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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-5「怪物との邂逅」
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思わぬ進展

 それから約2週間。

 端的に言って、特にこれと言ったことは……なかった。


 気づけば6月となり、梅雨も過ぎ去り、流石に暑いので私はブレザーを脱いだ。第1ボタンは絶対に開けないけれど。

 約2週間経ったけれど、何もない。進展も、後退も。相変わらず瀬尾先輩のガードが固く、聖先輩は捕まらない。持木くんに続く暴走した異能力者が現れることもない。次はどこから手を出していくべきか。言葉ちゃんも慎重に次の手を見定めているのか、特に動くこともない。相変わらず毎日絡まれるが、事件関連の話は少なくなる一方だ。

 事件が起こらないことはもちろんいいことである。しかしそれは、確実に私たちの心を緩ませ、事件の真相から遠ざけつつある。……結局あれは、持木くんが何かをやらかした……ってことにまとまってしまいそうな気がする。ココさんに怒られそうだけど。


 ……せめて聖先輩に話を聞ければ、事態は変わるかもしれないが……。それか新たな事件が起きるか……いや、人の不幸を願うのはよそう。

 そう、進展など無かったのだ。



 たまたま立ち寄った校舎裏にある花壇で、私が聖先輩に会ってしまうまでは。



「…………………………」

「…………………………」


 私と聖先輩、しばしの沈黙。

 聖先輩は花を愛でていたのか、その白く細い指が花弁に柔く触れたまま停止している。一方私も、聖先輩を見つめて停止している。


 正直思った。えっ、どうしよう。これって……チャンスなのでは……。

 見たところ、この場にあのツインテール先輩はいない。今はこの人の自由時間なのか、それとも何か職務なのか……分からないが、この人は今1人だ。次いつ瀬尾先輩のマークが無い状態で会えるかは不明。話を聞くなら──今しかない。


「……っ」


 聖先輩は立ち上がると、私のいる方とは逆方向に踵を返した。恐らく、私も言葉ちゃん側の……話を聞きたがっている側の人間だと、バレているのだろう。……正直、瀬尾先輩が勝手に庇っているだけで、聖先輩は話そうと思えば、案外あっさり話してくれるかと思っていた。しかし、逃げるということは……やはり何か、やましいこと、というか……。

 ……知っていることが、あるのだろうか。


「ま、待って、くださいっ」

「……」


 私は思わず、精一杯声を張り上げる。思ったより声が響いて、恥ずかしさに顔に熱がたまるのが分かる。……が、そのお陰か分からないが、聖先輩は止まってくれた。

 だが思う。……何を話そう、と。

 余計なことばかり言ってしまう私だ。ここで私がしゃしゃり出ても意味がない。でも何とかこの場を繋いで、言葉ちゃんを呼んで、後は言葉ちゃんに頼るしか……。


 ……。

 ……私、言葉ちゃんの連絡先持ってない……。


「……」

「あっ」


 聖先輩の瞳が少し細まる。もういいか、とでも言うような瞳だ。だから私は必死に考える。どうにか、どうにか口下手割に、この人を引き留めなければ……。

 ……どうせ言葉ちゃん(あのストーカー)は、私がほっといても来る。それまでの辛抱だ。


「……あの、いつも……私の連れが、すみません……。鬱陶しいですよね……私もいつも、迷惑してて……」


 何を話せばいいか分からず、とりあえずそんな風に切り出した。まあ、言葉ちゃんのことを鬱陶しいと思わない酷く稀な人はいないだろう、ということで。


「……でもあの人は、貴方に危害を加えようとか、そういうつもりで、ああいう風に話を聞きに来てるわけじゃなくて……」

「……」


「むしろ、貴方の無実を証明するためにも話が聞きたいって……」

「……」


「……あの人は……この学園の人のために、動いています……それこそ、私みたいな……こんな、もうしばらく経ったのにまだ馴染みきれていない生徒のためにも……動いてくれていて……」

「……」


「……え……っと……」


 ……どうしよう。もう口の中がカラカラだ。正直、ここまで喋ったことを褒めてほしいくらい。というか、全く反応してくれない。一言も、返してくれない。私もたまに、人の言うことは無視するが……流石に私もここまでではない。私の場合は無視するのが面倒になるからなのだが、この人の場合は何なのだろう。……良心がない、とか?

 するとそこで気が付く。聖先輩が、何やら忙しなく手を動かしていることに。……喉に手を当て、次に、指でバツのマークを作り……。

 ……これは……。



「……喋れない、んですか……?」



 すると聖先輩は小さく、コクリと頷いた。

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