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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-4「オカルト少女(?)と事件調査」
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手紙を届ける簡単なお仕事

 だから書類に目を戻し、ありふれたことを口にする。


「……意外と多いですね……これ、全部当たるんですか?」

「そうだねぇ。可能性はとことん潰していかないと」

「……疲れそう」

「覚悟の上。この学園のためだよん」


 謎の語尾で彼女は笑う。……本気でここにある生徒全員を回るつもりなのだろう。戦力は2人。しかも一方は話術に優れていない。かなりの日数をかけることになるだろう。しかし、こうしている間にもまた同じような事件が起こりかねない。……どうするのか……。


「……ま、君の不安は尤もだよ。……というわけで今回!! 助っ人をご用意致しました〜〜〜〜!!!! はい拍手〜〜〜〜!!!!」


 無言で考え始めた私の思考をぶち抜くように、言葉ちゃんの大声が鼓膜に響く。耳を抑えつつ、助っ人? と首を傾げると。


「どうも~、助っ人です。会長に呼ばれて来たよ」


 私の背後から聞き慣れた声がかかる。彼女は……。


「……ココさん」

「すごい『巻き込まれて可哀想……』って目だね……大丈夫だよ、自分の意思で会長に協力してるから……」


 持木もてぎ心音こころねさん。ここのところ毎日会っている気がする。……同じ学年なら、なんら珍しいことではないものなのだろうか。


「そーだよぉ。僕が嫌がる人に無理矢理協力させるように思う~?」

「私の存在認識してますか?」

「やだなぁ。とーこちゃんも何だかんだ善意で協力してくれてるでしょ♡」


 ……駄目だ。無駄に話したくない。疲れる。体力吸い取られる。

 そしてココさん、「仲良しだなぁ」と言いたげな瞳でこちらを見つめるのはやめてほしい。


「まあ、冗談もほどほどに……とーこちゃん。君が自分で申告した通り、君が事情聴取でアテに出来ると、僕はこれっぽっちも思ってない」

「……貴方も人のこと言えないくらいズケズケ言いますね……」

「そこで僕は、事件のことをよく知っていて、かつ人の嘘まで見抜けそうな鋭い視線を持った心音ちゃんをスカウトしました~」

「はい、昔から人のことばかり疑って生きてきましたから……きっとお役に立ってみせます」

「うんうん、期待してるよ?」


 張り切る様子のココさんに、言葉ちゃんは偉そうに頷く。実際、偉いのだが。

 ……そして、昔から人のことを疑って生きてきた……それは、初対面で話してくれた、あの異能力のせいで……というやつだろう。それを何でもないような口調で話すんだな、と、私はぼんやりと思った。

 ……本人も言葉ちゃんも何もツッコまないから、私も何も言わないが。


「つーわけで、ここからは二手に別れます」

「……二手?」

「うん。僕と心音ちゃん。そして、とーこちゃんボッチ」


 言葉ちゃんは自分、ココさんを指差し、そして一呼吸置いてから、私を指差す。ボッチって。


「……その口調だと、私は事情聴取以外のことをするんでしょう。……何をするんですか」

「君には、これをある人のところへ届けに行ってほしい」


 そう言って言葉ちゃんは、パーカーのポケットから何かを取り出した。……いや、取り出せていない。いや、取り出せてるんだけど、たぶん欲しいものが取り出せていない。いくつかお菓子を取り出しては、あれぇ? と不思議そうに首を傾げている。……いやすごい床にお菓子が積み上がってる……これ、このポケットのどこに入ってるんだ……? 明らかにパーカーのポケットじゃ収まりきらない量のお菓子だと思うのだが、これら。というかこんなにお菓子持ってて何になるんだ。


「……あ!! あったあった!! これだよこれ~」


 そしてようやく意中のものを見つけたらしい。言葉ちゃんはわざとらしく額の汗を拭って、私にそれを差し出す。……それは、一つの便箋だった。可愛らしい字で、「墓前糸凌様」と書かれている。……この無駄に可愛い字、言葉ちゃんのだろうか……。そう思っていると、手に便箋を隠される。顔を上げると、言葉ちゃんが顔を赤くしてこちらを睨んでいた。


「そんなにジロジロ見なくていーの。……とにかくこれを、別館にあるオカルト同好会にいるやつに届けてきて。90%の確率でそこにいるから」

「別館って……確かあの、敷地内にひっそりとある木造建築の……」

「そ。よっぽど物好きしか近寄らない、あの別館」


 ……それは私がよっぽどの物好きだと思われる、ということか。

 私が嫌そうな顔をしていたせいだろう。言葉ちゃんは口を尖らせて言った。


「仕方ないじゃん。だってこいつ、僕と全く顔合わせたがらないんだから」


 言葉ちゃんはそう言って腕を組み、顎で便箋を差した。

 ……正確には、そこに書かれている、「墓前糸凌」という名前を。

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