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明け星学園  作者: 秋野凛花
2-15「湖のような青年」
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大名行列の理由

 授業も終わり、ココちゃんとも別れ、私は帰宅するために校門まで向かった。


 …………………………。


 校門を出たところで、私は足を止める。

 ……言葉ちゃん、来なかったな……。


 1学期はあんなに、呼んでなくても来たのに。呼んだらすぐに現れたのに。今日は全く姿を見なかった。そういえば今日は嫌に静かな学校生活だと思っていたが……。

 ……平穏は、いいことじゃないか。元々望んでいたのは、こういう日常だ。言葉ちゃんのようなやかましい人間に絡まれないで過ごすのは、とても快適で……。


「……」


 はぁ、と私はため息を吐いた。面倒だが、気になってしまったものは仕方がない。

 私は踵を返し、校内に戻るのだった。





 私がやって来たのは生徒会室だった。心当たりと言えば、ここしかない。まあここにいなかったら、屋上を探すけれど。

 だが、目の前で繰り広げられている光景に、確実に彼女はここにいると……私はそう、確信してしまった。


「……何これ」


 思わず私は声に出してしまう。目の前に広がっているのは……沢山の、人、人、人。その人たちは生徒だったり、教師だったり、外部の業者と思しき人だったり……。とにかく様々な人が、ひっきりなしに生徒会室に入っては出て行く。社会の教科書でこういうのを見たことがある……。ちなみに大名行列のことだ。


 私は律儀に列に並び、順番が来るのを待った。15分ほどして、ようやく中に入れる。そこから言葉ちゃんの目の前に立てたのは、5分後のことだった。

 つまり彼女に会うだけで、20分かかっている。


「はーい次の方~……って」

「言葉ちゃん……何なんですか、これ」


 私は思わず、思っていたことそのままを言葉ちゃんにぶつける。すると言葉ちゃんは、疲れたような顔をおくびも隠すことなく告げた。


「……僕たちさ、理事長ぶっ飛ばしたじゃん」

「……そうですね」

「急に理事長いなくなったからさ……今まで理事長のやってた仕事が、全部僕に回って来てるの」

「え……?」


 私は呆然とする。理事長の仕事が? 全て? ……生徒会長って、そこまでしないといけないのだろうか。

 他の人に手伝ってもらえばいいのでは、と言おうとして、やめた。この人は1人で生徒会をやっていて、この学校を回しているのは、もうなんとなく知ってる。そして彼女は……あまり人に大事な仕事を渡したりしない。

 それが重労働だったり責任が伴うことほど、人に渡したりしないだろう。


 言葉ちゃんは深々とため息を吐いた。長時間、休むことなく集中しているのだろう。その疲労は、きっと私が想像も出来ないくらいで。私はその表情から苦労を感じ取ることしか出来ない。


「……夏休み前から、こうだったんですか?」

「いや……夏休み後半くらいから、かな……そこから段々、僕に連絡が沢山来るようになって……」


 質問には答えてくれるが、言葉ちゃんはその傍らで書類を眺めていた。かと思えば何かサインのようなものを書いて横に流し。

 ……そういえば、後半に行くにつれて連絡が減っていっていたな……あれは、そういうことだったのか。


「……大丈夫、なんですか」

「大丈夫にしないと」


 ……答えになっていない。

 どうする。このままだと彼女が過労で死にそうだ。まだ私は何もしていないのに、ここで死んでもらっては困る。だが、仕事の手伝いを申し出たところで、きっと彼女はそれに応じない。


 後ろからも、「列はまだ進まないのか」と言わんばかりな殺気が飛んできて背中に刺さっている気がするし……早くどうにか、私に出来ることをしたいのだが……。


「……あっ」


 するとそこで、言葉ちゃんが声をあげた。突然のことに驚いて顔を上げると、目の前にいる言葉ちゃんの視線の先には、時計が。


「やっばぁ!? もうこんな時間!? え、ええっ、ええっとどうしよう……こんなはずじゃ……!! ううマジで百目鬼の野郎ぶっ殺す……」

「残念ながらもう檻の中だと思いますよ……」


 逮捕された、という話以降、そこからどうなったかは聞いていないが、たぶんそうだろう。警察関係者でもない私たちに手出しは出来ない。

 分かってるよ……と言葉ちゃんは呟き、苛ついたように頭を掻きむしっている。相当頭にきているよう……いや、というよりこれは、パニックになっているのか……。


「マジでどうしよ……あー、楽しみにしてたのに……でも僕ここ離れられないし……うーっ……」


 机の上で呻く言葉ちゃん。……そこでふと、言葉ちゃんが顔を上げた。

 正面にいるのは、もちろん私。言葉ちゃんの深紅色の瞳の中に、私がくっきりと映った。


「……とーこちゃん、暇?」

「……まあ、暇じゃなきゃわざわざこの長蛇の列を待ってまで来ませんよ……」


 どうせ帰ってからすることもない。せいぜい、明日の授業の予習と今日の授業の復習くらいか……。


 すると言葉ちゃんは、勢いよく頭を下げた。勢いが良すぎて、机に額を強打し、すごい音が鳴っていた。私だけでなく、周りも絶句する中、言葉ちゃんは……叫ぶ。





「お願い……僕の代わりに、人に会って来て!!!!」

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