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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-4「オカルト少女(?)と事件調査」
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潜入、生徒会室

 授業後、私は生徒会室に向かっていた。

 ……というのも、それはいつも通りにあの、口が主体の生徒会長が私の元に現れなかったからである。いや、それ自体は全く問題が無い。無いのだが。というか本来ならば大歓喜をするところなのだが。



『今日はもう帰って、ゆっくり休むよーに。明日は不規則に動くだろうからねー。あっ、授業終わったら迎えに行くね』



 ……昨日そう言った当の本人が迎えに来ないから、仕方なく私が迎えに行っている。探さないと、後でうるさく文句を言われそうな予感がしたからだ。


 だから私は授業後だというのに、この後授業は無いというのに、律儀に学園に残って校内を練り歩いている。時にはそこら辺の人に彼女の居場所を尋ねながら。

 ……聞くと、大方「知らない」と答えられる。それだけならまだいいが、「伊勢美いせみが会長を探しているなんて、いつもと逆だな」なんて笑われるから、私の苛立ちがどんどん溜まっていく。

 ……いつもそんなにおおっぴろげに私のことを探しているのか、あの人は。黙ってても目立つのに、そんなおおっぴろげにしたら余計に目立つに決まっているだろう。馬鹿なのか? 馬鹿なのだろう。


 私の苛立ちが伝わるのか、廊下にいた生徒たちはぎょっとしたように目を見張り、廊下の真ん中を堂々と征く私に道を開ける。気を遣われているとわかり、これがまた私の頭に来る。……冷静になれていないと頭の片隅では分かっている。そろそろ落ち着かなければ。

 何故なら、その当の本人に、今から対面するからだ。このままだと出会い頭に怒鳴りつけかねない。それは避けたかった。


 ……たぶん、怒り返されるわけでもなく、申し訳なさそうにされると、なんとなくわかるからである。それは、怒り返されるよりタチが悪い。し、心地も悪い。


 ……長い前置きは以上だ。本当ならば、ここまで来た経緯をもっと詳しく語りたいところだが、略させてもらう。語りたいけど、面倒だから。

 私はゆっくり深呼吸をしてやり場のない怒りを落ち着け、扉を見据える。そして手をあげると、コンコンと、ノックを2回。


「……」


 返ってくるのは、沈黙。

 私はめげず、もう一度扉を2回、ノックした。……だが結果は全く変わらない。ため息を吐いた。……色んな人から、「いるとしたらここだ」と言われたというのに。……違う所にいるのだろうか。だったら無駄足だった、ということになるし、何より、他に行く場所の候補が無い。……さて、どうしたものか……。


「伊勢美さん、どうしたんですか」


 そこで背後から声を掛けられる。振り返ると、そこには教師の姿があった。……えっと、この人は……。


「『異能力基礎Ⅰ』」

「まさか授業名で呼ばれるとは……服部はっとりです。あと、貴方への担当は『異能力基礎Ⅰ』だけですが、メインの担当は倫理です」


 そう言って教師……服部先生は、呆れたように笑う。……確かに授業初回、そのように自己紹介していた気がする。特に話題に挙げたり好き好んで思い出すことが無かったから、記憶の彼方に飛んでいた。


「それで、どうしたんですか?」

「あ……えっと。言葉ちゃ……生徒会長に用があるんですけど、ノックをしても返事が無くて……」

「ああ、なるほど……勝手に入っても大丈夫ですよ。返事が無いということは、恐らく不在でしょうから」

「え……不在なら、入らない方がいいのでは……」


 私が聞き返すと、彼は小さく笑う。


「そのような新鮮な反応は久しぶりですね。大丈夫ですよ。生徒会室はもはや生徒の憩いの場。生徒会長がいなくとも誰でも出入りが自由。……そんな場所ですから」

「……生徒会室って普通、一般生徒に見られてはいけないものとか、あるんじゃ……?」

「あると思いますよ。しかし彼女は、それよりも生徒と親身になることを選んだのでしょう。……彼女はそういう人柄ですからね」


 恐らくどこかに隠した上で管理しているのでは? と先生。私は、はあ、と気の抜けた返事をしてから、扉に向き直った。念の為、最後のノックをして、返事がないとこを確認してから開く。……すると。


「うっわ」

「これは……すごいですねぇ……」


 思わず苦虫を潰したような声をあげる私と、若干引いたようにオブラートな感想を述べる服部先生。

 というのも、生徒会室の中はすごいことになっていた。まず匂い。とにかく甘ったるい香りが部屋の中に充満していた。甘いものが苦手な人は、これで死ねるかもしれない。次に床。真っ白。……正確に言うと、書類で溢れかえっていた。何かの書類で白い海が出来上がっている。……たぶん大事な書類なので踏めない。だが足の踏み場が無いので入れない。……。


 ……中から人の気配がしないんだけど……あの人、この中にいるのかな……書類の中に埋もれているとか……。

 ……想像出来てしまったからには、探してみるしかなかった。


「……服部先生、すみません……この書類たち集めるの、手伝ってもらっても……?」

「ええ、大丈夫ですよ。頑張りましょうか」


 服部先生は全く嫌そうな表情をすることなく、快く手伝いに応じてくれた。持っていた名簿──恐らく先程まで行っていた授業の名簿だろう──を生徒会室の入り口付近に置くと、書類を丁寧に集め始める。それを見てから、私も書類集めを始めた。


 それらはどうやら、この学園に属する人の簡易名簿の様だった。顔写真、名前、年齢、所属クラス、ここまで来た経歴、異能力名とその概要──そういったことが書かれているのが、ざっと見ただけでわかった。だから私は、なるべく内容が目に映らないよう気を付けて、無心で書類を集める。……個人情報に興味などないし、無益な争いになりかねないから。

 ……それに、誰だって触れられたくないことの1つや2つくらい、持ち合わせているだろう。

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