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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-12「星々、闇に隠る」
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貴方と共に

 しばらく聖を見つめていた瀬尾は、ふと弾かれたように瞬きをした。そして、ゆっくり微笑んで。


「……分かったわ、偲歌。……それが貴方の、選ぶ道なら」

「……」


 瀬尾のその言葉に、聖は黙る。そう言われることを、()()()()()()()()()

 ……そして自分は、この心優しい幼馴染を、解放してあげなければならない。


「……すぅちゃん、ボクは……」

「……?」


 瀬尾は首を傾げる。しかし黙って、その言葉の先を待ってくれた。だからこそ聖は、ゆっくり息を吸う。それがどれほど、自分にとっては残酷な事実だとしても、それで大好きな幼馴染が自分から離れてしまうとしても。


 この現実と、向き合わなければならない。


「……ボクは、今おきていること、ぜんぶ、知ってるんだ。それで、それをかくすために……すぅちゃん、ボクはきみに……いのう力を、つかった」

「……」

「……きみに、ボクをまもらせた。きみはつよいから……やさしいから。きっとボクを、まもてくれると思った。でも……それはきみの考えを、むしすることになる。だから……今からするのは、“めいれい”じゃなくて、“おねがい”」


 ()()()()()()()()()。あえて異能力を使い、聖は瀬尾に念押しをした。これは、お願いなのだ。つまり瀬尾には、断る権利がある。それを、保証する。


「すぅちゃん、ボクは……今から、くるしんでる人、みんなを、止める。……大切な人がきけんになる、そのくるしみは、よくわかるから……」


 だから、と、聖は、自分の服の裾を握りつつ、勇気を出して言う。



「……だから、すぅちゃんも……ボクといっしょに来てほしい、ですっ」



 たすけて。そう、聖は口に出す。



 ……初めから、そう素直に言えたら良かった。そうしたらきっと、自分もここまで苦しむことはなかった。

 でもやはり、同じことを繰り返すとしても、きっと言えないだろうな。聖は自嘲気味に笑いながら、思う。



「もちろんです」



 すると瀬尾は、はっきりと言い放った。そこに迷いなど、一切なく。だからこそ聖は、慌てて口を開いた。


「……す、すぅちゃん、ことわっても、いいんだよ」

「ええ。分かっています」

「なのにすぅちゃん、来ちゃうの!?」

「行きますよ!! 当たり前でしょう!?」

「……なんで」


 珍しく少しばかり言い合いをしてから、聖は吐息のような、素朴な疑問を吐き出す。

 分からなかった。命令など一切していない。あくまでも自分の意思に従うよう、したはずだ。そうだというのに、どうして。


「何故? そんなこと、決まっているでしょう?」


 狼狽える聖に対し、瀬尾は、さも当たり前のように、告げる。



「私が、貴方と共にありたいと思うからです」



「……」

「……何ですか、その架空かくう無稽むけいなことを聞いたことばかりの表情は」

「かく……むけ……? よくわからないけど……でも、だって、ボクと共にありたいって……!!」

「事実を告げたまでです。何か問題でも?」

「もんだい、大アリだよ!! ボクは……!!」

「……貴方が何に引っかかっているか、それは分かりませんが」


 聖の言葉を止めるよう、瀬尾は堂々と続けた。


「……貴方が私に異能力を使っていたということ……正直、驚いたところが大きいです。しかし、例え貴方に操られていなかったとしても、私は貴方を助けたと思います。ですから、今回もその御心に従い、私は貴方と共にあるだけです」

「……すぅ、ちゃん……」

「……聞きたいことも沢山あります。しかし、それは後にすることにしましょう。……今は、この騒ぎを止めることが先決」


 そう言って瀬尾は、窓の外に視線を投げる。それに釣られ、聖もそちらを向いた。……そこでは、悲劇が巻き起こっている。異能力という暴力が振りかざされ、ただ傷つけあうだけの……誰も幸せになることのない、戦闘。

 3年ここで過ごしてきた。しかし、こんな悲惨な戦闘は、見たことがない。

 今まで見てきた戦闘は……傷を負いつつも、誰もが笑顔だった。

 止めなければ。聖は再三、決意する。



「──行こう、すぅちゃん」

「──ええ。貴方と共にあります」



 そして2人は、女子生徒を安全なところへ向かわせつつも、外の騒ぎに乗り込んだ。

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