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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-9「生じた変化と変わらぬ秘め事」
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義兄妹2人へ事情聴取

「だーかーら! そこはここの式を整理して、この公式を使えるようにするの!」

「え、ええっと……んー……」

「もう……1個下に教えられるとか、あんたヤバいよ?」

「……ココちゃん、持木くん」


 教室に入りつつ、そう声を掛けると、2人は顔を上げた。そして2人は、特に持木くんは、その表情を輝かせた。


「伊勢美~! 助けてくれ! 心音にいじめられてて……」

「何であたしが悪いみたいになってるの!? あんたが普段から真面目に勉強してればこんなことになってないでしょ!? ()()()()()()!!」

「勘弁してくれ~……せめてもっと優しく……」

「不真面目なあんたにかける情けは無い!!」


 ……相変わらず仲のいい様子の2人を見て、私はただ黙る。……流石ココちゃん、好きな人にも容赦ない……。


 見ると、机の上にあるのは数学の教科書。どうやら数学……しかも、高校1年生の範囲の勉強をしているようだ。

 ……持木くんって、私たちの1個上、だったよね……。


「じ、じゃあ伊勢美! お前が数学教えてくれ!」

「灯子ちゃん!! 教えなくていいから!!」

「はい、嫌です。めんどくさいので。ココちゃんも、安心してください」

「無慈悲!!!!」


 落ち込む持木くんは無視して、私は開いていた椅子に座らせてもらう。自然と体制は、2人に向く形になっていて。

「……また事件について調査しているんです。重複してしまうとは思いますが、お2人から話を聞かせてもらえませんか?」


 丁寧な口調を心がけて、そう頼むと、もちろん、と2人はすぐに返してくれた。特に持木くんは、数学から逃れられそうで、とても嬉しそうだった。





 持木くんが暴走してしまった原因、それは記憶が曖昧で覚えていない。ふと、自分の感覚が消える感じ。

 その時、傍観者は誰もいなかったから、本人以外の情報はなし。

 その時、何かおかしなこと、いつもと違うことが起きていなかったか? という問いかけも、やはり思い至ることが無いと。というか、記憶が曖昧だと。

 体育祭の時に起きた事件の時はどうしていた? という問いに対しては。


「俺はリレーの準備」

「あたしは……」


 そこでココちゃんが言い淀む。その理由が何となく分かったものの、そういえば、と思って、私は口を開いた。


「……何でココちゃん、あの時、雷電先輩のところにいたんですか?」

「うっ」


 ココちゃんは肩を震わす。そして気まずそうに目を逸らしながら、小さく呟いた。


「……それは、その……あたしも、灯子ちゃんみたいに……誰かを助けたいって……思って……」

「……」


 思わず、黙ってしまう。


 何故なら、それってつまり、私のせいでは。と、思ったので。


「灯子ちゃんのせいじゃないよ!? ただあたしが……灯子ちゃんみたになれたらって思っただけで……。今はしないから!! 流石にもう、あたしに出来なくて、あたしにしか出来ないことくらい、分かってるから」


 そう言ってココさんは笑う。そこに曇りだとか、嘘を吐いているような様子は見受けられない。……いや、私には見抜けないから、分からないが。でも私は、そう思う。


 最後に、瀬尾先輩と聖先輩に関しては。


「瀬尾先輩? ってあの、おっかない先輩だよな……俺、1回色んな人に喧嘩吹っ掛けすぎて、注意されたことある……」

「帆紫、戦うの好きだもんね~……」

「……まだ学園に慣れてない私に喧嘩吹っ掛けるくらいですからね」

「結局会長にボッコボコにされたけどな……あ、でもお前と戦ってみたいって気持ちは変わってないから! 今度は正気で! もし気が向いたら、いつでも言ってくれ」

「一生向かないので安心してください」


 ええ、と不満げに持木くんは顔をしかめた後、まあ、瀬尾先輩の印象はそんな感じ、と言った。聖先輩については、何も知らないと。


「……あたしも、この前灯子ちゃんに言ったことくらいしか知らないかな。瀬尾先輩と会長はすごく仲が悪くて、聖先輩に関しては……特に……」

「そうですか……分かりました。ありがとうございます」


 2人に対し、私はお礼を言う。……やはり、特に新たな情報は得られなかった。だが、決して無駄なことではないのだろう。

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