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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-8「激闘!! 体育祭【後編】」
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友達だから

 ──


 人混みを掻き分け、私は騒ぎの中心に向かう。途中で実行委員か何かの人に止められたりもしたけれど、それも全て振り払って。

 相変わらず頭上では雷鳴が轟いている。自然の脅威に足が竦むが、そうしている暇も無い。無理矢理にでも何でも、足を動かす。

 だが前に進んでいる間に、見知った顔を見つけた。いや、正確に言うと、見慣れたのは今日なのだが。そんな話はどうでも良くて。


「墓前先輩」

「……ああ、溌剌伊勢美か」


 私を振り返る、その表情に、覇気がない。私が話しかけるまで、呆然としていた。……そのことに、やっぱり、と、思う。


「……墓前先輩……」

「……」

「……あの雷は、雷電先輩のものですよね……?」


 私の質問に、墓前先輩は、答えなかった。代わりに、再び雷の方に目を戻して。


「……正直信じられない。さっきまで普通に話していたんだ。でも……突然、異能力を……」


 そう話す墓前先輩の頬を、冷や汗が伝う。……暴走した、まさにその瞬間を、この人は、間近で見たんだ。……しかも、唯一無二の、友人の。


「……あれが噂の事件の、暴走ってやつか」

「……恐らく」

「……伊勢美、1つ、頼んでいいか」

「……何ですか」


 墓前先輩の視線が、こちらに戻る。そして、真顔で。



「俺の友達を、助けてくれ」

「……」

「あいつ、暴走しきる直前に言ったんだ。……逃げろって。馬鹿だよな。……でも、馬鹿でも、俺の友達なんだ」

「……」

「俺の力じゃ、助けられないから」

「……」

「頼む」



 その真っ直ぐな視線に、私も出来る限り、真っ直ぐな視線を返す。そうして、誠意が見せられるように。


「……分かりました」

「……ありがとう」


 その時、そう言って笑う墓前先輩の顔が、セーラー服を着て笑っていた墓前先輩の顔と……重なる。

 ……ああ、やっぱり、この人は墓前先輩なのだな、と、なんとなくそう思った。


「でも、期待しないでください」

「……ああ」

「それでもって、逃げてください。無事な場所まで」

「……分かった」


 私の言葉に素直に頷き、去って行く墓前先輩を見送り、私はまた前に進む。

 雷の出所、そこまで行けば、雷電先輩に会えるだろう。……でも、どう止める? 前回は言葉ちゃんが持木くんを気絶させてくれたから、場が治まった。……私にそんなことは出来ないし、そもそもどうすれば暴走が止まるのかも不明だし……。


 ……いや、ごちゃごちゃ言っていても仕方がない。もうすぐ辿り着くだろうから、その場その場、アドリブでこなしていくしか……。

 遂に人混みを抜け、出所に出た。そして目の前の光景に……私は目を見開く。


「ココさん……!?」

「……!? 灯子ちゃん!?」


 私の声に、何故か雷電先輩と対峙していたココさんは、振り返った。そしてその隙に、雷電先輩──その表情に、先程までの笑顔がない──が、ココさんに向け、手を振り下ろす。マズいっ……!!

 私は地面を蹴る。そして、空気抵抗の消去。任意の地点に到達したら、摩擦係数を最高値に……!!


「うっ」

「……!! 灯子ちゃん……!!」


 私と雷がココさんに到達したのは、ほぼ同時だった。私の体を、電流が駆け巡る。しびれてしまった、が、体内で何とか電気を分解する。そのため、一応致命傷は免れた。……若干ダメージが残るのも、事実だが。


「……っ、ココさん……大丈夫、ですか……」

「灯子ちゃん……何で……」

「……? 何で、とは……」

「だって、あたしっ……!!」


 何故か涙目で震えるココさんの背後。また雷電先輩が手を振り上げる。だから私は再び、ココさんの前に立った。そして手を挙げる。

 ……すると、小学生でも分かること。より高いところに、雷は落ちる。

 私のもとに雷が落ちて、けれど私はそれを全て消去する。それだけではなく、同じものを生成すると、雷電先輩にそのままお返しして。

 命中したかは分からないが、ドンッ!! と盛大な音がし、煙幕が上がった。


「……だって、何ですか」

「……!! ……だって、だって、あたしは……灯子ちゃんに、酷い態度を……取って……」

「……覚えがありませんね。そんなことをされたように、私は認識していません」

「……でもあたしは……っ、今日一日、灯子ちゃんを避けてた!! 灯子ちゃんに……っ、嫌な感情ばかり、感じてた!! ……なのに、どうして、そんなあたしを、庇ったりなんか……!!」


 涙を流しているのだろう。ココさんのその声が、震えている。でも私は、その表情を見られなかった。だって警戒しなければならない。この煙幕、どこから攻撃が飛んでくるか、分からない。

 守らなくては、いけないから。



『伊勢美、友達ってさ、別に基準とか無いんだよ。何かさぁ……そういうのって、感じるものじゃね?』

『でもそれは、そんけいの気もち。上と思っていても、友だちになれるよ。ボクとすぅちゃんは、友だちだから』

『俺の友達を、助けてくれ』



 私は小さく息を吸う。そして、振り返って。



「貴方が私の、友達だからです」



 そう、言い放つ。



 ココさんは、目を見開いた。その顔を見続けるのが何だか、気恥ずかしくて、私は視線を前に戻す。


「……だから、友達を助けることは……当たり前のことです」

「……」

「……逃げてください。ココさん。いつまでも庇い続けられる自信が、ありませんから」

「……うん」


 ありがとう。


 そう言って、ココさんは駆け出して行った。その場には私と……雷電先輩のみが、残る。


「……待っていてくれたんですか、雷電先輩」

「……」

「……貴方のご友人に頼まれましたので、僭越ながら、助けさせてください」

「……!」

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