表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明け星学園  作者: 秋野凛花
1-7「激闘!! 体育祭【中編】」
52/534

泡となる夢

 たぶん、夢を見ていた。

 深く深く、心を支配する、とても悲しい、そんな夢。

 友だちがいた。とても仲良しだった。何をするにも一緒だった。こんな日々が、ずっとずっと続けばいいのに。きみ以外何もいらないから。ずっとずっと、自分といてほしい。

 しかしそれは、泡となって消え失せる。昨日まであった様々な色彩が、もうモノクロな世界に様変わって。

 泣きわめきはしない。

 ただ、立ち尽くして。

 絶望するのだ。


 ──


「──ッ!!」


 びくっ、と、勢いよく体が跳ねる。痙攣のような、そんな自分の動きに、私は目を覚ました。背中を伝う汗が気持ち悪い。何だか呼吸が荒い。……何か夢を見ていたような……このはやる鼓動や服をびっしょりと濡らす汗は、たぶんそのせいだ。でも、思い出せない。だから、考えるのをやめる。

 ふう、と、呼吸を落ち着かせるためにも、まず小さく深呼吸をする。すると徐々に血と酸素が体を巡る感覚がして、頭が冴えてきた。……そこで私は、左手に温もりを感じた。反射的に握り返す。すると、その温もりも微かに反応を返した。


「……とーこ、ちゃん……?」


 そしてその手がある方から、か細い声がした。その声があまりにも弱々しいものだから……私は初め、誰から話しかけられているか、分からなかった。


「……言葉ことは、ちゃん……?」

「あ……ッ、う、良かっ……良かったぁっ……!!!!」


 そして言葉ちゃんは私に勢い良く抱き着いて来る。その声に、表情に、私は思わずぎょっとなってしまった。


 何故なら、いつも元気で、明るくて、うるさくて……いつも笑顔なあの彼女が、その綺麗な顔を、涙でぐちゃぐちゃにしていたから。


 目の前の光景が、信じられない。これは本当に言葉ちゃんなのか? 超精巧なクローンなのではないか? ……現実逃避した頭が、そんなことを考え出す。それだけ、こんなに涙を流し、弱っている言葉ちゃんが……私は、信じられなかった。

 でも、私を抱きしめるその体の温もりが、肩を濡らす涙が、彼女が本物だと私に教える。

 彼女は、あの明け星学園の生徒会長は、小鳥遊たかなし言葉ことはは……私の身を案じて、泣いている。


「良かっ……ぅ、もう、っ、とーこちゃん、が、目を……覚まさなかったら……っ、どうしよ、って……ッ、ひっく、うぐっ……」

「……勝手に殺さないでください……」


 普通ならここでは、心配かけてごめん、といったことを言うのだろうか。それでも私はそれより、このテンションの彼女をどうするべきか。それだけ考えて、とりあえず思ったことを言っておいた。


「とーこ、ちゃ……っ、ごめんなさいっ……ごめ、っ……」

「……何で貴方が謝るんですか……」

「だ、っ、だって、僕が、僕が行けって、言ったからぁっ……」

「……あの、面倒なので、泣き止んでから喋ってもらっていいですか? まともな会話になりません」

「ひどい~~~〜っ……!!!!」


 うわああああん、と言葉ちゃんが大声で泣き喚く。私の耳元で。……軽く鼓膜がお亡くなりになりそうだ。だが馬鹿力を持っているこの人に、私が勝てるわけもなく……黙って言葉ちゃんのことを抱きしめ返す。そして子供をあやすように、その背を撫でた。

 ……人を撫でた経験なんてないから、これでいいのかは知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ