対等な友達
「……失礼だけどさ、伊勢美、お前って、人生でそんな友達いなかっただろ」
「……ええ、まあ」
「心音もなんだ。昔から人に対して心を閉ざして、しかも目つきが怖いとか、口調がキツイとか言われて、余計人と関わる機会が、なくてさ」
……ココさんは言っていた。異能力のせいで気味悪がられたと。人の汚い部分を沢山知ったと。
でも持木くんのお陰で、変われた。
「だから俺さ、嬉しかったんだ。心音が、俺以外にも、信頼出来る……友達が出来て」
「……え、誰ですか」
「え、お前」
「え?」
「え?」
意味もなく、同じ言葉を繰り返してしまう。一方、持木くんも同じように聞き返し、キョトンとしていた。
「……友達、だったんですか、私たち」
「……俺にはそう見えてたよ。今も」
「……」
「お前らってほんと、似てるよな。心音も、お前のこと、友達って言っていいのかって……毎日のように悩んでる」
……友達って、何だろう。ずっと考えている。
確かに、少しは仲良くなった。それは認める。でも、果たして、友達と呼んでいいのか……。
「伊勢美、友達ってさ、別に基準とか無いんだよ。何かさぁ……そういうのって、感じるものじゃね?」
「……感じる……」
「そして心音の場合はさ……お前のこと、自分より『上』だと感じてるんだ。だから、友達っていう、対等なものになれるかって……悩んでる」
「上、って……」
『灯子ちゃんは、すごいね』
『……そうやって色んなところで活躍して、色んな人の役に立って、しかも会長に見初められてて、認められてて、しかも会長に対して、言葉ちゃん、なんて呼んだり……あたしは恐れ多くて、とてもそんな風に出来ない。……緊張しちゃうし』
『……灯子ちゃんは、強いね……』
『……あたしは……そんな風に、なれない』
……どうしよう。割と覚えがある……。
私が上なわけがないし、私の方が、ココさんを見習わないといけない点が多い。
でもそれは、あくまで私の主観で……ココさんの考えは、また違う。
「だからさ、お前から教えてやってほしいんだよ。2人は対等だって。……それでさ、ちゃんと喧嘩してくれ。じゃないとずっと気まずいままで、仲直りも出来ないだろ?」
「……」
それはつまり……私がココさんと友達だと、認めろ、ということか。
……いいのだろうか。私なんかが、友達で。
「じゃ、俺は人に呼ばれてるから、もう行くな。……心音を、よろしく」
そう言うと持木くんは、私に手を振って去って行った。はあ、と気の抜いた返事をし、それを見送る。
……人に呼ばれていた? のに、どうして私と呑気に話を……。
……そんなに、私とココさんの顔が、元気がないように見えた、ということだろうか……。
思わず自分の頬を触る。ダンスも終わったようなので、窓際から離れて、階段の踊り場にある鏡の前に立って。
……そこまで変わったようには見えないけど……。
しばらく自分の頬を揉んでいると、背後に誰かの姿が映った。そして私が頬から手を放し、振り返ると同時……。
むに。
私の頬に、軽く指が突き刺さった。
そして私の頬を、そのままむにむに。それをやっている人物は、何故かとても楽しそうに、静かに私の頬を突き続けた。
やめろ、と言うことも出来ず──正確に言うと、言う気が起きず──私はただ、探す必要、無かったな、と思う。
「……数日ぶりですね。聖先輩」
私のその言葉に、聖先輩は、にこりと笑った。




