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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-6「激闘!! 体育祭【前編】」
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うるさい開会式

 そこで、『ぴんぽんぱんぽ~ん☆』と音が鳴った。どうやら放送での開会式が始まったらしい。……皆、各々自由なところで開会式の放送を聞いていいことになっている。中学の時は炎天下の下並ばされたものだから、とてもありがたい。私は悠々と木陰でそれを聞いていた。……。

 ……いや、ツッコミそびれたけど、これ、「音」じゃなくて……「声」、だよな……。しかも良く知った声……。



『はぁ~い!! 生徒会長の小鳥遊言葉だよ☆ 皆~!! 体育祭楽しんでるぅ~!? 盛り上がってるぅ〜〜〜〜!?』



『ちょっ、会長!! 進行役俺だから!! 奪わないで!!』

『あれれ? そうだったっけ?』

『普通こういうの放送委員会の役目でしょ!!』


 ……何だかもう、初っ端から放送事故が起こっている。可哀想に、放送委員会さん……。

 というかまだ体育祭が始まってないのに、盛り上がるわけがないだろう。始めるための開会式じゃないのか。


『はぁ、本当にもう……会長は自由だよなぁ……ッ、ゴホン。改めまして、放送委員会委員長、音宮おとみや鳴子なるこです。本日の全体的な進行は私が。……さて、小鳥遊会長の妨害もありましたが』

『妨害って言うな!!』

『……えー、遂に体育祭当日です。今日のために練習をしてきた皆さん。ゆるゆる楽しみたいという皆さん。暑っ苦しくてしゃーないという皆さん。まあ自分のやりたいように、しかし必要最低限のルールは守って、楽しい1日にしましょう』


 放送委員会の人……音宮先輩の声は、とてもハスキーで、耳に優しいものだった。この声には、「聞かせる」力がある。なるほど、放送委員会委員長になったのも頷ける。


『では……軽く諸注意を、風紀委員会委員長、瀬尾風澄さん。よろしくお願いします』


 その名前に、軽くだが、心臓が跳ねる。異能力で、吹き飛ばされた記憶がよみがえった。


 ……怖い、とかではないが……。きっと次は、あんなものでは済まないだろう。あの時だって、本気で瀬尾先輩は私を潰しにかかっていただろうし、もし聖先輩の制止がなければ危なかった。……まあ手法さえ分かれば、いくらでも私の異能力でどうにか出来ただろうし、あの場には、結果的に顔は出さなかったものの、言葉ちゃんもいた。明け星学園の顔として、生徒が悪意を以って生徒に害を加える……という状況を看過しないだろう。


 ……とにかく、今日は、慎重に動かなければ。


『はい、風紀委員会委員長、瀬尾風澄です。まずは第1に、競技内の異能の使用は、概ね認められています。しかしもちろん、普段の学園生活と同様、人を故意に傷つける、危害を加えるといった方法での使用は禁止です。更に──』


 その後も諸注意は続く。まあ、普段気を付けていることとそこまで変わらなかった。今日限定で気を付けなければいけない、ということもなさそうだ。


『──以上です。しっかりと規則に則り、呵々《かか》大笑たいしょうとした1日を過ごしましょう』


 そう言って瀬尾先輩は、終始冷静な声で締めた。どちらかと言うと、誰かに対して怒鳴ったりしている印象の方が強いから、彼女が冷静なのは新鮮というか、変な気分だ。



『何ですって……ッ、貴方!! 無礼千万!! 偲歌を馬鹿にするなら、それなりの覚悟が出来ているんでしょうねぇッ!!!!』



「……」


 脳裏にその怒声がよみがえる。あんなに誰かのために怒ってもらえるなら、きっと大事にされているということで。きっと聖先輩は、とても幸せ者なのだろう。


『では、最後に……正直喋る必要あるのかって感じですけど、生徒会長、小鳥遊言葉さんから一言、そして、開会宣言です。よろしくお願いします』

『いや1番大事でしょ!! 喋らせてよ!!』


 ……私の思考は、言葉ちゃんの騒がしい声に押し流される。これ、聴覚過敏の人はこの開会式だけで、何回か死んでいるだろう。可哀想に。


『で!! はーい!! ご紹介に預かりました!! 皆ご存じ!! 生徒会長の小鳥遊言葉だよ☆ ……ってこれさっきも言ったか……。ま、いっか!! えっとねぇ、何喋るか考えてなかったわ!!』

『……生徒会長、いい加減にしてくれますか!? 言うことを考えていないなど、貴方はどれだけ無責任なのですか……!!』

『あー瀬尾さんが怒っちゃったぁ。もー、うるさいなぁ、分かってるって。……まあどーせ、皆僕が何を言おうと今日を楽しむよ。僕たちはその楽しい時間を精一杯準備してきたし、当日の運営も抜かりない!! だから、皆も目一杯楽しむこと!! それが僕の願いです!!』


 ……相変わらずの言葉ちゃんと瀬尾先輩の幼稚園児並みの喧嘩に、私は思わず白けた目をしていたが……とりあえず後半は、少しは良いことを言っていた、と、思う。

 ……言葉ちゃん、てっきり事件解決に向けての調査にばかり時間を使っているのかと思っていたが……こういったイベントの運営にも、きちんと力を入れていたのか……。

 ……どこからその時間が捻出されるのだろう。見せてもらったあの資料の量……とてもイベント準備に時間を割けたと思わないのだが……。言葉ちゃんってもしかして、複数人いるのだろうか……。


『えー、まあ僕の話なんてどーでもいいよねっ!! ってわけで!! スポーツマンシップに則り!! 正々堂々、それぞれの力を出し合って!! 最高の1日にしよーーーーうっ!! 以上!!!!』


 最後までうるさい開会宣言が終わり、あっちこっちで盛り上がったような叫び声が上がる。あっという間に熱気が、学園全体を包む。そんな感覚がした。割と人混みから遠くにいるここからでも、それが伝わる。

 ……私は、こういうイベントごとは、別に好きじゃない。誰かと一緒に何かをする、というほど難しいことはないし、何より、私は調和を乱しがちだし。

 ……でもこういう、「何かが始まりそう」という、何とも言えないワクワクは、嫌いじゃない。

 いつまでもここにいるのは、つまらない。そして何より、不本意だが、私にはやらなくてはいけないことがる。もう行かなければ。

 水分補給をし、重い腰を上げて、私は人混みの方へと足を向ける。きっととても長くてとても短い1日が、ここから始まるのだろう。

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