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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-3「事件調査前日譚」
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信頼か否か

 今からでも、異能力を使ってないって……いや、もう使った、って返事したばかりだし……。でももう言葉ちゃんの1日に付き合うなんて嫌だし、何より昨日あの後言葉ちゃんに、「もう君に仕事手伝わせないわ!!」って戦力外通告されたばかりだし……。

 どうする、と1人冷や汗を流して考えを逡巡させ……。


「君の異能力の規制を緩和しようと思う」

「…………は?」


 理事長先生の口から出た思いもよらない発言に、思わず私はそう言った。失礼な口調になってしまった、と慌てて口をつぐむ。その隙に、理事長先生は続けた。


「君の異能力は、確かに危険だ。それを理由に、『近くに教師がいる時以外は異能力を使用しない』という約束をさせた。……しかし君はその約束を破った、2度も」

「……はい」

「しかしその用途は、他者を陥れたり、傷つけるためではなかった。君はその異能力を、他者のために役立てた」

「……はぁ……」


 持木もてぎくんのことはともかく、昨日のは、自分で蒔いた種の芽を回収したに過ぎないんだけど……。そうは思いつつも、ここで口を挟んだら話がこじれそうだと思ったため、言わない。


「それは君に初日に紹介した、我が学園の校訓にとても沿った行動だ。その行動や、小鳥遊くんからの助言も考慮して、君の異能力の制限を緩和しようと思う」

「……言葉ちゃんの助言?」


 私が背後にいる言葉ちゃんに視線を送ったところ、見事に逸らされた。何なんだこの人。


「理事長……別に言わなくてもいいでしょ」

「いやぁ、小鳥遊くんの反応が面白いものだから」

「テメェ……」

「まあとにかく、小鳥遊くんが、『せめて僕の前でも異能力の使用は可、ということにしませんか』って頭下げてくれてね。自分は生徒会長だし、強いから、何かあれば自分が責任を取るってね」

「理事長テメェちょっと黙れ」


 何もかも赤裸々に話してしまった理事長先生に対し、言葉ちゃんは顔を真っ赤にして、その手に文字を纏わせる。しかし理事長先生は朗らかに笑うだけで、どこ吹く風だった。そんな態度にむかついたのか、言葉ちゃんはそのまま文字を彼に向けぶん投げる。それは私の目に見えないくらいのスピードで彼に突っ込んだが……彼は特に驚く様子もなく、僅かに首を傾けただけで回避して見せた。……よく避けたな、今の……。


「こんな狭いところで暴れるの、やめてもらっていいですか?」

「誰のせいだと!?」

「勝手に言葉ちゃんが照れてるだけじゃないですか……私は何もしていません」

「べっ、別に、照れてねーし!!!! ぜんっぜん、照れてねーし!!!!」

「まあどっちでもいいですけど、うるさいです」

「とーこちゃん辛辣!!!!」


 うるさいと言ったそばからうるさい。もはや公害レベルだろう。損害賠償が欲しい。

 ……とまあ、冗談は置いておいて。


「つまり、言葉ちゃんが近くにいる際も異能力の使用を認めると……そういうわけですか?」

「ああ、理解が早くて助かるよ」

 理事長先生は首を縦に振って、それを肯定した。……それはほぼ、異能力が解禁だと言っているようなものだろう。この人、たぶん1日のほとんどは付き纏ってくるだろうから。授業以外。

 それほど、私はこの短期間で信用された、ということなのだろうか。それとも、泳がされているのか……どちらにせよ、私のすることは変わらないんだけど。


 そこでチャイムが鳴る。それと同時に、理事長室の外の騒がしさがピークを迎えていて。今のチャイムは予鈴だから、皆移動や次の時間の準備をし始めたのだろう。いつの間にそんな時間になったのだろうか。……。


「ねぇとーこちゃん、君、次、授業じゃなかったっけ」

「……そうですね」

「お昼、食べ損ねちゃったねぇ、ごめんね?」

「いえ、大丈夫ですけど……」


 先程言葉ちゃんから飴を貰ったお陰で……まあ、食べないよりはマシ、みたいな状態だ。……いや、それより。


「何で私の時間割、把握してるんですか」

「……まあね」

「全く説明になってません……」


 謎にいい笑顔を浮かべる言葉ちゃんに対し、私はため息を吐く。そして理事長室を出、次の授業に向かうのだった。

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