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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-5「怪物との邂逅」
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幼稚園児の喧嘩

 私のその呼びかけで、ツインテールの女の子はようやく自分たちに無数の視線が集まっていることに気が付いたらしい。「失せなさい!! 見世物じゃないわよ!!」と良く通る声で告げると、生徒たちはあっさり散っていった。それほど生徒たちにとって、この女の子は怖い存在らしい。

 ……でも一部は、懲りることなく物陰からこちらを覗いていた。そんな生徒たちにも、ツインテールの女の子は睨みを効かす。すると生徒たちは今度こそ去った……たぶん。


「まったく……ここの生徒たちは全く風紀が保たれていません!! 貴方のせいですよ、生徒会長」

「ええ、何で僕のせいなのさぁ」

「語尾を伸ばすな鬱陶しい!! ……はあ、多少の自由はいいでしょう。高校生など思春期真っ只中。秋霜しゅうそう烈日れつじつな日々が続けば、彼らもいずれどこかで爆発するでしょうし。……しかしそれにしても!! 貴方は自由過ぎるのです生徒会長!!」

「そういう難しいどーでもいい話は今はいいよぉ。……あっ、とーこちゃん、手紙渡した?」

「……はあ、渡しましたけど」

「そっか!! ありがとー、ご褒美に飴あげるねぇ?」

「無視するな生徒会長!!」

「いえ、いらないです」


 ……うるさい。私を間に挟んで言い合いをしないでほしい。耳が痛い……。

 そこで私は、ふと気が付く。先程までこのツインテールの女の子の背に隠れていた綺麗な人が、いつの間にか姿を消していることに。

 それに言葉ことはちゃんも気づいたのだろう。あーーーーっ、と、思いっきり大声を出した。それに私もツインテールの女の子も、すっかり存在感を掻き消されてしまっているココさん……持木もてぎ心音こころねさんも、耳を抑えた。


ひじりさんどっか行っちゃった……!! もー!! 瀬尾せおさんのせいだから!!」

「ふんっ、それでいいんですよ。偲歌さいかがあの事件に関わっているわけないんですから!!」

「チッ……」


 ツインテールの女の子に対し、言葉ちゃんは嫌そうな表情をおくびも隠そうともせず、思いっきり舌打ちをかます。一方ツインテールの女の子は、満足そうに笑うだけだった。


「……それで、この人は誰なんですか……」


 私はこの二人のピリピリとした空気に絡まれると厄介、ということを悟り、なるべく気配を消してココさんに近づき、そう問いかける。するとココさんは苦笑いを浮かべながら言った。


「……瀬尾せお風澄かすみ先輩。三年生で、会長とは同い年。……風紀委員会の委員長で、厳しい、ってことですごく有名だよ」

「……へぇ……」


 わかりやすく説明をしてくれたココさんに対し、私はお礼を告げる。ココさんは笑ってそれに頷いてくれた。

 ……確かにツインテールの女の子……瀬尾先輩は、右腕に「風紀委員会」と書かれた腕章をつけている。そしてあの鋭い目つき。睨まれたらまさに蛇に睨まれた蛙のような気持ちになるのだろう。……。


「……? どうしたの?」

「……いえ……」


 ……そういえばココさん、初対面で「口調がキツイだとか睨んでるだとか言われがち」、と言っていたような……。


「……ココさん、自分で思うほど、怖くないと思いますよ」

「……えっ!? ありがとう!?」


 突然叫んでココさんがお礼を言うものだから、私は思わず顔をしかめてしまった。ココさん、そんな大声が出せるのか……そうならそうと、早めに言っておいてほしかった。

 ……? 何でココさん、顔赤いんだろう。持木もてぎくん相手でもないのに……。


「はいはいとーこちゃん? 心音ちゃんを口説かない」

「……は? 耳腐ってるんですか?」

「んなわけないでしょまだこちとら十代なんだよ」


 そこで何故か言葉ちゃんに背後から抱きしめられた。意味が分からないが……まあ面倒なので、理解は諦めよう。特に困ることは無いだろうし。


「……転校生。それは、私と比較した上での発言ですか? 失礼ですよ」

「……いえ、そういうわけではないですけど……」

「……ならいいのですが」


 そして前方の瀬尾先輩に思いっきり睨まれた。……確かに瀬尾先輩の何とも言えない威圧と比べての発言だったけど、まあ言わないでおこう。火に油を注ぎかねない。

 ……というか……。


「ぷ、瀬尾さん、自分が皆から怖がられてる自覚、あるんだねぇ~」

「なっ……!? そこ!! 笑うな!!」


 ……ああ、私が思っても言わなかったことを……。

 図星を突かれたせいか(恐らく十中八九間違いないだろう)、瀬尾先輩は小さな顔を真っ赤にして怒り出す。それを見下ろしながら、言葉ちゃんは完全に瀬尾先輩をおちょくっていた。……たぶん、その……聖さん? を逃がしてしまった、腹いせに……。

 ……。


「……幼稚園児の喧嘩」

灯子とうこちゃん!! それは言わないでおこう!!」


 私の口を慌てた様子でココさんが塞ぐ。そして2人で気配を消し、私たちは言葉ちゃんと瀬尾先輩のくだらない言い競り合いから逃走するのだった。

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