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明け星学園  作者: 秋野凛花
1-13「星々は再び煌めく」
100/534

八つ当たりだとしても

 ──


 もちろんそれが成功し、異能力者は揃いも揃って停止しているなど、百目鬼は知る由もない。だが、そんなことも今の彼にはどうでも良かった。すぐさま思考を切り替え、学園を出ることに専念する。


 ……だが。


 百目鬼は、未来を読んだ。3秒先、足元に広がる炎。


「──!!」


 その未来に合わせ、百目鬼は炎を避けて飛ぶ。少し熱かったが、気にする程度ではない。


 ……そして思う。()()()()は、一体誰のものだったかと。

 だからこそ百目鬼は、反応が遅れた。更に一瞬先の、未来に。


「……ぐあっ!?」


 何かが百目鬼に直撃する。全身が痺れる感覚。それは……電気だった。

 元々ダメージの残る体を、無理矢理動かしていただけだったのである。百目鬼の体は更なるダメージに耐え切れず、無抵抗に地面に倒れた。


「──いやぁ、成功したみたいで良かった良かった」

「だな。……俺の炎、あんまり役立った気がしないけど……」

「そんなことないだろ、お前の炎がブラフになってくれたからさ!!」

「それもそれで心境複雑なんだよ!!」


 百目鬼は決死の思いで顔を上げる。……そこで百目鬼を見下ろし、笑っていたのは、紫色の炎を操る異能力者──持木もてぎ帆紫ほむらと、雷を操る異能力者──雷電らいでんせんだった。

 かつて自分に協力し、そして灯子に敗れて地に伏した……2人の異能力者。


「……お前ら……何を……」

「……何って」

「あんたを倒しに来た、的な?」


 どいつもこいつも、自分の邪魔しかしない。そんなことを思い、百目鬼は隠すこともなく舌打ちをした。


「今更そんなことをして……他の生徒を危険に晒したことの償いが出来るとでも、思っているのか……!?」

「……別に、そんなことは思ってねぇよ」


 他の生徒云々というよりは。その問いかけに対し口を開いた帆紫は、思う。


 ──自分は、大事な妹を人質として取られた。彼女を守るために、理事長の計画に協力せざるを得なかった。

 だがそのせいで、大事な妹を、泣かせてしまった。


 帆紫はあの時、外部からの異能力を遮断する小型装置を持たされていた。だからこそ彼女の異能力は自分には効かず、自分の心の声は伝えられなかったし……逆に、彼女の声も、聞こえなかった。


 どれだけ不安な思いをさせただろう。

 どれだけ悲しい思いをさせただろう。


 小型機器は、言葉に倒される直前に焼き壊した。でないと倒されることが出来ないからだ。……小鳥遊言葉の容赦ない攻撃が直撃したのも、もちろん痛かったが……。


 ……その後の心音こころねの泣き顔を見る方が、ずっと辛かった。


「……今更何をしたって、それが取り戻せるなんて、思ってない」

「……俺も」


 帆紫の言葉に賛同するように、閃が口を開いた。珍しく、真面目な表情で。


 ──自分は大事な母親を人質に取られた。更に言うと、貧困状態の中から何とか払っていた学費の免除も約束された。……断る理由がなかった。

 それが初めて出来た、「親友」とも呼べる友達を、裏切ることになったとしても。


 彼を突き飛ばしたあの時、彼の驚いたような、絶望するような、あの表情が、頭から離れない。


 正直、同じことをやり直せるとしても、自分は再び、悪の手を取るだろう。

 しかし、また彼のあんな表情を見ることになるのは……嫌だ。


「……俺たちのしたことは、もうやり直せないよ」

「ただ、」


 また同じことが起きるのかと思った。


 同時刻、一気に大量の異能力者が行動を始めた。無差別に周りを傷つけ始めた。彼らはそれをどうする気もなかった。気持ちは痛いほど分かったから。それを止める方が酷だと、知っていたから。


 でも、彼らは見てしまった。



『約束したんだ。君の、君たちの大切な人は、大事な人は、まとめて皆、僕が守る。だからもうこんなことしなくていいんだよ。大丈夫』


『きみの大切な人を、ボクにも守らせてください』



 何かが、変わった音がした。



 何故、自分以外の人間ばかりが動いて、自分は情けなくここに突っ立っているんだ。

 何故、真相を知っている人間が解決のために動いて、同じく真相を知っている自分は、動かないんだ。



 そんなこと、死んでも嫌だ。



 俺たちだって──!!



 自然と、帆紫と閃は、手を組んでいた。互いが何をしたいかは、明白だった。そんなこと、聞くまでもない。

 だからこそ2人は笑う。笑って、言い放つ。



「「ただ俺たちが、お前をぶん殴りたいだけだ!!」」



 もちろんこれは、ただの八つ当たりに近いものだが。

 そんな事実は、今はどうだっていい。


 2つの拳が、青ざめる百目鬼の顔面を……捉えた。

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