「僕のこと、嫌い?」
言葉ちゃんと一夜を過ごした、その後、私は普通に授業を受けた。……学校に泊まって、そのまま授業を受ける……登校の時間が短縮されるから、恐ろしいほど楽だった。ただし、また泊まりたいとは思わない。……何故なら、きっとついでに言葉ちゃんが付いて来るからである……だったら私は面倒でも家に帰って、1人でゆっくり過ごしたい。
「とーこちゃんとーこちゃん」
「……何ですか……昼休みになった瞬間……」
授業終了、そして、お昼休み開始のチャイムが鳴ったと同時、言葉ちゃんが私のいる教室に飛び込んできた。……相変わらず周りからの目が集まり、居心地が悪い。……せめて、もっと人がいないタイミングとか、静かに呼んでほしい……。
私は言葉ちゃんの方に向かう。すると言葉ちゃんは何故か私の耳元に口を近づけると……珍しく小声で囁いた。
「……理事長が呼んでる」
「!」
私が顔を上げると、彼女は明るい……それこそ一番星のような、そんな笑顔を見せて。
「行こっか!!」
周りが昼ご飯を食べている中、私たちだけが廊下を歩いて、理事長室まで向かっている。
「だいじょーぶ? お腹減ってない? 軽く何か食べておく? 飴あるよ、飴」
「結構です……。というか、歩いているんですから、差し出すならせめて棒が無いやつにしてください……危ないでしょう……」
「あ、それもそうだね」
じゃあはい、と、手の上に棒の無い飴を乗せられる。……いや、欲しいわけじゃ無いんだけど……。まあ、せっかくあるなら食べるけど……。
そう思って包装紙を開け、飴を口の中に放り込む。今日はメロン味だった。
やっぱりお腹減ってるんじゃん~!! と嬉しそうに言う言葉ちゃんは無視し、私は口を開いた。
「……あの、もう少し目立たないように呼んでくれませんか……」
「え?」
「貴方が来るたび、注目されるんですよ……。なので、もう少し存在感消せませんか」
「かなり難しいこと言うね!? ……うーん……善処はするけど、たぶん無理だと思うよ? 僕、生徒会長だから目立つし」
「……」
彼女の口から「善処する」という単語が出てきたことに驚いたが、次の発言で撃沈する。……確かに、この人目立つ格好してるし……あふれ出ている「カリスマ」だとか「オーラ」だとか、そういうものを常に醸し出している。今こうして歩いている最中にも、教室の中から言葉ちゃんのことを見る人がいるし、すれ違う人も、絶対一度は振り返っている。……そうさせる魅力が、彼女……小鳥遊言葉には、ある。
そして彼女はそれを、自覚している。
「……じゃあ他の人に呼びに来させてくださいよ……」
「僕の用事に他の人を使うとか、変な話じゃない?」
「……そうですけど」
八方塞がりだ。諦めるしかないらしい。私はため息を吐いた。
すると、言葉ちゃんが一言。
「……そんなに僕のこと、嫌い?」
その発言に、私は顔を上げ。
「いえ、別に」
「あっ、そう」
「ただ迷惑だとは思っています」
「素直~~~~」
そういうとこ好き~~~~!! と言葉ちゃんは大声で叫んで抱き着いて来る。そういうところなのだが。迷惑なところ。
そんな無駄話を重ねている内に、理事長室に着いた。長かったのか短かったのか、よくわからない道だった。
「りっじちょー!! 来たよ~!!」
「ああ小鳥遊くん……っと、伊勢美くんを連れてきてくれたんだね」
「そ!! 僕ってば優しい~」
「……伊勢美くん、いい加減、理事長室までの道のり、覚えたよね?」
「はい、覚えました。理事長先生、このアホ会長どうにかしてください」
「とーこちゃん今アホ会長って言った!?!?!?!?!?」
「……小鳥遊くん、私は『理事長が呼んでいる』ということを伝えてくれ、と頼んだだけだよね? どうして君まで来たんだい?」
「僕が来たかったから!!!!」
「……ということだ、伊勢美くん。……我慢してくれ」
「……………………」
……駄目だこいつら……。
確かに今日の朝、「君がどうなるか見せてよ」と言われた。あれは、これからも付き纏う、という宣言だろう。……そして私は、勝手にしろ、と言った。つまり、承諾してしまった。だから、仕方ないのはわかるけど……。
……ほぼ四六時中は、キツイな……。
私が遠い目をしていると、理事長先生は話を切り替えるように、ゴホン、と咳払いをした。なので私も言葉ちゃんも、彼を凝視する。
「さて、伊勢美くん、君を呼んだわけだが……」
「……はい」
「聞いたよ。君は昨日、あの後、再び異能力を使ったと」
「……………………はい」
その話か、と私は心の中で呟く。……なるほど、また罰を与えられる、ということか? いや、あれは言葉ちゃんに使え、と言われたからで……ん? よくよく考えたら、使え、とは言われてないな……写真を差し出されただけで……。……。
……これ、もしかしなくても、かなり私に不利な、ヤバい状況なのでは……。




