異能妨害室にて
連れて行かれたのは、とても狭い部屋だった。真ん中には机、そして4つの高そうなシングルソファ。そこに私、言葉ちゃん、ココさん、持木くん……計4人。入るのがギリギリ、という感じだ。いや、頑張ればもう数人は入れそうだけど、入っても座る場所が無い。そのくらい狭い部屋だった。
「……何でわざわざこんな部屋なんですか……もっと広いところでも……」
「僕だってもっと広いとこで話したいけどさぁ、一応、ここが1番広いんだよ?」
「……?」
一体何を言っているのか、ここより教室の方が断然広い。その感想はココさんや持木くんも同じなようだった。……しかし言葉ちゃんはやはり気にせず。まあまあ座ってよ、と、真っ先にシングルソファのうちの1つに座って、私たちに勧める。
仕方ないから、私が言葉ちゃんの隣。机を挟んで、ココさんと持木くんが並んで座った。それを見て言葉ちゃんは満足そうに頷くと、意気揚々と口を開いた。
「まず、ここは特別な部屋です。特徴として……ここは、異能力を一切使うことが出来ないんだ」
「異能力が……使えない?」
言葉ちゃん以外の誰もが思ったことを、ココさんが代わりに言ってくれる。そう!! と、言葉ちゃんはドヤ顔をした。何故か言葉ちゃんがドヤ顔をした。恐らく絶対、言葉ちゃんの功績ではないだろうに。
「特別な条件下でなら、異能力を打ち消すことが出来る異能力者がいるんだ。その人の徹底的な研修の元、出来たのがこの部屋。……例えば、盗聴が出来る異能力者が居ようと、異能力で脅すような人が居ようと、ここでは皆等しく無能力者!! 大事な話をするときとかしか入れない、すご~い部屋なんだよ!! 味わっといて!!」
「何を味わうんですか……」
反射的にツッコミを入れてしまった。さっすがぁ、と言葉ちゃんに笑われる。流石って、何が。
「というわけで、さっきの話の続きはここでしようか。……帆紫くん、君がさっきしようとしていた話は、まだ正確性が取れていない話だからね。他の生徒たちの不安を煽らないためにも……その話を外で無闇矢鱈とするのは、なるべく控えてほしいな」
「は、はいっ。……あれ、これ、もしかして俺、怒られてる?」
「何であたしに聞くのよ……怒られてると思うけど」
「マジかよ、ごめんなさい!!」
持木くんは勢い良く頭を下げ、その拍子に机にぶつけてしまっていた。それを見て、言葉ちゃんもココさんも大爆笑。……私だけが白けた目をする。
「あっはっは!! ひーーーーっ……ふふ、そんなに気にしなくていいよぉ。これから気を付けてくれればいいからさ」
「う、うっす……」
「というか、僕に喧嘩を売った後もそんなに気にしてる様子は無かったのに、こっちは気にするんだねぇ」
「だ、だって、会長、普段から喧嘩売られてるから……」
「失敬な。いや、そうだけど」
「……話がそれてます」
なかなか話が進まないことにだんだんイライラしてきて、私はそう言う。それもそうだね、と言って、言葉ちゃんは長い脚を美しく組んだ。
「じゃ、僕が帆紫くんの話を補う感じで話そうか。……というわけで帆紫くん、どーぞ」
「あ、ど、どうも……」
言葉ちゃんの促しで、持木くんは何故か、んんっ、と喉の調子を整えてからこの場の人間をぐるりと見回した。
「……それで昨日、俺が起こしてしまった事件……俺自身には記憶が曖昧なんだ。どうしてそんなことをしたのか……全くもって覚えていない」
「……はあ」
「まあ……伊勢美と会長にボッコボコにされた後……俺は気絶して、そのまま病院に運ばれたわけだが……その後俺に告げられた事実は……『俺が誰かに操られた可能性がある』、ということだった」
「操られた?」
この場を代表して、ココさんがそんな風に聞き返す。どうやらこの一連の話は、ココさんも初めて聞くものらしい。……とまあ、それは置いておいて。
ココさんの聞き返しに、持木くんは頷いた。
「ああ、俺に詳しいことはよくわからないが……どうやら俺には、異能力を使用された痕跡が残っていたらしい」
「……えーっと、異能力の痕跡を辿れる異能力者とかがいるからね。その人たちに調査してもらった結果。ネットの検索履歴みたいにわかるから、対異能力者特別警察とかにも重宝されてるよ。……帆紫くん、このくらいジョーシキだからね?」
「うっ、すみません……。……ええっと、そういうわけで~……俺は誰かに操られていたわけだ!!!!」
もう分かりきったことを、気まずそうな顔でもう一度宣言する持木くん。……まあその常識、私も知らないので、説明を受けられて助かった。




