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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-10「そよ風はやがて嵐となる」
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嫌な予感ほど的中する

 私、伊勢美いせみ灯子とうこは、必死に、ただ必死に、明け星学園の校内を駆け抜けていた。廊下を歩いている生徒を、半ば突き飛ばすように走ってしまうのは申し訳ない。だが、一刻も早く私は、突如鳴り響いた、この学園の校舎を大きく揺さぶるほどの轟音の元へ。向かわなければならなかった。

 息が上がる。汗を拭うことすら面倒なので、私の異能力……「A→Z」の方で、消した。気になるものが1つ減って、お陰で気分的に少し、走りやすくなる。


 は、と、荒い息を吐き出しながら、冷静に周りの状況を見た。騒ぎの中心に近づくほど、人の姿が増えているように感じる。当たり前だ。ここの生徒は全体的に、騒ぎや戦闘を好み、野次馬をする傾向にある。もちろん、例外もあるが。


 だが事件が起こっている時と比べ、悲鳴が聞こえることや、逃げる人がいる様子はなかった。恐らく()()()()()()……異能力者が暴走している、といったことではなく、普通の戦闘なのだろう。……だが、校舎全体がビリビリと震えているのは変わらなかった。


 普通、ではない。


 すごい威力だ……一体誰と誰が戦っているのか……いや、何となく予感は出来てしまっているのだが……出来ているからこそ、それが違うということを確認して安心したいのだが……。


 ……もし、本当に予感が当たってしまっていたら、どうしよう……。


 そうは思いつつも、足は止めない。最初は転びそうになったが、もうこの揺れの中で走るのにも慣れた。……やがて、音と振動の発生源に辿り着いて。

 ……思わず私は、額を抑えた。



「生徒会長!! 今日こそ貴方の罪悪ざいあく滔天とうてんの行いのケリを……つける!!」

瀬尾せおさん……この明け星学園の生徒会長である僕に敵うとでも……本気で思ってんのかよ?」



「……あの、馬鹿……!!」


 私は思わずそう小さく叫ぶ。嫌な予感が、当たってしまった。


 そこで戦っていたのは、生徒会長の小鳥遊たかなし言葉ことは。そしてその相手は、風紀委員会委員長の、瀬尾せお風澄かすみ

 2人はもう、戦闘を始めていた。言葉ちゃんの操る文字と、瀬尾先輩の操る風が、交差し、ぶつかり、その度に激しい衝撃が生じ、この学園を大きく揺らす。……ダイナミックな戦いだった。が、思わず見とれている場合でも、そんな悠長なことを言っている場合でもないだろう。


 この学園で戦闘をする場合、生命に関わる異能力の使い方をしてはいけない。誰もが分かっていることだ。……分かっている、はずだ。

 でもこの2人は……間違いなく、相手の息の根を止めることを、目的としている。首を、頭を、心臓を。……確実に、人間の急所を、狙っている。

 そこは流石の実力者2人と言うべきか、そう易々と命を取らせることをしないが……それにしても、かなり危ない戦い方をしている。あの様子だと、お互い周りが見えていないのだろう。2人の戦闘を物珍しそうに見物する人が多すぎることにも、恐らく気づいていない。……考えたくないが、もし2人の攻撃が、少しでも見物する生徒に向かったら……。


 ……生徒会長と、風紀委員長の戦闘。注目を集めるのも当然だ。この生徒の集まり様がそれをありありと証明している。そしてそれは、この数を動かすことの困難さも、示している。


 思わず、拳を握りしめた。強く。皮膚に、爪が食い込むほど。

 ……自分の機嫌は、自分で取れ。特に、瀬尾先輩とひじり先輩の前では……そう、言ったのに。


 そしてゆっくりと息を吐き、手を解く。視線は、言葉ちゃんと瀬尾先輩へ。しっかり、目標を定めて。

 面倒だが……止めないと。

 傲慢だと、思われるかもしれないが。

 恐らく、あの2人ほどの実力者を真っ向から止められる異能力者は……私しか、いない。


 でも、どうする。どう止める。そう、考えていると。


「灯子ちゃん! ……! 会長と、瀬尾先輩……!?」

溌剌はつらつ伊勢美、お前も来たのか」


 両脇から、声を掛けられる。一方は私を追って来た持木もてぎ兄妹。もう一方は、被服室に行っていたはずの墓前はかまえ先輩と雷電らいでん先輩だった。持木兄妹は私を追って、先輩二人は、騒ぎを聞きつけて……といったところなのだろう。


 そこで私は、反射的にピンと来る。

 ……この人たちと、息を合わせて、上手くいけば……。


「……持木くん、雷電先輩」

「え、俺?」

「どうしたの? 灯子ちゃん」


 私が2人の名を呼ぶと、2人は私の方に視線を寄越す。それに視線を返しながら、私は。


「名誉挽回も兼ねて、少し協力してください」

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