「御託はいいです」
とりあえず、ここで話したことは口外禁止。もし何かしら、小さなことでも進展があれば、情報交換をする。そんな約束をし、私たちは解散した。
……といっても、持木兄妹は一緒に帰るだけで、私と言葉ちゃんが自然と一緒になってしまうだけなんだけど……。
「……ちなみに言葉ちゃんは、どう考えているんですか?」
「んー……そうだねぇ……」
校門まで歩きつつ、私がその横顔を見上げつつ問うと、言葉ちゃんはいたく真剣な表情で、口を開いた。
「……あれは両片思い(※なお帆紫くんの方は無自覚)と見た……」
「いえ、そっちではなく」
私は思いっきりツッコミを入れる。何をどうしたら私が人の色恋沙汰に興味を示して、そして言葉ちゃんに聞くと思っているんだ。
「えっ、違うの!? とーこちゃんはあの2人が両思いだと思わないの!?」
「貴方の声は大きいんですから、人の恋愛事情をそんな大きな声で言わないであげてくださいよ……可哀想に……」
「大きいって2回も言われた!?」
「何回でも言ってあげますよ……というかそのツッコミすら大きいですし……。……まあ確かに、あの2人のことを知っている人なら、大体皆さん同じ見解になるとは思いますが……」
「え、だよね? じゃあ僕が大声で言っても問題」
「大アリです」
いや、だから、主題はそこじゃない。……どうしてこの人はこう……話を逸らすのが上手いのか……。
「そうじゃなくて。……持木くんが操られた、とかいう先程の話です」
「ああ、そっち」
言葉ちゃんはキョトンとし、それならそうと早く言ってよ~、と笑う。話が逸れたのは誰のせいだと……。と、思ったが、ここで無駄なエネルギーを使っても仕方がない。
「どう思う、っていうのは?」
「……言葉ちゃんの思う事件の見解。……あそこで言ったことが、言葉ちゃんの思うことの全てだとは、思えなくて」
「……ふぅん」
私の予想に、言葉ちゃんは唇をにぃ、と笑みの形にしてから言う。
「……君の性格的に、こういったことにはあまり興味を向けない……いや、向けようとしない、と思っていたよ」
「……話を逸らさないでください。別に興味はありません。……が、貴方といると、嫌でも関わる羽目になりそうですからね」
「よくわかってんじゃん」
横を歩いていた言葉ちゃんは、私の前へ回り込む。私は自然と足を止め、その綺麗な顔を見上げた。
「……伊勢美灯子。君に、この事件の解決の手伝いを要請します」
「……」
「……これは君のためにもなる。……君は今、不安定な立場にあり、周りの生徒は、君の立場を決めかねているところだろうね。君は果たして、普通の学友なのか、それとも、この学園を脅かしに来た存在なのか……それは皆が、君のことをよく知らないからだ」
「……そうですね」
「また、事件が勃発したのは、君が転校してきた時期と重なる。そしてそれに君が関わった、という噂が既に出回ったことも知ってるでしょ? ……そこで、君がどうしたか、までは、恐らく出回ることはないだろう。噂、というものは、一部の人間に都合良く出来ているものなのだから」
……よくもまあ、こんなにスラスラ話が出てくるものだと、半ば感心しながら彼女の話を聞く。
「最悪、君が事件の主犯だと疑われる可能性も浮上するだろう。後ろ盾のない君だ。すぐに吊るし上げられるだろうね。……異端者は、排除される。人間の残酷なところだよ。……そこで、だ。僕と事件解決に尽力に努めれば、自然と君に対する評価は、きっと変わる。……君は目立ちたくないみたいだけど、どっちにしろ目立つ結果にはなるが……いい意味で目立つのと、悪い意味で目立つの、どっちがいい?」
「……分かってますよ……」
私はため息交じりに、そう返事をする。
「御託はいいです。貴方は私への自主的な参加を勧めているようで、その実は半ば強制、脅しですよね」
「……君がそう思うなら、そうかもしれないね」
「正直私は、誰にどう思われようと、どうでもいいです。……それよりも」
私は腕を組み、思わず言葉ちゃんを睨みつけながら、告げた。




