名誉挽回
名誉挽回。
私のその言葉選びに、2人とも何かに思い至ったらしい。一瞬気まずそうにしたものの、すぐにその表情を引き締めた。
それを肯定と捉え、私は先の言葉を述べる。
「2人は異能力で、あの2人の異能力から、見物人を守ってください」
「灯子ちゃんは?」
「私は……」
雷電先輩に聞かれ、私は、端的に答える。
「あの2人の間に、飛び込みます」
「大丈夫なのか?」
持木くんの言葉に、私は頷く。
平気だ。私には、この異能がある。
「悠長にはしていられません。後は自分で判断してください。……行きます」
答えを必要としないまま、私は伝えるべきことだけ伝え……ダッ!! と、地面を蹴った。先程の言葉通り、2人の間を目指して。
2人は相変わらず、何も気にせず戦っていた。言葉ちゃんの操る文字を、瀬尾先輩の風が押し流す。しかしその流された勢いを利用し、更に威力を増して文字を飛ばし……一度体勢が崩れれば、そこに容赦なく追い打ちを放つ。だが瀬尾先輩もやられてばかりではない。風によって自身を浮かすことで、身軽な特攻を仕掛けることが出来……。
……見たところ、やはり言葉ちゃんが優勢だろう。正直、瀬尾先輩は……来た攻撃に対処するのに精一杯になっている、という感想を抱かせた。身一つの特攻も、元々身体能力のポテンシャルが高い言葉ちゃんには、あまりいい策であると言えないだろう。
これが、生徒会長か。
感心すると同時、私は自分のやらねばならないことを、思い出す。
……今はこちらに、集中。
言葉ちゃんも瀬尾先輩も、互いに夢中だ。迫る私のことになど、気が付いていない。……というか、他に気を回したら死ぬから、回さないようにしているのか。
そこでようやく気付きつつも、私は一瞬足を止めた後……すぅ、と、大きく息を吸った。そして、1番大きく、地面を蹴って。
2人の間に、飛び込んだ。
「なっ!?」
「……」
突然現れた私に、瀬尾先輩は驚いたような声をあげた。一方言葉ちゃんは、何も言わなかった。ただ……瀬尾先輩に向けて投げていた文字を、私に当たらぬよう……軌道修正する。
瀬尾先輩にぶつけようとしていることは、変わらない。
……この人、瀬尾先輩を倒すことしか、考えてない。
そのことに冷や汗を流しつつも……私は、その軌道修正された文字を、全力で手を伸ばし……静かに、掴んだ。
すると私の手の中に収められた文字は、跡形もなく消失する。それと同時、行き場を失くした風──恐らく私に当てないよう、瀬尾先輩が慌てて軌道修正したのだろう──が、吹き荒れる。次々と生徒の悲鳴が上がって、そして風が嵐となり、生徒に無作為に牙をむこうとしたのを……。
──ゴウッ!
──バチンッ!
突如上がった炎と雷が、風を飲み込むように、動いた。
見なくても分かる。……持木くんと、雷電先輩だ。上手く、やってくれたらしい。
そして場に残るのは、静寂。誰も、何も言わなかった。傍観していた生徒も、当事者である言葉ちゃんや、瀬尾先輩も。
ただ、その中心にいる、私を見つめる。
私はため息を吐いた。それから、口を開いて。
「……馬鹿なんじゃないですか」
そう、言った。思いっきり、言葉ちゃんの方を見て。
私のその発言には、珍しく、感情のようなものが乗っていた。
「……貴方たちは、この学園の、全生徒の味方になるべき立場でしょう。そんな貴方たちが、そんな命に関わるような異能の使い方をしてもいいと、思ってるんですか? ……持木くんと雷電先輩がいなければ、生徒も怪我をしていたでしょう。……その全て考慮して、今一度、ご自分の立場を考えてはいかがでしょうか?」
今度は2人に向けて言い放った。その発言に瀬尾先輩は俯き、言葉ちゃんは顔色一つ変えない。……何を思っているのか。その能面のような表情からは、何も読み取れなかった。




