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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-12「星々、闇に隠る」
91/534

確かな理由

 ──


 目の前に立つ理事長先生の表情を見る。勝ち誇ったような顔だ。


 今さっき言われたことが、重く私の中に響く。脳を震わし、思考の輪郭をぼやけさせる。水面に一粒、水滴を垂らすように、静かに震える。


 ……断る理由が、特に見当たらない。私はこの学園がどうなろうと、誰がどんな目に遭おうと、どうでもいい。私には関係ない。言葉ちゃんみたいに、誰もが笑顔で過ごせるような学園に、なんて崇高な思想など持ち合わせていないし、その、持木くんや雷電先輩のように、誰かを守るために、なんて立派な考えもない。私はいつだって、私主体で動く。誰かとかは、関係がない。


 小鳥遊言葉を、殺す。


 まあ簡単だろう。この手で、触れることさえ出来れば。人の命など、容易く奪える。

 手を開き、閉じて。



『ありがとう、優しいんだね』

『あの腹黒生徒会長……いや、生徒会長は、お前の身をよっぽど案じているらしいな』

『とうこちゃんも、やさしいね』





『僕は、あの星みたいになりたい』

『ねぇ、見せてよ。僕に、君がどうなるのか』





 ……ああ、あるじゃないか。



 確かな、理由が。



 私は息を吸い、そのまま腹に力を籠め、言い放つ。



「お断りします」



 私のその発言に、理事長の眉がピクリと動いた。そして余裕気なその表情が、一気に冷める。部屋の温度が一気に下がる。そんな感覚がした。

 その雰囲気に気圧されぬよう、背筋を伸ばす。1度言ったことだ。撤回する気はないから、ここで引くわけには、いかない。


「……理由を聞こう。何故だ? 君には大事な人もいない。他者を思いやるような人柄でもない。漠然とした人命救助など、君は考えない。更に君は、本質的に人を傷つけることも厭わない人間だ。……そんな君が、何故?」

「……」


 間違ってはいない。私は、大事な人なんていない。誰かが傷ついても、私には関係がない。どうでもいい。確かに、その通りだ。反論する気など、更々ない。


 ──……でも、私は。



「夏休みが潰れそうなので」



 そう、言い放った。



「……ん?」


 理事長先生が、不服そうな表情で固まる。聞こえなかったわけではないだろうが、念を押す意味を込めて、もう1度言い放つ。


「ですから、私の有意義な夏休みが、潰れる予感がしたので」


 理事長先生の表情が、完全に固まる。その顔に書いてあるのは、「何言ってんだこいつ」だろう。しかし、貴方の方が大概何言ってんだ、という感じだ。……異能力者の軍隊だなんて、そんな、子供の安っぽい夢みたいな。

 とにかく私は、彼の計画に手を貸す気はない。これっぽっちも。


「協力はしません」


 再度私は、強い声で述べる。


 しばらく理事長先生は固まっていたが……やがて、笑い出した。ふつふつと。そんな効果音が似合う。まるでサイダーの泡が音を立てて弾けるように。彼の笑みも、そういった類だった。


「……ふ、ふはは、やはり君は素晴らしい。伊勢美灯子」

「……褒めたところで、何も出ませんが」

「期待はしていない。……もう君に期待をするのはよそう」


 そこで理事長先生の纏う雰囲気が、変わる。

 気迫、そして、緊張感。

 彼の瞳が、こちらを見据える。細まっているものの、その目は……全然、笑っていない。


「協力しないのなら」


 私も構える。それに、対抗するように。



「ここで死ね」



 ……まあ知っていた。そりゃあ、こうなるだろう。私は計画を全て知った。その上で、計画に協力しないと言った。……消されて当然だ。私が逆の立場だったら、そうするし。

 そこに文句を言う気はないが。


 はあ、と、ため息を吐く。





「……ここで黒幕を倒した方が、今後事件調査とかいう面倒なことをしなくていいですからね……。


 ──僭越ながら、お相手致します」





 面倒でも、やるしかない。

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