいつもの節約で頑張ってくれや」


 こいつ、俺がいつも金に困っていると思ってやがる。そしてそれを否定できないのが悲しい。


「てかお前もどこかで稼いでこいよ。いつもいつも俺にたかりやがった。働き口がねぇならオレが給料のいいダークなバイトでも紹介してやろうか?」


「余計なお世話だ。俺は出来ることなら何もせずに金が欲しいんだ。じゃあ俺帰るぜ、これからどうするか考えなきゃだからな」


 おう、と言って手を振ってくる。


 だがどうしよう。流石にゼロってことはないけど貯金は少なかった気がする。こうなったらパン屋のおっちゃんにオマケしてもらうしかないか。


 と、しばらく歩くと、あることを思い出してヘルフェンの方に振り返る。


「ところで、お前の頼みって何だったの?」


 俺が遮ってしまったが、こいつは何か用件があると言っていたはずだ。


「ん?ああ……もう意味ないが聞いてもらうか」


 ヘルフェンはニヤつきながら俺の方に体を向けて、願い事を口にした。


「金がなくてよ、貸してくれねぇか?」


「…………」


「…………」


「……お互い、金が無いのは辛いな」


「……そうだな」


 最初とは違い、俺達はお互い心の底から共感しあった。


 







 

 

 



 門から外に出ると時刻は二時半を過ぎていた。


 先生とヘルフェンの話で時間をだいぶ食っちまった。


 ヘルフェンから金を借りられなかったのは残念だが、あいつも金がないんじゃしょうがない。


 ……まあでも、あいつのことだ、なんだかんだで誰かが貸してくれるんだろう。アレでもかなりモテる方で、女から貢がれてたりしている。羨ましいかぎりだ。


 悲しい嫉妬をしてると()に着いた。


 ここは()()()()()()()()()がある場所で、建物の中にはいくつかのホームがあり、そこには複数の魔法陣が書かれている。そしてその中心に立ち、行き先の駅を設定すれば、そこの駅の魔法陣に転送されるというものだ。


 簡単に言ってしまえば長距離空間移動というかなりの高度な魔法らしい。こういうインフラ関係の魔法使いが頑張ってくれるおかげで、俺達は町から町や国から国への移動が楽になる。


 ちなみに()と呼ばれるのには理由があるらしいのだが、世界史の授業ではボーとしているので知らない。


 当然利用者は多くいるため、魔法陣の所は大体列になっている。


 俺の町の駅があるホームに行き列に並んでいると、隣りの列に並んでいる女子生徒の話し声が聞こえた。


 見ると二人は派手なメイクをしている女子で、ヒストリアの女子用の制服を着ていたので同じ学校の生徒だった。


 こんな時間にここにいるということは、今までどこかで遊んでいたのだろうか。


「それにしてもヤバくない?あれやるだけで八万とか?」


「マジそれ!正直怪しかったけど、実際金持ってんだねあの男!」


 待ってる時間暇なので聞き耳を立てていると、今俺が困っている金銭関係の話だった。


(なんかのバイトか?八万って中々だと思うが)


「いやウチも話持ち掛けられた時不安だったけど、まさかホントだなんて思いもしなかったわ」


「ね~。でも実はスカッとした。あの優等生いつもチヤホヤされてウザかったから」


「ホントそれ。何が『私達は友達』だよ。心では見下してるくせによく言うわ。だからあの時の顔はめっちゃ笑った!!」


 ギャハハハ、と大きな声で笑っているが中々内容が怖い。


 ヘルフェンの言っていた、ああいう女の嫉妬は怖いという話を思い出す。


「あんたも来るでしょ?()()()()()()()()


「当然行くわよ。だってあれでも金もらえるんでしょ?それにあいつの絶望した顔見るのチョー楽しみだし!あたしらが言えることじゃないけど、そんなんで金くれるあの男もマジで頭おかしい!!」


 やべー、なんかホントに怖い話なんだけど。


 こんなことシャロム先生に伝わったら大変な事になるんじゃないか?


 そうこうしてると俺の番がきたので陣の中央に立つ。すると陣内に文字を入力するものが出てきたのでそこに『ゲリュオン』と書く。


 広い街だと駅が複数のあるので名前だけじゃ足りないが、俺の町はそうではないので、こういう時は便利だと思う。


 名前を書き終えると魔法が発動し、魔法陣が青く光る。


 さっきの二人の会話は、魔法が発動して俺がこの駅から転送される頃には頭の中から消えていた。

お読みいただき、本当にありがとうございます。

面白い、続きが気になると思っていただけた方は、⇩の☆☆☆☆☆(面白かったかつまらなかったか、正直な気持ちで大丈夫です)、感想、評価、ブックマーク等、応援よろしくお願いいたします。

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