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明け星学園  作者: 秋野凛花
2-15「湖のような青年」
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何かと個性的で目立つ人

 言葉ちゃんの「お願い」が聞けるとは、なかなかの収穫だと思う。正直、そう素直に頼られるとは思っていなかった。だってあの人、事件解決のために脅しというか……まあ、圧掛けてきた人だし……。

 ……今日は本当に、切羽詰まってしまっているのだろう。


 そして私は、再び校門までやって来ていた。というのも、言葉ちゃんと会う予定だという人物は、この時間にここで待っているらしい。前から約束をしていたが、言葉ちゃんはあの忙しさのせいで、すっかり時間を忘れてしまっていたと。


 ……さて、言葉ちゃんからは「何かと個性的で目立つ人だから、すぐ分かると思うよ!!」と言われているが……こんな個性豊かな人の集う学園で「個性的で目立つ」と言われたところで、そう簡単に分かるとは思えな……。


「おー、ユキ、お前まだいたのかー、元気だったかー?」

「にゃー」


「…………………………」


 いた。


 校門のすぐ傍にしゃがみ、白猫の背を撫でている男性がいた。彼はジップアップパーカーにデニムパンツという軽装で……いや、それは普通だし、いいのだが……問題は、その頭髪だ。

 彼の髪色は、まるで海のような青色だったのである。


 これは……思ったより、だいぶ、目立っている……。

 じゃあこの人が言葉ちゃんの待ち合わせ相手……ということでいいのだろうか。確信は出来ないが、この人より目立っている人は周りにいないし……というか周りに全然人がいない……。人のピークは去ったらしい。


 私が彼を見つめ続けていると、彼がゆっくりと振り返った。目が合い、私は思わず肩を震わす。髪どころか、目まで青みがかっていた。徹底して青色に染まっている。


 ……こうして見ると、本当に……海みたいな人だ。

 いや、でもこの人は、海というよりは……。


「……俺に何か、用?」

「え、あっ、え……えっと……」


 馬鹿みたいにのんびり思考を重ねていると話しかけられてしまい、思わず私は言葉に詰まる。気づけば彼は白猫を抱えつつ立ち上がっており、こちらをジッと見つめている。質問をするその口調は端的なものだったが、警戒心は感じられない。全体的にこちらを受け止めて包んでくれるような……そんな雄大な柔らかさを感じた。


 ……って、また考えこんだらいけない。私はこの人が言葉ちゃんの待ち合わせの相手なのか、確認しないといけないのだ。

 迷った末、小鳥遊言葉と約束していますか、と聞こうと口を開いた……その瞬間。


「……! ごめん、君、この子をよろしく」

「っ、え?」


 そう言って押し付けられたのは、彼が抱きかかえていた白猫だった。そのまま彼は私の横を通り過ぎてしまう。腕の中に突如乗った柔らかさに戸惑っていると、白猫は1回にゃあ、と鳴いた。まるで、仕方ないから抱えさせてやろうと言われているようである。どことなく気怠そうだからそう思うのだろうか。

 しっかり白猫を抱えつつ、私は振り返る。そして……目を見開いた。


 彼は、私を庇うように立っていた。その視線の先には……5人ほどの男。それぞれ武器のようなものを所持している。

 ……見るからに、「ヤバいやつです」と見た目で名乗っているやつらだ。


「まさかお前と、こんな所で会えるとはなぁ……!!」

「あー……ってことは君たち、この前取り調べの途中で逃げたっていう? ……わざわざ仲間を集めて、ここまでご苦労様」

「ああ、本当はもうちっとばかしツレを集めてからお前に報復しようと思ってたんだが……たまたまお前の姿を見つけたものだからな。こうして来てやったワケだ」

「わ~、全然嬉しくな~い」


 ははは、と青髪の青年は苦笑いを浮かべる。彼に庇われながら私は、訳が分からず首を傾げる。そのため、頭を働かせた。


 ……この人とこの集団は、知り合い。でも集団の方は青髪の青年を恨んでいて……取り調べ、と言っていたということは、この人のせいでこの集団は逮捕された、ということだろうか。で、そこから逃げてきて、その途中でたまたまこの人を見かけたから、仲間を連れて戻って来たと……?

 ……たぶん、そういうことだろう。

 ……そして私は、たまたまそれに巻き込まれてしまったと……。


 腕の中で、再び白猫がにゃあと鳴いた。まるで「自分も忘れるな」、と言われたようだった。そうか、この白猫も巻き込まれている。可哀想に。


「後ろの女が誰かは知らねぇが、流石のお前でも人を庇いながらこの人数を相手にするのはキツいはずだ!!」

「あ……そうだ、ねぇ、君ってさ」


 なんか負けそうなフラグ立てているな……と思ったのも束の間、青髪の青年がそう言った。……少し遅れてから、私は彼を見上げる。


「……え、私……ですか?」

「うん、君だよ。……君ってさ、明け星学園の生徒?」

「え、あ、はい……そう、ですけど……それが何か……?」

「いや、俺、人と待ち合わせしてるんだけど、そいつ今何してるんだろう~、って思ってさ。目立つと思うから知ってると思うんだけど……」


 待ち合わせ、というワードに私は肩を震わす。じゃあやはり、この人が言葉ちゃんの待ち合わせ相手で正解、ってこと……?

 ……いや、でもその確認(それ)、今じゃないと駄目なのだろうか。


「テメェ!!!! 俺たちを無視するな!!!!」


 言わんこっちゃない。先頭に立つ男が顔を真っ赤にして憤慨している。


「あー、ごめんごめん。で、さっきの言葉へのお返しだけどさ……」


 青髪の青年は腕を組む。特に構えることもなく、ゆるりと立っていて。……()()()()()()()()()()()()()()



「何人いようが変わらないよ。お前らは俺に負ける」



 強者の余裕。

 そんな言葉が、彼のその後ろ姿に浮かんだ。

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